「依頼者は、前回ホテルのビデオの隠し撮りされて恐喝されていた人よ。持田兼良52歳。あの事件の被害者の一人よ。で、その人の隠し撮りされたビデオがネットに流出したの。そのビデオがある個人サイトから公開されているので、それを何とかして欲しいっていう依頼なの。ドメインは.toだからトンガ王国?まあサーバはどこにあるか判らないわよね?」
「えーそんなの無理でしょ。」
と言う俺に
「まあ、お得意さまだから、それほどむげにはでしないし。」
とのたまう江島さん。
「多分、個人のサイトを潰すぐらいだったらDos攻撃でつぶれるけど、データセンターに入ってるPCだと、Dos攻撃対策されているかもしれないしなあ。それに潰してもバックアップがあればいくらでもコピーサイトが作れるしね。断れば?」
そう言う俺に、江島さんは、
「流石に、いくら潰しても新しいサイトがいくらでも立つ可能性があるのは理解してたわよ。だから前金で10万、1サイト潰す毎に20万だって。結局潰せなくても、努力するだけで10万なんだからやってみたら?所長はその気で引き受けるつもりみたいよ。」
と江島さんに言われるとその気になってくる。
「じゃあ、やるだけやってみるかなあ?」
「よかった。じゃ、依頼主にオッケーの返事しておくわね。」
「了解、じゃよろしく。とりあえず、当面のターゲットは依頼書に書かれたここのサイトだよね。じゃ、家で調べてみて、何か判ったら連絡するよ。」
先ずは、情報収集だ。
自宅に帰ると、PCを立ち上げて、そのサイトに行ってみる。
確かに素人が作ったっぽいシンプルなデザイン。
報告書にあった映像ファイルのあるURLを入れてみる。ダウンロードを開始した。確かにそこに実体はあるようだ。
念のため、ムービーソフトで再生してみる。
問題なく再生できた。前に見たファイルが編集され、1つのファイルになっていて、自動的に画面が切り替わり、BGMも入っている。誰かが、販売目的で編集したのかもしれない。そうなると完全回収はほぼ不可能だな。
そのサイトを検索して見たが他にムービーファイルは置いていなかった。個人のサイトで、気に入ったムービーファイルを紹介してダウンロードフリーにしていると言った感じか?
用意したUSBメモリに映像ファイルのバックアップを取る。
なんとなく、フリーのCMS使ってそうな臭いがするなあと思って心当たりのあるフリーCMSの管理画面のディレクトリを入れてみる。案の定、ログイン画面が表れた。
これ以上の作業は危険だ。ここから先の作業は、回線が特定されても支障のない場所で続けよう。
表示したログイン画面のハードコピーをとって、画面を閉じた。
念のため、映像ファイルのファイル名で検索してみると、5件ほどヒットした。もう既にこのサイト以外にも漏れているようだ。
一旦ノートPCを閉じて、Dバッグに入れると、Dバッグを背負って近所のネットカフェに向かった。
2009年12月29日火曜日
2009年12月22日火曜日
第3話「ウェブサイトの恐怖 漏洩情報を排除せよ」#3
「お疲れさん。」
サバゲー後は恒例でスーパー銭湯につかって汚れを落とし、そこで生ビールで乾杯。
「いやーお疲れさん。久々の夜戦は新鮮だねえ。」
と所長は顔を上気させて楽しそう。
「せっかくだから、今度の夜戦のために暗視鏡を買っておこうかと思って。」
と、サバゲーグッズの話に展開していく。こりゃ話が長くなりそうだなと話題を変えてみる。
「そういえば、所長あれから俺のできそうな仕事はないですかねえ。しばらく暇なんでよ。」
グッズの話ができなくて残念そうだが、こっちの話にのってくれた。
「そうだなあ。今のところ、特にないけど。あ、そうだ昨日来ていた案件、順平くんにお願いしなけりゃと思ってたんだよ。つまんない案件かもしれないけど、明日暇だった事務所においでよ」
「じゃ明日行きますね。どんな案件ですか?」
「この前解決してもらった隠し撮りビデオと同じ依頼者からで、うーん詳しい話は明日と言うことで。そうそう、さっきに話だけど、オークションに暗視スコープの掘り出し物が出品されててさあ。どうやら米軍の放出品らしいんだよね。」
とグッズの話に戻ってしまった。
話は長そうだ。順平は生ビールをクピッと飲んだ。
「机の上に依頼書があるから見ておいてくれ。」
と、所長が机の上を指しながら言った。
サバゲーの翌日、朝から事務所に行くとソファーに所長が寝ていた。
二日酔いなのか気分が悪そうだ。
「Webサイトがらみだから、順平くん担当で良いだろ?報酬はまた相談するから、今はそっとしておいてくれ」
と言って、頭から毛布をかぶってしまった。
しょうがないなあ。と思いながらも、依頼に興味があったので早速、依頼書を見てみる。
「あら、順平くんこんにちは」
奥から江島さんが出てきた。
「ちょっと聞いてよ。昨日大変だったんだから。」
近所の話好きなおばちゃん状態で江島さんが近づいてきた。
「順平くんが帰ってから、私が助っ人してあげた電電探偵事務所の面々がやってきて、本当の決着付けるんだってジガーバーに行って、ウォッカのショット対決だって。で、たった15杯目でこの有様よ。まったくもう。その続きは、私が20杯ほどで、後の全員が倒れたから、うちの事務所の勝ちだけどね。」
で、そんなに飲んで江島さんは、何ともないのか?不死身の肝臓だ。
「その後、帰りはタクシーに連れ込むのをバーテンダーさんに手伝ってもらったり、事務所まで運ぶのをタクシーの運転手さんに手伝ってもらったりで大騒ぎだったのよ。まったく。」
話が止まらなさそうだったので、依頼書を見せて強引にブレイク。
「ごめん、今日はこの件なんだ」
「あ、依頼の件ね。ごめんごめん。私も依頼者から一緒だったから説明してあげるわ。」
サバゲー後は恒例でスーパー銭湯につかって汚れを落とし、そこで生ビールで乾杯。
「いやーお疲れさん。久々の夜戦は新鮮だねえ。」
と所長は顔を上気させて楽しそう。
「せっかくだから、今度の夜戦のために暗視鏡を買っておこうかと思って。」
と、サバゲーグッズの話に展開していく。こりゃ話が長くなりそうだなと話題を変えてみる。
「そういえば、所長あれから俺のできそうな仕事はないですかねえ。しばらく暇なんでよ。」
グッズの話ができなくて残念そうだが、こっちの話にのってくれた。
「そうだなあ。今のところ、特にないけど。あ、そうだ昨日来ていた案件、順平くんにお願いしなけりゃと思ってたんだよ。つまんない案件かもしれないけど、明日暇だった事務所においでよ」
「じゃ明日行きますね。どんな案件ですか?」
「この前解決してもらった隠し撮りビデオと同じ依頼者からで、うーん詳しい話は明日と言うことで。そうそう、さっきに話だけど、オークションに暗視スコープの掘り出し物が出品されててさあ。どうやら米軍の放出品らしいんだよね。」
とグッズの話に戻ってしまった。
話は長そうだ。順平は生ビールをクピッと飲んだ。
「机の上に依頼書があるから見ておいてくれ。」
と、所長が机の上を指しながら言った。
サバゲーの翌日、朝から事務所に行くとソファーに所長が寝ていた。
二日酔いなのか気分が悪そうだ。
「Webサイトがらみだから、順平くん担当で良いだろ?報酬はまた相談するから、今はそっとしておいてくれ」
と言って、頭から毛布をかぶってしまった。
しょうがないなあ。と思いながらも、依頼に興味があったので早速、依頼書を見てみる。
「あら、順平くんこんにちは」
奥から江島さんが出てきた。
「ちょっと聞いてよ。昨日大変だったんだから。」
近所の話好きなおばちゃん状態で江島さんが近づいてきた。
「順平くんが帰ってから、私が助っ人してあげた電電探偵事務所の面々がやってきて、本当の決着付けるんだってジガーバーに行って、ウォッカのショット対決だって。で、たった15杯目でこの有様よ。まったくもう。その続きは、私が20杯ほどで、後の全員が倒れたから、うちの事務所の勝ちだけどね。」
で、そんなに飲んで江島さんは、何ともないのか?不死身の肝臓だ。
「その後、帰りはタクシーに連れ込むのをバーテンダーさんに手伝ってもらったり、事務所まで運ぶのをタクシーの運転手さんに手伝ってもらったりで大騒ぎだったのよ。まったく。」
話が止まらなさそうだったので、依頼書を見せて強引にブレイク。
「ごめん、今日はこの件なんだ」
「あ、依頼の件ね。ごめんごめん。私も依頼者から一緒だったから説明してあげるわ。」
2009年12月15日火曜日
第3話「ウェブサイトの恐怖 漏洩情報を排除せよ」#2
俺の頭に、その体に不似合いな6インチのM16を向け。
「さよなら」
というと、引き金を引いた。弾は見事に眉間に当たった。
俺はその場に崩れ倒れた。
「また負けちゃったよ。江島さん強すぎない?」
「なんで、順平くん、あそこで油断しちゃうかなあ。」
所長が不満顔で言う。
「所長を救ってあげたからでしょ。それに、そういう所長だって、江島さんに1対1で負けてるじゃないですか。」
「接近戦だとロングバレルは不利なんだから、仕方ないでしょ」
俺を倒した後、江島さんは、M16を片手に所長の木立に向かってダッシュした。
あわててT所長は江島さんに銃を向けようとするが木立がじゃまになって上手く狙えない。
半歩下がって体制を立て直した頃には江島さんは所長の間際まで近づいていて、所長が江島さんを狙う前に眉間を打ち抜かれていた。
今日は、近隣の探偵事務所対抗でのサバゲー大会。
ホントは事務所単位なんだけど、うちの事務所は、昨年、一昨年と優勝が続き、強すぎるとのクレームがあり、去年最下位だった探偵事務所のメンバーと江島さんが強制的にトレードされて敵方に。
結局、昨年最下位探偵事務所が優勝。結局うちの事務所が強かったのは、江島さんのおかげなのね。
なんとか準優勝できて、面目は躍如した。俺は探偵事務所対抗のサバゲーは初めてだったが、所長とは同じサバゲークラブでチームを組んだことが何回もある。
所長はもっぱら、スナイパー役で、腕が良い。本物のスコープを付けてちょと大人げない。
最近は電動銃が主流だが、俺たちはもっぱらガス銃を好んで使っている。
なぜなら、違法ではあるが、改造して外部のエアタンクにホースで接続して、パワーアップできるからだ。
エアタンクは背中の腰の位置に固定している。
特にスナイパー役の所長は、エアタンクのおかげで弾道が安定するので欠かせない。
「そういえば江島さん何でM16何ですか?」
「え?かっこいいじゃない。リボルバーって最高よね。M16って重厚感があってバランスとれてるって感じじゃない?」
と言いながら、腰のホルスターからM16を抜いて早撃ちのマネをする。
本物だったら、撃った瞬間に手首の骨が砕けだろうなあと思いながら。
「でも、弾数が少ないし、薬きょうの換装も面倒だからサバゲーじゃ不利でしょ」
「それが良いんじゃない。弾の金属質な感じも良いし、換装も手間が良いのよね。それにさっきも1回も換装してないわよた。結局6発つかってないもん」
くそお。俺は50発以上ばらまいたぞ。まあ、牽制の意味でばらまいているから良い悪いはないけど。
滝沢探偵事務所チームの3人とも江島さんにやられた訳だから、1人あたり2発使ってないって驚異だよ。
「換装も早いわよ」
といって、M16を取り出し、シリンダーを外して、上に向けて薬きょうを解放すると、スピードローダーにセットされた弾を装着、シリンダーを戻す。
1アクションにしか見えないスピードで換装が完了した。
