俺はパソコンの履歴を消して、電源を落とす。
持ってきた荷物をDバッグに入れて背負う。手袋をする前に触った可能性のある、ドアのあたりをウェットティッシュでふき取り、医療用の手袋を外した。
ポケットに手袋をしまって、代わりにハンカチを取り出して、ドアを直接触らないように気を付けながらドアを開けて外に出た。
ネットカフェからちょっと離れた場所に移動して、髭やカツラ、眼鏡の変装を解いてタクシーを拾い、部屋に帰った。
4時まではまだ2時間ほどあるのでアラームをセットしてベッドに横になった。
興奮して寝れないかもしれないと思ったが、疲れが溜まっていたのかすぐに眠りについた。
翌朝、寝不足の顔のまま事務所に顔を出した。
「あら、早いわね。おはよう」
と朝から元気な江島さんだ。きっと血圧が高いに違いない。
「ああ、おはよう。昨日の結果を報告しようと思ってね。」
「それより、ねね、おもしろいニュースがあるの。聞いて聞いて」
まったく、朝から騒々しい、仕事をしてくれ。
「マイケルジャクソンが、生きていたらしいのよ。いろんなメルマガのニュースで号外がすごいわよ」
「でも、肝心のマイケルの写った写真へのリンクがつながらないのよね」
どうやら今もクリックして確認しているようだ。
「ああそれ?俺の作ったニセメルマガだからね。へえ、江島さんのところにも行ってただ。」
江島さんは手を止めて、俺を見上げる。
「え?順平くんか?でも今朝のニュースでも言ってたわよ。」
「あれおかしいなあ。ニセメルマガと有名な掲示板に書いただけだけど?」
「ちょっとした騒ぎよ。一部のサイトにアクセスが集中してネットワークに障害が起きてるみたい」