この人、生まれる時代を間違ったね。
「さよなら」
というと、引き金を引いた。弾は見事に眉間に当たった。
俺はその場に崩れ倒れた。
「また負けちゃったよ。江島さん強すぎない?」
「なんで、順平くん、あそこで油断しちゃうかなあ。」
所長が不満顔で言う。
「所長を救ってあげたからでしょ。それに、そういう所長だって、江島さんに1対1で負けてるじゃないですか。」
「接近戦だとロングバレルは不利なんだから、仕方ないでしょ」
俺を倒した後、江島さんは、M16を片手に所長の木立に向かってダッシュした。
あわててT所長は江島さんに銃を向けようとするが木立がじゃまになって上手く狙えない。
半歩下がって体制を立て直した頃には江島さんは所長の間際まで近づいていて、所長が江島さんを狙う前に眉間を打ち抜かれていた。
今日は、近隣の探偵事務所対抗でのサバゲー大会。
ホントは事務所単位なんだけど、うちの事務所は、昨年、一昨年と優勝が続き、強すぎるとのクレームがあり、去年最下位だった探偵事務所のメンバーと江島さんが強制的にトレードされて敵方に。
結局、昨年最下位探偵事務所が優勝。結局うちの事務所が強かったのは、江島さんのおかげなのね。
なんとか準優勝できて、面目は躍如した。俺は探偵事務所対抗のサバゲーは初めてだったが、所長とは同じサバゲークラブでチームを組んだことが何回もある。
所長はもっぱら、スナイパー役で、腕が良い。本物のスコープを付けてちょと大人げない。
最近は電動銃が主流だが、俺たちはもっぱらガス銃を好んで使っている。
なぜなら、違法ではあるが、改造して外部のエアタンクにホースで接続して、パワーアップできるからだ。
エアタンクは背中の腰の位置に固定している。
特にスナイパー役の所長は、エアタンクのおかげで弾道が安定するので欠かせない。
「そういえば江島さん何でM16何ですか?」
「え?かっこいいじゃない。リボルバーって最高よね。M16って重厚感があってバランスとれてるって感じじゃない?」
と言いながら、腰のホルスターからM16を抜いて早撃ちのマネをする。
本物だったら、撃った瞬間に手首の骨が砕けだろうなあと思いながら。
「でも、弾数が少ないし、薬きょうの換装も面倒だからサバゲーじゃ不利でしょ」
「それが良いんじゃない。弾の金属質な感じも良いし、換装も手間が良いのよね。それにさっきも1回も換装してないわよた。結局6発つかってないもん」
くそお。俺は50発以上ばらまいたぞ。まあ、牽制の意味でばらまいているから良い悪いはないけど。
滝沢探偵事務所チームの3人とも江島さんにやられた訳だから、1人あたり2発使ってないって驚異だよ。
「換装も早いわよ」
といって、M16を取り出し、シリンダーを外して、上に向けて薬きょうを解放すると、スピードローダーにセットされた弾を装着、シリンダーを戻す。
1アクションにしか見えないスピードで換装が完了した。
この人、生まれる時代を間違ったね。
2009年12月8日火曜日
第3話「ウェブサイトの恐怖 漏洩情報を排除せよ」#1
夜の公園に公園の駐車場からヘッドライトの明かりが漏れ込んで、公園の中は明るい。
木立の影が細長く公園の芝生に伸びる。
街中にあるにしては、木立が多く、公園の外からは、中の様子をうかがうことはできない。
夜も19時を過ぎ、何の施設もないこの公園は普段は静かではあるが、今日は何やら人の気配がある。
「あっ」
という叫び声が聞こえ、順平のすぐ隣の木陰にいた男が倒れた。
「順平くん、助っ人がやられたようだ」
ヘッドセットに所長の声が響く。
「みたいですね。」
肩で息をしながら俺が応える。向かいの木陰を見ると人影らしい動きが見えるが、一瞬で狙えない。
「そろそろ、例の作戦いきますか?」
という俺にヘッドセットから
「大丈夫か?」
と心配そうな所長の声。
「なあに、準備ok!10秒後に作戦開始します。」
と一息ついて、
「5、4、3、2、1、GO」
と言って一気に滑り台のある位置までダッシュする。すると、無数の弾が向かいの林の中から発射されるが、むなしく頭上を通過する。
俺を狙おうと体を乗り出した男がうかつにも車のライトに照らされた。
その瞬間、パシュという音がして、その男の眉間が打ち抜かれる。
滑り台の影に隠れようとする俺を狙って、もう一人の男が動いた。
木陰に隠れてはいるが、背景が明るくシルエットに浮かびだしたとたん、頭部が打ち抜かれた。
俺は、滑り台に当たるカンカンという音が鳴り止むやむのを待たずに、隣の木立に体を隠した。
さらに、もう1人「あ」という短い叫び声を残して敵が倒れた。所長に撃たれたようだ。
「さすが、所長、良い腕してるね。」
「すまんが、順平くん。火線がこっちに集中してきたから援護してくれないか?」
しまったすっかり忘れていた。
「了解。」
俺はM93Rを構えると木立の影から敵の様子をうかがった。
確かに、俺を狙うものがいなくなり、逆に3人を葬った所長の方に着弾の集中している。
見ると、所長のすぐ近くまでハンドガンを持って移動している男がいる。
ハンドガンで長距離射程は厳しいが、狙ってみる。
セミオートからシングルに切り替え、両手で慎重に狙う。
パシュ
コルガバを持った男の背中に当たったらしく、そのまま前につんのめって倒れた。
これで敵は残り1名のはず。楽勝モードで敵を探すと
「バーン」
という声に振り返ると、声の主は後ろにいた。江島さんだ。
≪#2へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
木立の影が細長く公園の芝生に伸びる。
街中にあるにしては、木立が多く、公園の外からは、中の様子をうかがうことはできない。
夜も19時を過ぎ、何の施設もないこの公園は普段は静かではあるが、今日は何やら人の気配がある。
「あっ」
という叫び声が聞こえ、順平のすぐ隣の木陰にいた男が倒れた。
「順平くん、助っ人がやられたようだ」
ヘッドセットに所長の声が響く。
「みたいですね。」
肩で息をしながら俺が応える。向かいの木陰を見ると人影らしい動きが見えるが、一瞬で狙えない。
「そろそろ、例の作戦いきますか?」
という俺にヘッドセットから
「大丈夫か?」
と心配そうな所長の声。
「なあに、準備ok!10秒後に作戦開始します。」
と一息ついて、
「5、4、3、2、1、GO」
と言って一気に滑り台のある位置までダッシュする。すると、無数の弾が向かいの林の中から発射されるが、むなしく頭上を通過する。
俺を狙おうと体を乗り出した男がうかつにも車のライトに照らされた。
その瞬間、パシュという音がして、その男の眉間が打ち抜かれる。
滑り台の影に隠れようとする俺を狙って、もう一人の男が動いた。
木陰に隠れてはいるが、背景が明るくシルエットに浮かびだしたとたん、頭部が打ち抜かれた。
サバゲー大好きです。 | 俺の相棒 | 夜の公園にこんなのがいたらちょっと怖い。 |
俺は、滑り台に当たるカンカンという音が鳴り止むやむのを待たずに、隣の木立に体を隠した。
さらに、もう1人「あ」という短い叫び声を残して敵が倒れた。所長に撃たれたようだ。
「さすが、所長、良い腕してるね。」
「すまんが、順平くん。火線がこっちに集中してきたから援護してくれないか?」
しまったすっかり忘れていた。
「了解。」
俺はM93Rを構えると木立の影から敵の様子をうかがった。
確かに、俺を狙うものがいなくなり、逆に3人を葬った所長の方に着弾の集中している。
見ると、所長のすぐ近くまでハンドガンを持って移動している男がいる。
ハンドガンで長距離射程は厳しいが、狙ってみる。
セミオートからシングルに切り替え、両手で慎重に狙う。
パシュ
コルガバを持った男の背中に当たったらしく、そのまま前につんのめって倒れた。
これで敵は残り1名のはず。楽勝モードで敵を探すと
「バーン」
という声に振り返ると、声の主は後ろにいた。江島さんだ。
ライフルを持ち運ぶ際は、ケースに入れて。 | 最近は、ガスより電動ですね。 | フルフィンガーだけど、人差し指が出せる優れもの |
≪#2へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年12月1日火曜日
第2話「家出少女救出作戦」#10
救急車が到着し、3人に女性を搬送した後、警察には後で事情を説明するからと無理やり抜け出した。
江島さんからの連絡で、
「ヘルプの探偵さんがホテルの部屋をマークしておいたところに警察が入って、高須と残りの2人は覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕だって」
よかった。こっちは一安心。
そのホテルに3名が監禁されていたらしい。
俺と所長はいったん事務所に戻ってきた。
さっき電話で目暮警部からの連絡で、高須のいたホテル、高須のマンション、倉庫のプレハブ、中国船、いずれも捜索したが、南条さんは見つかっていない。
いったいどこに隠れたんだろうか?
もしかして、元々高須とは一緒に話したぐらいの関係で拉致されていなかったのか?
「そういえば高須のマンションって結構高級そうでしたよね。ていうことは、エレベータとかに監視カメラもあるんじゃないですか?」
「ああ確かに。たぶん警備会社の管理になっていると思うから、この数日のビデオは見れると思う。早速あたってみるか」
なぜだか警備会社にもコネのある所長は早速ビデオデータの入ったハードディスクを借りてきた。
「エレベータは2機あるからデータは2つある。俺と順平くんで手分けして見よう」
幸い、エレベータが停止している時間の画像は撮っていないので、早送りで見ると1日分は1時間もかからず見ることができる。2日目に差し掛かったあたりで、高須と南条さんがエレベータで上の階に行くのが確認できた。
「よし、高須のマンションに行ったところまでは確認できたな」
じゃ、次はマンションから出るときの映像だが、それが見つからない。
「おかしいな。見逃したかな?」
と俺が言うと
「まあ、階段を使えば、エレベータの映像には残んないけど、普通はエレベータ使うよな」
と所長が答える。
「もしかして、まだ高須のマンションのどこかにいるのか?」
と所長が立ち上がったので、俺も続く。
2人で車に乗って、高須のマンションに向かう。その間に所長は目暮警部に捜査現場へ立ち入りの許可を取った」
マンションの外から高須の部屋を見上げて、確認して、高須の部屋にエレベータで上がる。
もう捜査の人はいないが立ち入り禁止のテープが張られ、警官が2名張り付いている。事前に連絡が行っていたせいか、所長の顔を見ても敬礼しただけで何も言わない。
「ふーん」
と思いながらも、高須の部屋に入りリビングから外を眺める。
警察が散々捜した後だから、何も出ようがないと思うが、エレベータのビデオを見る限りは南条ゆかりさんはこの部屋にいる。
寝室と和室、洋間、台所とうろうろしていると何か気持ち悪い。何だろう?この気持ち悪さは?
一旦部屋から出て、1階まで降りてみる、もう一度下から高須の部屋を見上げる。何かが違う。
高須のマンションは、俗に言うデザインマンションで、ちょっと特異なデザインになっている。エントランス側は北向きでベランダはない。代わりに窓が4つついている。あれ、と思い、高須の部屋に上がってみる。北向きの部屋は寝室と洋間、寝室には2つ窓があるが、洋間には窓が1つ。ではもう1つの窓はどこに?
位置から言うと、洋間と隣の部屋との間にもう1つ窓のある空間があるはず。
洋室の壁には何の仕掛けも見れないし、洋室の隣はバスルームがある。後はクローゼットの中ぐらいしか考えられない。
クローゼットの横壁についていた、フックが動く。と、横壁が2つに折れて中の部屋への通路が現れた。
中は薄暗い。1つだけの窓からはいる明るさだ。次第に目がなれると4畳ぐらいのほど長い空間にベッドが置かれ、そこに女性が寝ていた。南条ゆかりさんだ。やせて肌は土気色だが写真で見た彼女に間違いないと思う。
あわてて、所長と入り口の警官を呼んで、救急車を手配した。
その後、所長は夜中になってようやく帰ってきた。
「いやーまいったよ。事情聴取で今までかかちゃったよ」
「ホテルにいた高須と仲間の2人組に職質かけたら麻薬を所持が見つかって、3人とも現行犯逮捕だったてさ」
事務所のソファに寝ころびながら疲れた様子で言った。
「ま、覚醒剤持って無くても、状況証拠は押さえているから、逃げられないけどね。連れていた女の子からも覚醒剤反応が出ていたそうだよ。やっぱり、女の子をホテルに連れ込んで麻薬を打っていた様だ。」
所長は江島さんの入れたコーヒーを飲みながら続けた。
「後は、逮捕監禁までは立証できる。が、人身売買までは、国内法では、追求は難しいかもしれないなあ。」
どうやら奴は、大阪三宮界隈で家出した少女を見つけるとナンパし、ホテルなどで麻薬を覚えさせ、その後、自宅へ連れ込み、麻薬漬けにした後、港近くの倉庫に監禁し、中国船で香港方面に人身売買を行っていようだ。
奴の逮捕を受けて、中国大使館から許可を得た港湾当局が中国船を捜索し、船長と乗組員が逮捕され、中国当局に引き渡された。
香港の売買ルートの追跡を中国当局に依頼し、この事件は収束した。
奴のバックに暴力団組織の影が見えたが、結局証拠がなく、捜査もそれまでとなった。
翌朝、事務所へ行くと、江島さん1人だった。
「おはよう」
と声をかけると、にっこりと笑って、
「順平くん。おはよう。昨日はお疲れ様でした。」
「いやいや、疲れたのは所長でしょ。長かったもんね」
そこに。ちょっと遅れて所長がやってきた。
「おはよう。江島くん。あれ、順平くんも早いねえ」
「おはようございます。昨日の事件が気になって、来てみました」
「昨日は、ありがとう。順平くんのおかげで、彼女を助けることができたようなもんだよ。もう少し遅れてたら、彼女の命にかかわっていたと思うよ。」
「いえいえ、それもこれも江島さんのキャンギャルのおかげです。」
「あそういえば、江島くん今日はキャンギャルじゃないの?」
と所長が反応する。
「当たり前でしょ。」
「あの衣装、制服にしない?」
「しません。」
「ちぇ」
子供みたいにすねてる所長。
所長は、俺を招き寄せると、小声で言った。
「順平くん。また、キャンギャル作戦使おうね。新しい江島さんの衣装を用意しとくから。」
嬉しそうに言う。
「何そこでこそこそ話してるんですか?もう、今月使った分の領収書早く出してくださいよ。」
「そうそう。順平くんの報酬だけど、途中から犯罪捜査に変わっちゃったね。幸い、救出した3名も他の探偵事務所に捜査協力依頼が出ててね。実際に問題を解決したうちに、謝礼の半分を回してくれたよ。その中から順平くんの取り分だ。40万だ!」
所長はお金の入った封筒を渡してくれた。
「いつもニコニコ現金払いだ。また頼んだよ。」
「ええ、良いですけど、今回も運が良かったですからねえ。次は判んないですよ。」
「了解。了解。結果オーライだよ。もし解決できなくても手間賃分はちゃんと払うから安心してくれ」
しかし、いつまでも運に頼るのもどうかと思うし、アングラサイトで何か良いツール無いかさがしてみようかなと思う今日この頃。
第二話 完
≪第三話へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
江島さんからの連絡で、
「ヘルプの探偵さんがホテルの部屋をマークしておいたところに警察が入って、高須と残りの2人は覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕だって」
よかった。こっちは一安心。
そのホテルに3名が監禁されていたらしい。
俺と所長はいったん事務所に戻ってきた。
さっき電話で目暮警部からの連絡で、高須のいたホテル、高須のマンション、倉庫のプレハブ、中国船、いずれも捜索したが、南条さんは見つかっていない。
いったいどこに隠れたんだろうか?
もしかして、元々高須とは一緒に話したぐらいの関係で拉致されていなかったのか?
「そういえば高須のマンションって結構高級そうでしたよね。ていうことは、エレベータとかに監視カメラもあるんじゃないですか?」
「ああ確かに。たぶん警備会社の管理になっていると思うから、この数日のビデオは見れると思う。早速あたってみるか」
なぜだか警備会社にもコネのある所長は早速ビデオデータの入ったハードディスクを借りてきた。
「エレベータは2機あるからデータは2つある。俺と順平くんで手分けして見よう」
幸い、エレベータが停止している時間の画像は撮っていないので、早送りで見ると1日分は1時間もかからず見ることができる。2日目に差し掛かったあたりで、高須と南条さんがエレベータで上の階に行くのが確認できた。
「よし、高須のマンションに行ったところまでは確認できたな」
じゃ、次はマンションから出るときの映像だが、それが見つからない。
「おかしいな。見逃したかな?」
と俺が言うと
「まあ、階段を使えば、エレベータの映像には残んないけど、普通はエレベータ使うよな」
と所長が答える。
「もしかして、まだ高須のマンションのどこかにいるのか?」
と所長が立ち上がったので、俺も続く。
2人で車に乗って、高須のマンションに向かう。その間に所長は目暮警部に捜査現場へ立ち入りの許可を取った」
マンションの外から高須の部屋を見上げて、確認して、高須の部屋にエレベータで上がる。
もう捜査の人はいないが立ち入り禁止のテープが張られ、警官が2名張り付いている。事前に連絡が行っていたせいか、所長の顔を見ても敬礼しただけで何も言わない。
「ふーん」
と思いながらも、高須の部屋に入りリビングから外を眺める。
警察が散々捜した後だから、何も出ようがないと思うが、エレベータのビデオを見る限りは南条ゆかりさんはこの部屋にいる。
寝室と和室、洋間、台所とうろうろしていると何か気持ち悪い。何だろう?この気持ち悪さは?
一旦部屋から出て、1階まで降りてみる、もう一度下から高須の部屋を見上げる。何かが違う。
高須のマンションは、俗に言うデザインマンションで、ちょっと特異なデザインになっている。エントランス側は北向きでベランダはない。代わりに窓が4つついている。あれ、と思い、高須の部屋に上がってみる。北向きの部屋は寝室と洋間、寝室には2つ窓があるが、洋間には窓が1つ。ではもう1つの窓はどこに?
位置から言うと、洋間と隣の部屋との間にもう1つ窓のある空間があるはず。
洋室の壁には何の仕掛けも見れないし、洋室の隣はバスルームがある。後はクローゼットの中ぐらいしか考えられない。
クローゼットの横壁についていた、フックが動く。と、横壁が2つに折れて中の部屋への通路が現れた。
中は薄暗い。1つだけの窓からはいる明るさだ。次第に目がなれると4畳ぐらいのほど長い空間にベッドが置かれ、そこに女性が寝ていた。南条ゆかりさんだ。やせて肌は土気色だが写真で見た彼女に間違いないと思う。
あわてて、所長と入り口の警官を呼んで、救急車を手配した。
デザインマンション | 最近は監視カメラも楽に設置できます | 隠し部屋 |
その後、所長は夜中になってようやく帰ってきた。
「いやーまいったよ。事情聴取で今までかかちゃったよ」
「ホテルにいた高須と仲間の2人組に職質かけたら麻薬を所持が見つかって、3人とも現行犯逮捕だったてさ」
事務所のソファに寝ころびながら疲れた様子で言った。
「ま、覚醒剤持って無くても、状況証拠は押さえているから、逃げられないけどね。連れていた女の子からも覚醒剤反応が出ていたそうだよ。やっぱり、女の子をホテルに連れ込んで麻薬を打っていた様だ。」
所長は江島さんの入れたコーヒーを飲みながら続けた。
「後は、逮捕監禁までは立証できる。が、人身売買までは、国内法では、追求は難しいかもしれないなあ。」
どうやら奴は、大阪三宮界隈で家出した少女を見つけるとナンパし、ホテルなどで麻薬を覚えさせ、その後、自宅へ連れ込み、麻薬漬けにした後、港近くの倉庫に監禁し、中国船で香港方面に人身売買を行っていようだ。
奴の逮捕を受けて、中国大使館から許可を得た港湾当局が中国船を捜索し、船長と乗組員が逮捕され、中国当局に引き渡された。
香港の売買ルートの追跡を中国当局に依頼し、この事件は収束した。
奴のバックに暴力団組織の影が見えたが、結局証拠がなく、捜査もそれまでとなった。
翌朝、事務所へ行くと、江島さん1人だった。
「おはよう」
と声をかけると、にっこりと笑って、
「順平くん。おはよう。昨日はお疲れ様でした。」
「いやいや、疲れたのは所長でしょ。長かったもんね」
そこに。ちょっと遅れて所長がやってきた。
「おはよう。江島くん。あれ、順平くんも早いねえ」
「おはようございます。昨日の事件が気になって、来てみました」
「昨日は、ありがとう。順平くんのおかげで、彼女を助けることができたようなもんだよ。もう少し遅れてたら、彼女の命にかかわっていたと思うよ。」
「いえいえ、それもこれも江島さんのキャンギャルのおかげです。」
「あそういえば、江島くん今日はキャンギャルじゃないの?」
と所長が反応する。
「当たり前でしょ。」
「あの衣装、制服にしない?」
「しません。」
「ちぇ」
子供みたいにすねてる所長。
所長は、俺を招き寄せると、小声で言った。
「順平くん。また、キャンギャル作戦使おうね。新しい江島さんの衣装を用意しとくから。」
嬉しそうに言う。
「何そこでこそこそ話してるんですか?もう、今月使った分の領収書早く出してくださいよ。」
「そうそう。順平くんの報酬だけど、途中から犯罪捜査に変わっちゃったね。幸い、救出した3名も他の探偵事務所に捜査協力依頼が出ててね。実際に問題を解決したうちに、謝礼の半分を回してくれたよ。その中から順平くんの取り分だ。40万だ!」
所長はお金の入った封筒を渡してくれた。
「いつもニコニコ現金払いだ。また頼んだよ。」
「ええ、良いですけど、今回も運が良かったですからねえ。次は判んないですよ。」
「了解。了解。結果オーライだよ。もし解決できなくても手間賃分はちゃんと払うから安心してくれ」
しかし、いつまでも運に頼るのもどうかと思うし、アングラサイトで何か良いツール無いかさがしてみようかなと思う今日この頃。
第二話 完
ドラッグは怖いねえ | アングラサイトを探そう | ハッカーのテクニック |
≪第三話へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年11月24日火曜日
第2話「家出少女救出作戦」#9
「ああ、俺だ」
入り口側の部屋から男の話し声が聞こえる。
「なんだって、今からか?しょうがないなあ。こっちか?ああ、大人しいもんだよ。この様子なら、2、3時間空けても問題ないだろ。じゃ、マンションでな」
電話が切れたようだ。2人の男の話し声が聞こえる。
「おい、いくぞ。」
「え、俺もか?」
「仕方がないだろ、3人も一気に釣れたんだから、俺と奴だけじゃ手に余るから、手伝えよ」
「いいけど、ここはどうすんだ」
「どうせ、2時間もかかりゃしないし、こいつら大人しいもんだろ。」
「ああ、そうだな。さっきやったばかりだから、2時間は大丈夫だろ。」
という話し声が聞こえたと思ったら、入り口側の部屋から真ん中の部屋に2人の男が入ってきた。茶髪に皮ジャンを着たパンクファッションの学生っぽい男とオールバックにブレザーを着た若い男だ。
茶髪の男がリビングに横たわっている女の顔をのぞき込んだ。
寝ていることを確認すると、左の奥の部屋に入った。
奥の部屋の様子は見えないが、しばらくしたら茶髪の男が出てきて、リビングで待っていたオールバックの男に合図した。
そして、二人一緒に入り口側の部屋に戻って扉を閉めた。
その後、鍵を掛ける音がした。
「オッケーじゃさっさと行くか」とこもった声が聞こえた後入り口のドアが開く音がした。
小声で実況中継していた俺だが、あわてて、コンクリートマイクと、ファイアースコープのセットをはずしてポケットに突っ込むと、音を立てないように慎重に足場を降りた。
「どうやら奴ら、出かけるみたいだよ」
「見つからないように気をつけて、慎重にね」
俺は、倉庫の中が覗ける窓に鏡を向けて奴らの動きを監視した。
2人の男たちは、奥の倉庫の方へ向かった。
「倉庫の仕切りの扉を開けて向こう側に行ったよ」
俺が江島さんに伝えると、
「危ないから、十分距離をとって、やつらの動きを監視してね」
と答える。
俺は、十部に時間をとってから慎重に倉庫の中に入り、奥の倉庫の方に向かった。
シャッター音が聞こえる。
奥の倉庫との境にある扉の窓越しにランクルが見えた。
「車がないと思ってたけど、奥の倉庫にランクルを隠していたよ」
「もし可能なら、やつらの写真を撮っておいて」と江島さん
ちょっと遠いが仕方ない。めいっぱいズームして、扉の窓越しに2人の男を撮った。
しばらくすると前方のシャッターが前回になり、車が走り出した。
なんとかナンバーが見えないかと車を撮ってみた。流石に確実にナンバーを見るために隣の倉庫に移動するリスクを犯すことはできなかった。
倉庫の前で、しばらく停止していたが、シャッターが降りるのを確認すると、車は走り去ってしまった。
「行ちゃったよ。たぶん高須が捕まえた新たな犠牲者のところに行ったかな?」
「そうかもね。新たな犠牲者は気になるけど、どうせ例のマンションに連れ込むんでしょうから、そっちは後で手を打ちましょう」と江島さん。
「今は、ここを片づけるのが先よ。さっき聞いた話では、もう奴らの仲間は残っていないはずよね。一気にプレハブ小屋を捜索しましょ。時間も無いことだし、手荒にいきましょ」
「え、でも鍵はかけてたよ。どうやって開けるの?」
「じゃとりあえず、入り口の扉まで行ってちょだい。作業カバンにドライバがあるはずだから、それを鍵穴に入れてね。その近くに何かドライバのお尻を叩くのにハンマーの変わりになるものないかしら?」
「おもり代わりに使われていような鉄骨の切れ端があるけど、これでいいかな?」
「上等よ。ドライバーを出して入り口の鍵穴に入れて、ドライバーのお知りを目いっぱい鉄骨でたたいて頂戴」
一時期はやっていたバンピングと呼ばれる鍵のクラッキング方法らしい。
閑静な住宅地では近所の目も気になるが、ここは港の巨大倉庫の中。倉庫の周辺もほぼ無人。ちょっとやそっと音を立てても誰も気がつかない。
特にこの手の安直な鍵には有効だってさ。ガン、ガン、ガンと叩いて、ドライバを力任せにねじる。
ちょっと抵抗があったが、
「お、マジ開いたよ」
「ね、言ったでしょ」
「入り口のすぐ中の部屋は事務所のような感じだな」
事務机が2つあり、奥には応接セットがあり、さらにその奥に扉がある。
「ここには誰もいないみたいだ。次の部屋に行ってみる」
扉にはこの部屋から鍵がかけられていた。
解錠して、急いで奥の扉を開けて、中の部屋に入って行った。
まさに、さっきファイバースコープで見た光景だ。
テレビの前に寝転がっているの女性を回り込んでみた。
どうやら寝ているようだ。
「残念、真ん中の部屋の女性は南条ゆかりさんではないよ」
「そう。じゃ最後の部屋ね」
「うん。たぶんそうだろ」
と返事しながら奥の部屋に進む。鍵はかかっていなかった。
奥の部屋に入ってみる薄暗いが寝室のようだ。
奥にダブルベッドが2つあり、右側に2人下着姿の女性が寝ている。左に男性が目隠しと猿轡をかまされて縛られている。
「男?所長じゃやない?」
あわてて紐を解こうとするが、硬くて解けない。あきらめて作業バッグからナイフを取り出して切る。
「いやー、助かったよ。順平くん。さすがマジにやばかった」
「なんとか無事でよかった。これだけ監禁の証拠があれば、警察も動くでしょ」
「ああ、被害者の俺もいるから十分だ。ところで南条さんは?」
「この二人うちどっちかでしょ?って、違う、南条さんじゃない。じゃ、彼女はいったいどこに?」
2人の女性を見てみる。
「おい、大丈夫か?」
揺り動かすとかすかに目を開けたが、こちらを見ていない。やばいな。
所長は俺の携帯で唯一気心の知れた水上警察の目暮警部に連絡を入れた。事前に状況は伝えておいたから迅速に動いてくれるだろう。ついでに救急と事務所に連絡を入れた。
先ほどの2人の男たちがランクルで高須のところへ向かったことを所長に伝えると、
「くそ、絶対につかまえてやる」
目暮警部にそのことを伝えた後、高須の尾行をお願いしていたヘルプの尾藤さんに連絡した。
「滝沢だ。尾藤くん、そっちの状況はどうだ?」
「高須が3人の女の子を連れてホテルに入りました。1時間ほど前です。今はそのホテルの前で張っています。」
「了解。いまメールで画像を送る。その画像の2人の男がランクルに乗って間もなく到着するはずだ。水上警察にも連絡を入れたからすぐに到着するはずだから、やつらの居場所を伝えてくれ。」
「了解。」
だが、肝心の依頼者の娘、南条ゆかりさんの姿がどこにも見えない。
≪#10へ続く≫
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入り口側の部屋から男の話し声が聞こえる。
「なんだって、今からか?しょうがないなあ。こっちか?ああ、大人しいもんだよ。この様子なら、2、3時間空けても問題ないだろ。じゃ、マンションでな」
電話が切れたようだ。2人の男の話し声が聞こえる。
「おい、いくぞ。」
「え、俺もか?」
「仕方がないだろ、3人も一気に釣れたんだから、俺と奴だけじゃ手に余るから、手伝えよ」
「いいけど、ここはどうすんだ」
「どうせ、2時間もかかりゃしないし、こいつら大人しいもんだろ。」
「ああ、そうだな。さっきやったばかりだから、2時間は大丈夫だろ。」
という話し声が聞こえたと思ったら、入り口側の部屋から真ん中の部屋に2人の男が入ってきた。茶髪に皮ジャンを着たパンクファッションの学生っぽい男とオールバックにブレザーを着た若い男だ。
茶髪の男がリビングに横たわっている女の顔をのぞき込んだ。
寝ていることを確認すると、左の奥の部屋に入った。
奥の部屋の様子は見えないが、しばらくしたら茶髪の男が出てきて、リビングで待っていたオールバックの男に合図した。
そして、二人一緒に入り口側の部屋に戻って扉を閉めた。
その後、鍵を掛ける音がした。
「オッケーじゃさっさと行くか」とこもった声が聞こえた後入り口のドアが開く音がした。
小声で実況中継していた俺だが、あわてて、コンクリートマイクと、ファイアースコープのセットをはずしてポケットに突っ込むと、音を立てないように慎重に足場を降りた。
「どうやら奴ら、出かけるみたいだよ」
「見つからないように気をつけて、慎重にね」
俺は、倉庫の中が覗ける窓に鏡を向けて奴らの動きを監視した。
2人の男たちは、奥の倉庫の方へ向かった。
「倉庫の仕切りの扉を開けて向こう側に行ったよ」
俺が江島さんに伝えると、
「危ないから、十分距離をとって、やつらの動きを監視してね」
と答える。
俺は、十部に時間をとってから慎重に倉庫の中に入り、奥の倉庫の方に向かった。
シャッター音が聞こえる。
奥の倉庫との境にある扉の窓越しにランクルが見えた。
「車がないと思ってたけど、奥の倉庫にランクルを隠していたよ」
「もし可能なら、やつらの写真を撮っておいて」と江島さん
ちょっと遠いが仕方ない。めいっぱいズームして、扉の窓越しに2人の男を撮った。
しばらくすると前方のシャッターが前回になり、車が走り出した。
なんとかナンバーが見えないかと車を撮ってみた。流石に確実にナンバーを見るために隣の倉庫に移動するリスクを犯すことはできなかった。
倉庫の前で、しばらく停止していたが、シャッターが降りるのを確認すると、車は走り去ってしまった。
こだわる人の | でこぼこ道もバリバリ走ります。 | プラモ作りは楽しいねえ。 |
「行ちゃったよ。たぶん高須が捕まえた新たな犠牲者のところに行ったかな?」
「そうかもね。新たな犠牲者は気になるけど、どうせ例のマンションに連れ込むんでしょうから、そっちは後で手を打ちましょう」と江島さん。
「今は、ここを片づけるのが先よ。さっき聞いた話では、もう奴らの仲間は残っていないはずよね。一気にプレハブ小屋を捜索しましょ。時間も無いことだし、手荒にいきましょ」
「え、でも鍵はかけてたよ。どうやって開けるの?」
「じゃとりあえず、入り口の扉まで行ってちょだい。作業カバンにドライバがあるはずだから、それを鍵穴に入れてね。その近くに何かドライバのお尻を叩くのにハンマーの変わりになるものないかしら?」
「おもり代わりに使われていような鉄骨の切れ端があるけど、これでいいかな?」
「上等よ。ドライバーを出して入り口の鍵穴に入れて、ドライバーのお知りを目いっぱい鉄骨でたたいて頂戴」
一時期はやっていたバンピングと呼ばれる鍵のクラッキング方法らしい。
閑静な住宅地では近所の目も気になるが、ここは港の巨大倉庫の中。倉庫の周辺もほぼ無人。ちょっとやそっと音を立てても誰も気がつかない。
特にこの手の安直な鍵には有効だってさ。ガン、ガン、ガンと叩いて、ドライバを力任せにねじる。
ちょっと抵抗があったが、
「お、マジ開いたよ」
「ね、言ったでしょ」
「入り口のすぐ中の部屋は事務所のような感じだな」
事務机が2つあり、奥には応接セットがあり、さらにその奥に扉がある。
「ここには誰もいないみたいだ。次の部屋に行ってみる」
扉にはこの部屋から鍵がかけられていた。
解錠して、急いで奥の扉を開けて、中の部屋に入って行った。
まさに、さっきファイバースコープで見た光景だ。
テレビの前に寝転がっているの女性を回り込んでみた。
どうやら寝ているようだ。
「残念、真ん中の部屋の女性は南条ゆかりさんではないよ」
「そう。じゃ最後の部屋ね」
「うん。たぶんそうだろ」
と返事しながら奥の部屋に進む。鍵はかかっていなかった。
奥の部屋に入ってみる薄暗いが寝室のようだ。
奥にダブルベッドが2つあり、右側に2人下着姿の女性が寝ている。左に男性が目隠しと猿轡をかまされて縛られている。
「男?所長じゃやない?」
あわてて紐を解こうとするが、硬くて解けない。あきらめて作業バッグからナイフを取り出して切る。
「いやー、助かったよ。順平くん。さすがマジにやばかった」
「なんとか無事でよかった。これだけ監禁の証拠があれば、警察も動くでしょ」
「ああ、被害者の俺もいるから十分だ。ところで南条さんは?」
「この二人うちどっちかでしょ?って、違う、南条さんじゃない。じゃ、彼女はいったいどこに?」
2人の女性を見てみる。
「おい、大丈夫か?」
揺り動かすとかすかに目を開けたが、こちらを見ていない。やばいな。
所長は俺の携帯で唯一気心の知れた水上警察の目暮警部に連絡を入れた。事前に状況は伝えておいたから迅速に動いてくれるだろう。ついでに救急と事務所に連絡を入れた。
先ほどの2人の男たちがランクルで高須のところへ向かったことを所長に伝えると、
「くそ、絶対につかまえてやる」
目暮警部にそのことを伝えた後、高須の尾行をお願いしていたヘルプの尾藤さんに連絡した。
「滝沢だ。尾藤くん、そっちの状況はどうだ?」
「高須が3人の女の子を連れてホテルに入りました。1時間ほど前です。今はそのホテルの前で張っています。」
「了解。いまメールで画像を送る。その画像の2人の男がランクルに乗って間もなく到着するはずだ。水上警察にも連絡を入れたからすぐに到着するはずだから、やつらの居場所を伝えてくれ。」
「了解。」
だが、肝心の依頼者の娘、南条ゆかりさんの姿がどこにも見えない。
こんな大きさのダブルベッドが2つ | 作業員の作業バッグはこれ | タフなのは、この電工ナイフです。 |
≪#10へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年11月17日火曜日
第2話「家出少女救出作戦」#8
「ええ?どういうこと?」
問いかける俺に、首を振る江島さん。
「呼び出し音は鳴るけど、出ないのよ。今、手が離せないのかもしれないわ」
「どうするの?せっかく手がかりが見つかったのに」
という俺に対して、江島さんはにっこりと微笑みながら
「あら、ここに立派なエージェントがいるじゃない」
と、俺の肩を叩いた。
「え、俺?そんな無理だよ」
という俺を無視して、江島さんは
「えっと、港湾なら作業着のほうが目立たないから、紺の作業着一式ね。」
と、倉庫から変装セットを持ってきた。
「帽子も用意したから、太目のフレームのメガネで印象が変わるわ。」
「作業バッグに、道具一式入れといたから。使い方は後で説明するわね。」
「ほら、さっさと着替える。はい、ヘッドセットもして、ウエストポーチに携帯入れて忘れずに」
「え、でも」
とか言いながらも、なんとなく勢いに押されて着替え始める俺。
「じゃ、よろしくね」といって事務所を追い出された俺。
「どうするかなあ。現場なんて怖いしなあ。どっちかというとデスクワークのほうが」
と独り言を言う俺に、ヘッドセットから突込みが入る。
「こらこら、ぶつくさ言ってないでさっさと車でポーアイまで行って。向こうに到着するまでに作戦考えとくから。」
という江島さんの声にしぶしぶ車を走らせる俺であった。
「このブロックのはずだよな。」
倉庫のあるブロックの端で車を止めた。
カーナビの地図で現在位置を確認し、携帯の地図も確認する。
広い大きな倉庫と巨大なクレーン、広く空いた護岸へ通じる空き地が見える。
「そこから先は、車だと見つかるから、歩きでよろしく」と江島さんの声。
「了解」と俺も答える。
どうやらあたりに人気は無さそうだ。
「人影はなさそうだけど」
「じゃさっさと倉庫のほうに向かってね」
慎重に物陰をつたって倉庫あるほうに進んでいく。
「ありゃ、道路から倉庫まで広い駐車スペースで隠れるところがないよ」
「そう、じゃ、あんまりこそこそせずに、堂々と倉庫まで歩いてね」
背中が丸まっていた俺は、背筋を伸ばして、隠れる物陰がないのを気にしながらも怪しまれないように進む。
一番近くの倉庫に近づくと、大きなシャッターの隣に人が出入りするための扉を見つけた。
「北西の角に扉があるよ」
「扉に窓はある?」
「ああ、あるけど」
「じゃ、扉の窓の中から見られないように近くまで進んで、窓の中を鏡を使って確認してね」
江島さんの用意してくれた作業バッグの中に100均で売ってそうな折りたたみの手鏡がある。
「ふーん」
と思いながら、扉の正面を大きく迂回して扉に近づいた。
折りたたみの手鏡を開いて、扉の窓に近づけ、中の様子を探ってみる。
「うん、誰もいないみたいだ」
「そう。念のため、自分お目でも確認してね」
窓の端からそっと確認してみる俺。
「誰もいないみたいだ。何もなくてがらーんとしている」
「じゃ、扉開けてみて。音がしないように気をつけてね」
そっと扉を開けてみる。鍵はかかっていなかった。
「中に入ったよ。倉庫の中はいくつかのブロックに区切られているみたい」
手前のブロックには何もなくフォークリフトで運ぶのに使う木の土台がいくつか積み上がられているだけだ。
「あれ?おかしいな」
「どうしたの?」
「いや、何か人がいる場所があるかと思ったけど、何もないから変だなって」
と何もないことを不振に思いながら、次のブロックに行く。
次のブロックもそこも荷物はほとんどない。
よく見るとこのブロックの奥の壁に何かある。
倉庫の壁にプレハブの小屋のようなものが立っているようだ。
建物の内側に茶色くくすんだ同系色の小屋だからか、すぐには気が付かなかった。
「これか?」
「何か見つけたの?」
と問いかける江島さんに小声で
「プレハブの小屋が倉庫の中にあるのを見つけたんだ」
「あら、目いっぱい怪しいわね。きっとそれよ。まずはプレハブの状況を教えて」
俺は慎重に小屋の方に移動しながら話を続けた。
「倉庫の内側に茶色のプレハブ小屋がたぶん、3棟横に連結された形であるよ。倉庫の向こう側の壁とプレハブの壁はくっついているみたいだ。」
足音が妙に反響して誰かに聞かれないか気になる。
あれ?妙だ
「窓があったみたいだけど、そこが鉄板でふさがれてるみたい。ボルトで固定されてるよ」
「軟禁目的でふさがれたのかもね。プレハブの中から見られないか注意してぐるっと周囲を見てもらえる?入り口とか、窓とか開いている部分を確認してちょうだい」
「了解」
江島さんの指示に従って、プレハブの周囲をぐるっと回ってみる。
どの窓も塞がっているようだ。
プレハブの向こう側の壁は倉庫の壁に接している。
「倉庫の外に出ないと1周できないけどどうする?」
「プレハブの近くに倉庫の扉はあるかしら?」
「ああ、ちょうど倉庫の右側にあるよ」
「じゃ、扉の向こうに気をつけて、倉庫の外側も見てきて頂戴」
「了解」
ここの扉も鍵がかかっていなかった。
扉を開けて倉庫の外側に出る。
「ああ、プレハブと接している部分の倉庫の窓枠がはずれてるよ。そこだけプレハブの外壁が外に出てる。そ換気扇とガスの給湯器がついるよ」
「じゃあ、やっぱり怪しいわね」
「そのすぐ下にはエアコンの室外機も置いてあるよ。ということはお風呂かシャワーもあって、それなりに生活できるってことか」
「そうみたいね」
「どうやら、入り口は、倉庫の内側、左側のプレハブの1カ所のみみたいだよ。」
「じゃ、先ずは中の様子をコンクリートマイクを使って調べてみて。作業バッグにコンクリートマイクとヘッドセットが入っているはずよ」
「了解」
俺は、作業バッグからコンクリートマイクを取り出すと、倉庫の外側からプレハブの壁がむき出しになった部分にコンクリートマイクを当ててみる。そこから伸びたヘッドセットを携帯のヘッドセットとは反対側の耳に架ける。
「あ、テレビテレビの音が聞こえる。他に人の話し声とかは聞こえないよ」
しばらく聞いていたが、変化はなさそうだ。
「変化なさそうだねえ」
と俺が言うと、江島さんは
「じゃ中を覗いてみましょう。換気扇の穴から中が覗けるはずよ」
「え、ちょっと換気扇の穴は高すぎるよ」
「何かそこら辺に足場になりそうなものはないの?」
「フォークリフトの木製パレットがあるから高さだけなら問題なけど、覗くのは難しくない?」
という俺に江島さんは、
「作業バッグにファイバースコープも入れているから大丈夫って。さっさと足場を作ってね。目安は、足場の上に座って、換気扇の穴が目の前に来るぐらいまで積んでね」
「え、結構な高さまでつむんだな」
と俺はしぶしぶ周辺の木製パレットを移動して換気扇の下に積み上げていく。
1.5mほど積み上げて、パレットに座った状態で換気扇に届く高さになった。
「パレットを積み上げたよ。上に座って、換気扇の穴が目の前にある。穴は覗けるけど、この角度だと、天井しか見えないよ。どうしたらいいの?」
という俺に対して、江島さんは
「じゃ、指にハンカチを巻いて、一気に換気扇の羽根を止めて、ハンカチで固定してちょうだい」
「うわー痛そう」
という俺に、江島さんは、
「一気に止めればそれほど痛くないは、覚悟を決めて、一気にね」
まったく、人事だと思って。
俺は、作業かばんの中からハンカチを2枚取り出し、1枚を指に巻いて換気扇の羽根を一気に止める。急に風切音が消えた。
静かになった周囲には、エアコンの運転音とテレビの声が聞こえている。話し声は聞こえない。
気づかれていない様だ。
換気扇の隙間から覗くが人の気配は無い。手早くもう1枚のハンカチで換気扇の羽根を固定した。
「換気扇止めたよ」
「じゃ、作業かばんからファイバースコープを取り出して、カメラとヘッドマウントディスプレイにつないで装着してね」
作業かばんからファイバースコープとカメラを取り出して、接続する。さらにカメラの出力端子に、ヘッドマウントディスプレイに接続する。
このヘッドマウントディスプレイは薄型でかけていても周囲の様子がわかる。
ファイバースコープを慎重に換気扇の隙間に入れて中の様子を伺った。
所長の知り合いの内視鏡を作っているメーカーに特別に作ってもらったファイバーの先の向きが手元で操作できるすぐれものらしい。
内視鏡ほどの解像度はないが、640×400ぐらいの解像度はでる。
「準備ができたら、ファイバースコープの先端を換気扇の穴の隙間に入れて見てちょうだい」
言われたとおりにして見てみると、右奥の部屋の隅にテレビがあり、1人の下着姿の女性が横になっているのが見えた。
「あ、見えたよ、女の人が真ん中の部屋に下着姿で横になっているよ。向こう向きだから誰かわかんないけど。動きもないし、寝てるかも」
「了解。寝てそうでも油断は禁物よ。音を立てないように気をつけて。さっきのコンクリートマイクも壁に固定して聞いてみて」
コンクリートマイクをガムテープで固定するとまた、テレビの音が聞こえてきた。
どうやらこの部屋はリビング兼キッチンのような感じに使われているようだ。
右半分が絨毯の上に両方の部屋との間には扉があるが、入り口側の方は扉が開いている。
「入り口側の扉が開いていて、中がちょっとだけ見えるけど、誰かいるみたいで、床に影が動いているように見えるよ」
しばらく部屋の中を観察していた。
携帯の着信音が鳴った。一瞬自分かと思ってひやっとしたが、どうやら入り口側の部屋から聞こえてくる。
≪#9へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
問いかける俺に、首を振る江島さん。
「呼び出し音は鳴るけど、出ないのよ。今、手が離せないのかもしれないわ」
「どうするの?せっかく手がかりが見つかったのに」
という俺に対して、江島さんはにっこりと微笑みながら
「あら、ここに立派なエージェントがいるじゃない」
と、俺の肩を叩いた。
「え、俺?そんな無理だよ」
という俺を無視して、江島さんは
「えっと、港湾なら作業着のほうが目立たないから、紺の作業着一式ね。」
と、倉庫から変装セットを持ってきた。
「帽子も用意したから、太目のフレームのメガネで印象が変わるわ。」
「作業バッグに、道具一式入れといたから。使い方は後で説明するわね。」
「ほら、さっさと着替える。はい、ヘッドセットもして、ウエストポーチに携帯入れて忘れずに」
「え、でも」
とか言いながらも、なんとなく勢いに押されて着替え始める俺。
「じゃ、よろしくね」といって事務所を追い出された俺。
「どうするかなあ。現場なんて怖いしなあ。どっちかというとデスクワークのほうが」
と独り言を言う俺に、ヘッドセットから突込みが入る。
「こらこら、ぶつくさ言ってないでさっさと車でポーアイまで行って。向こうに到着するまでに作戦考えとくから。」
という江島さんの声にしぶしぶ車を走らせる俺であった。
「このブロックのはずだよな。」
倉庫のあるブロックの端で車を止めた。
カーナビの地図で現在位置を確認し、携帯の地図も確認する。
広い大きな倉庫と巨大なクレーン、広く空いた護岸へ通じる空き地が見える。
「そこから先は、車だと見つかるから、歩きでよろしく」と江島さんの声。
「了解」と俺も答える。
どうやらあたりに人気は無さそうだ。
「人影はなさそうだけど」
「じゃさっさと倉庫のほうに向かってね」
慎重に物陰をつたって倉庫あるほうに進んでいく。
「ありゃ、道路から倉庫まで広い駐車スペースで隠れるところがないよ」
「そう、じゃ、あんまりこそこそせずに、堂々と倉庫まで歩いてね」
背中が丸まっていた俺は、背筋を伸ばして、隠れる物陰がないのを気にしながらも怪しまれないように進む。
一番近くの倉庫に近づくと、大きなシャッターの隣に人が出入りするための扉を見つけた。
「北西の角に扉があるよ」
「扉に窓はある?」
「ああ、あるけど」
「じゃ、扉の窓の中から見られないように近くまで進んで、窓の中を鏡を使って確認してね」
江島さんの用意してくれた作業バッグの中に100均で売ってそうな折りたたみの手鏡がある。
「ふーん」
と思いながら、扉の正面を大きく迂回して扉に近づいた。
折りたたみの手鏡を開いて、扉の窓に近づけ、中の様子を探ってみる。
「うん、誰もいないみたいだ」
「そう。念のため、自分お目でも確認してね」
窓の端からそっと確認してみる俺。
「誰もいないみたいだ。何もなくてがらーんとしている」
「じゃ、扉開けてみて。音がしないように気をつけてね」
そっと扉を開けてみる。鍵はかかっていなかった。
「中に入ったよ。倉庫の中はいくつかのブロックに区切られているみたい」
手前のブロックには何もなくフォークリフトで運ぶのに使う木の土台がいくつか積み上がられているだけだ。
「あれ?おかしいな」
「どうしたの?」
「いや、何か人がいる場所があるかと思ったけど、何もないから変だなって」
と何もないことを不振に思いながら、次のブロックに行く。
次のブロックもそこも荷物はほとんどない。
よく見るとこのブロックの奥の壁に何かある。
倉庫の壁にプレハブの小屋のようなものが立っているようだ。
建物の内側に茶色くくすんだ同系色の小屋だからか、すぐには気が付かなかった。
「これか?」
「何か見つけたの?」
と問いかける江島さんに小声で
「プレハブの小屋が倉庫の中にあるのを見つけたんだ」
「あら、目いっぱい怪しいわね。きっとそれよ。まずはプレハブの状況を教えて」
俺は慎重に小屋の方に移動しながら話を続けた。
「倉庫の内側に茶色のプレハブ小屋がたぶん、3棟横に連結された形であるよ。倉庫の向こう側の壁とプレハブの壁はくっついているみたいだ。」
足音が妙に反響して誰かに聞かれないか気になる。
あれ?妙だ
「窓があったみたいだけど、そこが鉄板でふさがれてるみたい。ボルトで固定されてるよ」
「軟禁目的でふさがれたのかもね。プレハブの中から見られないか注意してぐるっと周囲を見てもらえる?入り口とか、窓とか開いている部分を確認してちょうだい」
「了解」
江島さんの指示に従って、プレハブの周囲をぐるっと回ってみる。
どの窓も塞がっているようだ。
イナバ物置 ドマール FX-80HDL-2 土間タイプ 一般型 2連棟 ちょっと違うが、倉庫の中に、 プレハブ住宅があるイメージです。 | 【重機ラジコン】超小型リアルフォークリフト■新品 自動車 倉庫にはフォークリフトが つきものです。 |
プレハブの向こう側の壁は倉庫の壁に接している。
「倉庫の外に出ないと1周できないけどどうする?」
「プレハブの近くに倉庫の扉はあるかしら?」
「ああ、ちょうど倉庫の右側にあるよ」
「じゃ、扉の向こうに気をつけて、倉庫の外側も見てきて頂戴」
「了解」
ここの扉も鍵がかかっていなかった。
扉を開けて倉庫の外側に出る。
「ああ、プレハブと接している部分の倉庫の窓枠がはずれてるよ。そこだけプレハブの外壁が外に出てる。そ換気扇とガスの給湯器がついるよ」
「じゃあ、やっぱり怪しいわね」
「そのすぐ下にはエアコンの室外機も置いてあるよ。ということはお風呂かシャワーもあって、それなりに生活できるってことか」
「そうみたいね」
「どうやら、入り口は、倉庫の内側、左側のプレハブの1カ所のみみたいだよ。」
「じゃ、先ずは中の様子をコンクリートマイクを使って調べてみて。作業バッグにコンクリートマイクとヘッドセットが入っているはずよ」
「了解」
俺は、作業バッグからコンクリートマイクを取り出すと、倉庫の外側からプレハブの壁がむき出しになった部分にコンクリートマイクを当ててみる。そこから伸びたヘッドセットを携帯のヘッドセットとは反対側の耳に架ける。
「あ、テレビテレビの音が聞こえる。他に人の話し声とかは聞こえないよ」
しばらく聞いていたが、変化はなさそうだ。
「変化なさそうだねえ」
と俺が言うと、江島さんは
「じゃ中を覗いてみましょう。換気扇の穴から中が覗けるはずよ」
「え、ちょっと換気扇の穴は高すぎるよ」
「何かそこら辺に足場になりそうなものはないの?」
「フォークリフトの木製パレットがあるから高さだけなら問題なけど、覗くのは難しくない?」
という俺に江島さんは、
「作業バッグにファイバースコープも入れているから大丈夫って。さっさと足場を作ってね。目安は、足場の上に座って、換気扇の穴が目の前に来るぐらいまで積んでね」
「え、結構な高さまでつむんだな」
と俺はしぶしぶ周辺の木製パレットを移動して換気扇の下に積み上げていく。
1.5mほど積み上げて、パレットに座った状態で換気扇に届く高さになった。
「パレットを積み上げたよ。上に座って、換気扇の穴が目の前にある。穴は覗けるけど、この角度だと、天井しか見えないよ。どうしたらいいの?」
という俺に対して、江島さんは
「じゃ、指にハンカチを巻いて、一気に換気扇の羽根を止めて、ハンカチで固定してちょうだい」
「うわー痛そう」
という俺に、江島さんは、
「一気に止めればそれほど痛くないは、覚悟を決めて、一気にね」
まったく、人事だと思って。
俺は、作業かばんの中からハンカチを2枚取り出し、1枚を指に巻いて換気扇の羽根を一気に止める。急に風切音が消えた。
静かになった周囲には、エアコンの運転音とテレビの声が聞こえている。話し声は聞こえない。
気づかれていない様だ。
換気扇の隙間から覗くが人の気配は無い。手早くもう1枚のハンカチで換気扇の羽根を固定した。
「換気扇止めたよ」
「じゃ、作業かばんからファイバースコープを取り出して、カメラとヘッドマウントディスプレイにつないで装着してね」
作業かばんからファイバースコープとカメラを取り出して、接続する。さらにカメラの出力端子に、ヘッドマウントディスプレイに接続する。
このヘッドマウントディスプレイは薄型でかけていても周囲の様子がわかる。
ファイバースコープを慎重に換気扇の隙間に入れて中の様子を伺った。
所長の知り合いの内視鏡を作っているメーカーに特別に作ってもらったファイバーの先の向きが手元で操作できるすぐれものらしい。
内視鏡ほどの解像度はないが、640×400ぐらいの解像度はでる。
「準備ができたら、ファイバースコープの先端を換気扇の穴の隙間に入れて見てちょうだい」
言われたとおりにして見てみると、右奥の部屋の隅にテレビがあり、1人の下着姿の女性が横になっているのが見えた。
「あ、見えたよ、女の人が真ん中の部屋に下着姿で横になっているよ。向こう向きだから誰かわかんないけど。動きもないし、寝てるかも」
「了解。寝てそうでも油断は禁物よ。音を立てないように気をつけて。さっきのコンクリートマイクも壁に固定して聞いてみて」
コンクリートマイクをガムテープで固定するとまた、テレビの音が聞こえてきた。
どうやらこの部屋はリビング兼キッチンのような感じに使われているようだ。
右半分が絨毯の上に両方の部屋との間には扉があるが、入り口側の方は扉が開いている。
「入り口側の扉が開いていて、中がちょっとだけ見えるけど、誰かいるみたいで、床に影が動いているように見えるよ」
しばらく部屋の中を観察していた。
携帯の着信音が鳴った。一瞬自分かと思ってひやっとしたが、どうやら入り口側の部屋から聞こえてくる。
フジミ Dup-35 1/32 パレット プラモデル(U9574) 滝沢のおっちゃんは、こいつ(フォークリフトのパレット)をがんばって積み上げました。 |
≪#9へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年11月13日金曜日
第2話「家出少女救出作戦」#7
この1週間2週間分のメールの受信履歴を見るが見つからない。DMが多すぎる。見逃したかもしれない。
じゃあ、検索してみようと、「出航」で検索するが、該当なし。
「出航」だから、、、船だとして、どこの埠頭から出航するのか知りたいから、「埠頭」で検索してみる。
ビンゴ!!
1週間前に来たメールに含まれていた。タイトルが英文だったのでDMと勘違いして見逃していた。
来週火曜日に第7埠頭に接岸する。
出発は再来週の金曜日の予定だ。
貨物の準備を木曜日中に頼む。
といった簡素な文面だ。
「江島さん、やつら、船を使って何かを運ぶようですね。今週の火曜日に着いた船に何かを載せて、来週の金曜日に出航する予定みたいです。」
「どこの港か判らない?」
「このメールだけでは判んないですね。第7埠頭とだけは判りましたけど。でも、スケジュールにポーアイ倉庫ってあったから、神戸じゃないかな?」
「ありがとう。それだけあれば、判るかもしれない。」
江島さんは港湾事務局に問い合わせて、該当する港は神戸ポートアイランド、船籍は中国、船名「天祥108」で、来週金曜日21:00出航で次の入港先は香港であることが判った。急いで、所長に連絡を入れて調べたことを伝えた。
「江島くん、順平くん、こりゃ大事になってきたな。人身売買かも知れない。警察を動かすにはもう少し証拠が欲しいな。外国船内は捜索が難しいんだ。船に入られる前に何とか押さえたい。」
「江島くん、大沢探偵事務所に連絡して応援を頼んでくれ。第七埠頭の船の監視だ、携帯ヘッドセットを渡して常時通信状態で、船の出入りと状況を漏れなく報告するように依頼してくれ。」
「順平くんにも、もう少し調べてもらってくれ、例の「ポーアイ倉庫」について何か手掛かりがないか?」
「判りました所長。順平君に伝えます。大沢探偵事務所に連絡して、準備が整ったらまた連絡します」
絵島さんは、電話を切り
「順平くん、所長から、もっと例のポーアイ倉庫について調べてって」
「ああ、了解。もう調べ始めてるよ」
もとより「ポーアイ倉庫」は調べるつもりであった。
また、メールを「ポーアイ倉庫」で検索してみる。「ポーアイ倉庫」そのものではヒットはないが「ポートアイランド」「倉庫」で何件かのメールがヒットした。
一番古いメールに詳細情報があった。
ポートアイランドの丸山物産の倉庫の一部を借りることができた。
住所は、港島南町4-○-101だ。空港島に渡る橋の手前を左折し、突きあたりのブロックだ。
元々倉庫の作業員用の宿泊施設で台所、シャワーなどもついているのでそのまま使える。
入口は1箇所だから、窓を潰して空調を入れれば良い。今週中に作業を終えること。
「江島さん、倉庫見つけたよ。港島南町4-○-101南鱈物産の倉庫の一部だって」
「了解。確認して所長に連絡するわ」
「あら、南鱈物産って2年前に倒産してるわね。今は債権者団体の所有物ね。債権者の筆頭は丸肥銀行よ」
「ということは、事実上だれにも使われていない放置状態ってことか。それをやつらが見つけて無断で使ってるって訳か。」
「そうみたいね。あら?所長?携帯に出てくれないわね」
≪#8へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
じゃあ、検索してみようと、「出航」で検索するが、該当なし。
「出航」だから、、、船だとして、どこの埠頭から出航するのか知りたいから、「埠頭」で検索してみる。
ビンゴ!!
1週間前に来たメールに含まれていた。タイトルが英文だったのでDMと勘違いして見逃していた。
来週火曜日に第7埠頭に接岸する。
出発は再来週の金曜日の予定だ。
貨物の準備を木曜日中に頼む。
といった簡素な文面だ。
「江島さん、やつら、船を使って何かを運ぶようですね。今週の火曜日に着いた船に何かを載せて、来週の金曜日に出航する予定みたいです。」
「どこの港か判らない?」
「このメールだけでは判んないですね。第7埠頭とだけは判りましたけど。でも、スケジュールにポーアイ倉庫ってあったから、神戸じゃないかな?」
「ありがとう。それだけあれば、判るかもしれない。」
江島さんは港湾事務局に問い合わせて、該当する港は神戸ポートアイランド、船籍は中国、船名「天祥108」で、来週金曜日21:00出航で次の入港先は香港であることが判った。急いで、所長に連絡を入れて調べたことを伝えた。
香港の夜景は綺麗ですねえ。 | これがうわさの香港製iphone。 DocomoのSIMで動くとの噂が!! |
「江島くん、順平くん、こりゃ大事になってきたな。人身売買かも知れない。警察を動かすにはもう少し証拠が欲しいな。外国船内は捜索が難しいんだ。船に入られる前に何とか押さえたい。」
「江島くん、大沢探偵事務所に連絡して応援を頼んでくれ。第七埠頭の船の監視だ、携帯ヘッドセットを渡して常時通信状態で、船の出入りと状況を漏れなく報告するように依頼してくれ。」
「順平くんにも、もう少し調べてもらってくれ、例の「ポーアイ倉庫」について何か手掛かりがないか?」
「判りました所長。順平君に伝えます。大沢探偵事務所に連絡して、準備が整ったらまた連絡します」
絵島さんは、電話を切り
「順平くん、所長から、もっと例のポーアイ倉庫について調べてって」
「ああ、了解。もう調べ始めてるよ」
もとより「ポーアイ倉庫」は調べるつもりであった。
また、メールを「ポーアイ倉庫」で検索してみる。「ポーアイ倉庫」そのものではヒットはないが「ポートアイランド」「倉庫」で何件かのメールがヒットした。
一番古いメールに詳細情報があった。
ポートアイランドの丸山物産の倉庫の一部を借りることができた。
住所は、港島南町4-○-101だ。空港島に渡る橋の手前を左折し、突きあたりのブロックだ。
元々倉庫の作業員用の宿泊施設で台所、シャワーなどもついているのでそのまま使える。
入口は1箇所だから、窓を潰して空調を入れれば良い。今週中に作業を終えること。
「江島さん、倉庫見つけたよ。港島南町4-○-101南鱈物産の倉庫の一部だって」
「了解。確認して所長に連絡するわ」
「あら、南鱈物産って2年前に倒産してるわね。今は債権者団体の所有物ね。債権者の筆頭は丸肥銀行よ」
「ということは、事実上だれにも使われていない放置状態ってことか。それをやつらが見つけて無断で使ってるって訳か。」
「そうみたいね。あら?所長?携帯に出てくれないわね」
ポーアイには、IKEAがあります。 広いですよ。 | 建築設計資料 77 工場・倉庫 2 [本] 港の倉庫はあまりにも大きい。 |
≪#8へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
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2009年11月10日火曜日
第2話「家出少女救出作戦」#6
10分後、もうすぐ事務所に着く手前で所長から連絡が入った。
「俺だ。」
「さっき高速神戸に着いた。地下をJR神戸駅方面に歩いている。電車の中で、携帯に何か熱心に入力していたから、多分アンケートに入力してたんだろう。あ、今携帯をしまった。送るのならば、もう送ったはずだ」
「了解です。もうすぐ事務所に戻るんで、確認します。江島さんも早く帰って着替えたいそうですよ。」
「そうか。でも江島くんのキャンギャル姿、もう少し見ていたいなあ」
隣で聞こえていたのか絵島さんがおれの携帯をひったくる。
「所長、何いってんのよ。こんなかっこじゃ仕事になんないでしょ。」
「かっこなんかより、業務が優先だ!順平くんのフォローを頼むぞ」
「所長!!着替えさせてよ!もう。」
「おっと、見失うところだ。いったん電話切るよ。」
そうこうしていると、ワゴン車は事務所についた。急いで事務所にはいったら、奴からの登録を確認だ。
昨日作ったWebサイトに先ほど送った返信メールで誘導しているはず。
奴はアンケートページに入力し、そこに会員IDとして「PCのメールアドレス」と「パスワード」を入力しているはずだ。その登録内容は用意した別のWebメールへ送られているはずだ。
祈るような気持ちで、ノートPCを立ち上げ、Webメールにアクセスする。静かな事務所にハードディスクのかすかなアクセス音が響く。
「ねえ、どう?」
「もう少し、今Webメールにログインするとこ。」
もどかしく、パスワードを入力すると、受信箱に新着メールが来ていることを表すアイコンが付いていた。
「あった、あった!!」
「登録のお知らせ」というタイトルのメールをクリックすると登録した内容が表示された。
「こいつ案外、マメだね。」
見ると、登録箇所は、しっかりと入力されている。「その他ご意見・ご要望」の欄もしっかり埋められている。
よほど几帳面なのか、元々懸賞マニアなのか。こういうアンケートを作る企業にとっては優秀と思われる答えが書かれている。
その中で注目するのは、メールアドレスとパスワード。
「よし、有名なWebメールのメールアドレスだ。これなら使えるぞ。パスワードもしっかり入ってる。」
「でも、そのパスワードってそのメールアドレス用じゃないでしょ。」
ま、たしかにそのとおりだ。ただ、たくさんのパスワードを覚えるのは誰でも苦手なはず。
まず、このメールアドレスを見ると有名な検索サイトのWebメールサービスで発行されたものとわかる。つまり、このメールアドレスのパスワードが判れば、その検索サイトが持っているその他のサービスにもログインできる可能性があるということだ。
今、奴をだまして入力させた会員登録情報に奴のメールアドレスと、このサービスで使用するパスワードを入力させた。
世の中の6割から7割の人がパスワードを使い回ししている現状がある。つまり、今入力したパスワードが、このメールアドレスのパスワードと一致している可能性があるということだ。
検索サイトのWebメールサービスのページを開き、IDとして奴のメールアドレスを入れる。そして会員登録で使用したパスワードを入力してやる。案の定ログインできた。
「まあ、普通こんなもんだよな」
驚きもしなかった。なぜなら、実際、順平自身も何かの会員登録でWebメールで使用しているパスワードと同じものを入力した経験がある。
パスワードは個別に管理しないと、やっぱり、それってヤバいなと、改めて思った。
メールが見れるのは判った。
他に何が見れるか確認してみた。
ドキュメントは使用していないみたいだ。
カレンダに登録がある。一昨日、にポーアイ倉庫?来週の土曜日に出航?何だ?
「江島さん。奴のスケジュールが覗けたんだけど、一昨日に「ポーアイ倉庫」と来週の金曜日に「出航」って予定が入っている。」
「何かしら?所長に連絡入れるわ。」
「よろしく。こっちももう少し探してみる。」
今度は、メールを調べてみる。
未読のものはダイレクトメールばかりだから無視するとして、他に何か手掛かりになりそうなメールはないかな?
≪#7へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
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「俺だ。」
「さっき高速神戸に着いた。地下をJR神戸駅方面に歩いている。電車の中で、携帯に何か熱心に入力していたから、多分アンケートに入力してたんだろう。あ、今携帯をしまった。送るのならば、もう送ったはずだ」
「了解です。もうすぐ事務所に戻るんで、確認します。江島さんも早く帰って着替えたいそうですよ。」
「そうか。でも江島くんのキャンギャル姿、もう少し見ていたいなあ」
隣で聞こえていたのか絵島さんがおれの携帯をひったくる。
「所長、何いってんのよ。こんなかっこじゃ仕事になんないでしょ。」
「かっこなんかより、業務が優先だ!順平くんのフォローを頼むぞ」
「所長!!着替えさせてよ!もう。」
「おっと、見失うところだ。いったん電話切るよ。」
そうこうしていると、ワゴン車は事務所についた。急いで事務所にはいったら、奴からの登録を確認だ。
昨日作ったWebサイトに先ほど送った返信メールで誘導しているはず。
奴はアンケートページに入力し、そこに会員IDとして「PCのメールアドレス」と「パスワード」を入力しているはずだ。その登録内容は用意した別のWebメールへ送られているはずだ。
祈るような気持ちで、ノートPCを立ち上げ、Webメールにアクセスする。静かな事務所にハードディスクのかすかなアクセス音が響く。
「ねえ、どう?」
「もう少し、今Webメールにログインするとこ。」
もどかしく、パスワードを入力すると、受信箱に新着メールが来ていることを表すアイコンが付いていた。
「あった、あった!!」
「登録のお知らせ」というタイトルのメールをクリックすると登録した内容が表示された。
「こいつ案外、マメだね。」
見ると、登録箇所は、しっかりと入力されている。「その他ご意見・ご要望」の欄もしっかり埋められている。
よほど几帳面なのか、元々懸賞マニアなのか。こういうアンケートを作る企業にとっては優秀と思われる答えが書かれている。
その中で注目するのは、メールアドレスとパスワード。
「よし、有名なWebメールのメールアドレスだ。これなら使えるぞ。パスワードもしっかり入ってる。」
「でも、そのパスワードってそのメールアドレス用じゃないでしょ。」
ま、たしかにそのとおりだ。ただ、たくさんのパスワードを覚えるのは誰でも苦手なはず。
まず、このメールアドレスを見ると有名な検索サイトのWebメールサービスで発行されたものとわかる。つまり、このメールアドレスのパスワードが判れば、その検索サイトが持っているその他のサービスにもログインできる可能性があるということだ。
今、奴をだまして入力させた会員登録情報に奴のメールアドレスと、このサービスで使用するパスワードを入力させた。
世の中の6割から7割の人がパスワードを使い回ししている現状がある。つまり、今入力したパスワードが、このメールアドレスのパスワードと一致している可能性があるということだ。
検索サイトのWebメールサービスのページを開き、IDとして奴のメールアドレスを入れる。そして会員登録で使用したパスワードを入力してやる。案の定ログインできた。
「まあ、普通こんなもんだよな」
驚きもしなかった。なぜなら、実際、順平自身も何かの会員登録でWebメールで使用しているパスワードと同じものを入力した経験がある。
パスワードは個別に管理しないと、やっぱり、それってヤバいなと、改めて思った。
メールが見れるのは判った。
他に何が見れるか確認してみた。
ドキュメントは使用していないみたいだ。
カレンダに登録がある。一昨日、にポーアイ倉庫?来週の土曜日に出航?何だ?
「江島さん。奴のスケジュールが覗けたんだけど、一昨日に「ポーアイ倉庫」と来週の金曜日に「出航」って予定が入っている。」
「何かしら?所長に連絡入れるわ。」
「よろしく。こっちももう少し探してみる。」
今度は、メールを調べてみる。
未読のものはダイレクトメールばかりだから無視するとして、他に何か手掛かりになりそうなメールはないかな?
■SLEEPWAY■電動RCスケール貨物船キット 1/50 10-ハッチ沿岸貿易船 【ラジコン ボート】 神戸港に入港している貨物船 | ジグソーパズル:950ピース:神戸港の夜景 神戸の夜景はきれですね |
≪#7へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年11月6日金曜日
第2話「家出少女救出作戦」#5
「OK!うまく行ったね」
江島さんは、
「はあ、疲れた。もう今日だけだからねこんなかっこするの。」
と言いながらジャンパーを羽織った。眉間の皺が戻っている。
「えー、可愛いのにもったいない」
「何言ってるのよ。順平くんも所長と一緒ね。まったく男って」
その頃、ティッシュを受け取った高須は、
「なんか、すげえきれいな姉ちゃんだったな。用事がなけりゃ、絶対ナンパするんだけどな」
「そういえば、何の宣伝だ?缶コーヒーと、映画のコラボ企画か?おう、アンケートでもれなく1000円の商品券で、抽選で旅行券か。当ったら換金できそうだな。今月厳しいし、ちょっとまじめにやってみるかな?」
とポケットから携帯を取り出し、バーコードを読み込む。
メールアドレスが登録されていたので、指示通りに空メールを送った。
「俺だ」
所長からの連絡だ。
「今駅のホームだ。幸いまだティッシュは持っている。お、携帯を取り出した。」
「ティッシュの広告に携帯のカメラを向けている。多分アクセス行くぞ。」
「了解。返信の準備します」
俺は急いで、近くのコインパーキングにワゴン車を入れ、助手席の足下に隠した鞄からノートPCを取り出して立ち上げた。データアクセスカードでダイアルアップし、あらかじめ用意したWebメーラーにアクセスすると、案の定、メールが届いていた。
「あ、メール来てます。今返信しますね。」
急いで、あらかじめ用意したメールを返信した。
「今、返信しました。」
と返事すると、
「お、奴が携帯を取り出した。メールを受信したようだ。くそ、電車が来たぞ、しばらくは電波がとぎれる。一旦切るぞ。また電車を降りたら連絡する」
と言って電話が切れた。
高須は、携帯を開けてメールを確認した。
「お、返信が来たぞ、えーと、このリンクかな。あ、そうみたい。ティッシュのチラシと同じ感じのアンケートページが出た。」
「携帯の割に凝った画面だな。映画は金のかけ方が違うねえ。」
「ありゃ、電車がきたか。ま、ちょうどいいや電車で移動してる間に入力するか。」
高須は電車のシートに座ると、黙々と携帯電話のアンケートページに打ち込みを行った。
順平は、携帯を切ると、ワゴン車のエンジンをかけた。
今頃奴は俺が夕べ用意したキャンペーンサイトにアクセスしているはずだ。
今は、電車の中だから、アンケートに入力しているはずだ、実際にアクセスするのは、駅に着いてからだ。まだ時間があるから、コインパーキングを出て事務所に行った方が良さそうだ。
ノートPCをスリープして助手席に投げると、
「一旦事務所に戻るよ」
「ええ、早く着替えたいから、その方が良いわ」
「じゃさっさと帰ります。」
≪#6へ続く≫
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江島さんは、
「はあ、疲れた。もう今日だけだからねこんなかっこするの。」
と言いながらジャンパーを羽織った。眉間の皺が戻っている。
「えー、可愛いのにもったいない」
「何言ってるのよ。順平くんも所長と一緒ね。まったく男って」
その頃、ティッシュを受け取った高須は、
「なんか、すげえきれいな姉ちゃんだったな。用事がなけりゃ、絶対ナンパするんだけどな」
「そういえば、何の宣伝だ?缶コーヒーと、映画のコラボ企画か?おう、アンケートでもれなく1000円の商品券で、抽選で旅行券か。当ったら換金できそうだな。今月厳しいし、ちょっとまじめにやってみるかな?」
とポケットから携帯を取り出し、バーコードを読み込む。
メールアドレスが登録されていたので、指示通りに空メールを送った。
今、一番ほしいギフトカードはiTunesのカードですね。 | お掃除が、ギフトカードであるんですねえ。 これもらったら、結構うれしいかも。 |
「俺だ」
所長からの連絡だ。
「今駅のホームだ。幸いまだティッシュは持っている。お、携帯を取り出した。」
「ティッシュの広告に携帯のカメラを向けている。多分アクセス行くぞ。」
「了解。返信の準備します」
俺は急いで、近くのコインパーキングにワゴン車を入れ、助手席の足下に隠した鞄からノートPCを取り出して立ち上げた。データアクセスカードでダイアルアップし、あらかじめ用意したWebメーラーにアクセスすると、案の定、メールが届いていた。
「あ、メール来てます。今返信しますね。」
急いで、あらかじめ用意したメールを返信した。
「今、返信しました。」
と返事すると、
「お、奴が携帯を取り出した。メールを受信したようだ。くそ、電車が来たぞ、しばらくは電波がとぎれる。一旦切るぞ。また電車を降りたら連絡する」
と言って電話が切れた。
高須は、携帯を開けてメールを確認した。
「お、返信が来たぞ、えーと、このリンクかな。あ、そうみたい。ティッシュのチラシと同じ感じのアンケートページが出た。」
「携帯の割に凝った画面だな。映画は金のかけ方が違うねえ。」
「ありゃ、電車がきたか。ま、ちょうどいいや電車で移動してる間に入力するか。」
高須は電車のシートに座ると、黙々と携帯電話のアンケートページに打ち込みを行った。
順平は、携帯を切ると、ワゴン車のエンジンをかけた。
今頃奴は俺が夕べ用意したキャンペーンサイトにアクセスしているはずだ。
今は、電車の中だから、アンケートに入力しているはずだ、実際にアクセスするのは、駅に着いてからだ。まだ時間があるから、コインパーキングを出て事務所に行った方が良さそうだ。
ノートPCをスリープして助手席に投げると、
「一旦事務所に戻るよ」
「ええ、早く着替えたいから、その方が良いわ」
「じゃさっさと帰ります。」
新開地ダウンタウン物語 Go to the down town [本] 新開地は神戸でもちょっと異色な感じのする街です。 | わいらの新開地 /林喜芳/著 [本] 昔の新開地は知らないけど、なんか懐かしい感じがする。 | 実践コインパーキング事業 事業の魅力、経営の実態と法的諸問題の解決 [本] 最近、空き地がのみなみコインパーキングになってますね。 儲かっているんですかね? |
≪#6へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
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2009年11月3日火曜日
第2話「家出少女救出作戦」#4
しばし車での待機。隣には江島さん。緊張する。
「江島さん、やつの顔は覚えたかい?」
「ええ、ばっちりよ。所長から動画も見せてもらったから間違えないと思うわ。」
「そういえば、昨日はずいぶん機嫌が悪かったね。」
「そういう日もあるわよ」
「今日は普通そうで安心した。」
「そう?そうでもないわよ。こんなかっこしてるから、そっちに気になってるだけよ。さて、念のためメイクを再チェックと。」
隣でコンパクトを開けてチェックする江島さんを珍しそうに見ていた。
「順平くん、奴が動き出した。たぶん5分ぐらいでそっちに行くぞ。」
「了解。準備に入ります。」
「江島さん。聞いての通りだ。行くよ。」
江島さんは軽くうなずくと、ジャンパーと巻きスカートを取って、キャンギャルに戻った。
俺は段ボール箱、江島さんはティッシュの入った手提げ付きのカゴを持って、2番出口に向かった。
出口の脇に段ボール箱を置いて、ティッシュの入ったカゴを持ったキャンギャルがその横に立てば、どこから見てもティッシュ配りに見える。
「やつは、紺のポロシャツに濃い茶色の綿パンだ、靴は茶色の皮のスニーカー、手には茶色の手提げ鞄を持っている」
所長からの続報が入る。
「了解」
江島さんがスタンバイしてると物欲しそうな男たちが近づくが、俺がブロックして彼女には無視してもらう。
ちょっと移動しながらの方が逃げやすいかもと、江島さんに動くように指示すると男たちもつられて動く。それを俺がブロックしていく。ようやくあきらめたらしいが、新たな男が江島さんに群がってくる。またもやブロック。
たしかに、君たちの気持ちは良く判る。キャンギャル姿の江島さんはとっても可愛い。だが、仕事のじゃまだ!退いてくれ!
そうこうしてると所長から連絡。
「江島くん、もうすぐ駅だ、次の角を回ったら駅が見えるはずだ。角をまわるまで後10秒、5、4、3、2、1、回った。」
すると、今まで眉間に皺を寄せていた江島さんが、一転して天使のような笑顔に変わった。
「はい、ただいま、新製品のキャンペーンです。今すぐ、アンケートにお答えください。商品券をはじめとした素敵なプレゼントを実施中です。」
普段より1オクターブ高い、声優似の声に切り替わった。
「こいつ女優だな。」ぼそっと順平はつぶやいた。
俺は江島さんの背後に何気なく立って江島さん越しに奴の姿を探した。
紺のポロシャツが見えた。俺は視線をはずしながら、
「前方20mぐらいに紺のポロシャツが見える」
と江島さんに伝えた。
江島さんは、聞こえていないかのごとく、返事もせずに、ティッシュ配りに集中している。
「あと、10m」
あとは、江島さんに任せるだけだ。
江島さんは一瞬手を止めて、左手に赤いティッシュを持ち替えた。
他からティッシュを要求される手には右手のカゴをぶら下げた方の手を使って、
「はいどうぞ。アンケートお願いします」
器用にオレンジ色のティッシュを配っている。
紺のポロシャツを着た高須が近づいた時、満面の笑みを浮かべて、
「はい、携帯アンケートでもれなくプレゼントですよ。どうぞ」
と、高須は、顔を上げて江島さんの顔を見た。一瞬動きが止まり、江島さんを見つめて、ようやくティッシュを受け取った。
やった!思わず俺はガッツポーズ。
高須は、名残惜しげに、後ろを振り返りながら地下鉄の階段に消えていった。
所長がその後ろをついて行く。
1タイミングおいて、
「江島さん長居は無用だ。急いで撤収。」
引き返してくる可能性を考えるともう少し粘った方が良いが、長居すると最初の頃に配ったティッシュの2次元バーコードにアクセスした人からの苦情が来かねないので、早々に退散だ。
俺は段ボールを抱えると、江島さんの前を駆け出した。
ワゴン車に飛び込むと、エンジンをかけるやいなや急発進した。
≪#5へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
「江島さん、やつの顔は覚えたかい?」
「ええ、ばっちりよ。所長から動画も見せてもらったから間違えないと思うわ。」
「そういえば、昨日はずいぶん機嫌が悪かったね。」
「そういう日もあるわよ」
「今日は普通そうで安心した。」
「そう?そうでもないわよ。こんなかっこしてるから、そっちに気になってるだけよ。さて、念のためメイクを再チェックと。」
隣でコンパクトを開けてチェックする江島さんを珍しそうに見ていた。
「順平くん、奴が動き出した。たぶん5分ぐらいでそっちに行くぞ。」
「了解。準備に入ります。」
「江島さん。聞いての通りだ。行くよ。」
江島さんは軽くうなずくと、ジャンパーと巻きスカートを取って、キャンギャルに戻った。
俺は段ボール箱、江島さんはティッシュの入った手提げ付きのカゴを持って、2番出口に向かった。
出口の脇に段ボール箱を置いて、ティッシュの入ったカゴを持ったキャンギャルがその横に立てば、どこから見てもティッシュ配りに見える。
「やつは、紺のポロシャツに濃い茶色の綿パンだ、靴は茶色の皮のスニーカー、手には茶色の手提げ鞄を持っている」
トタンテレコスキッパーポロシャツ★メンズキレイめお兄系マスト! 奴の服装はこんな感じ | 吉田カバン ポーター/ヒート・トート(ヨコ型) こんな鞄を持っている |
所長からの続報が入る。
「了解」
江島さんがスタンバイしてると物欲しそうな男たちが近づくが、俺がブロックして彼女には無視してもらう。
ちょっと移動しながらの方が逃げやすいかもと、江島さんに動くように指示すると男たちもつられて動く。それを俺がブロックしていく。ようやくあきらめたらしいが、新たな男が江島さんに群がってくる。またもやブロック。
たしかに、君たちの気持ちは良く判る。キャンギャル姿の江島さんはとっても可愛い。だが、仕事のじゃまだ!退いてくれ!
そうこうしてると所長から連絡。
「江島くん、もうすぐ駅だ、次の角を回ったら駅が見えるはずだ。角をまわるまで後10秒、5、4、3、2、1、回った。」
すると、今まで眉間に皺を寄せていた江島さんが、一転して天使のような笑顔に変わった。
「はい、ただいま、新製品のキャンペーンです。今すぐ、アンケートにお答えください。商品券をはじめとした素敵なプレゼントを実施中です。」
普段より1オクターブ高い、声優似の声に切り替わった。
「こいつ女優だな。」ぼそっと順平はつぶやいた。
俺は江島さんの背後に何気なく立って江島さん越しに奴の姿を探した。
紺のポロシャツが見えた。俺は視線をはずしながら、
「前方20mぐらいに紺のポロシャツが見える」
と江島さんに伝えた。
江島さんは、聞こえていないかのごとく、返事もせずに、ティッシュ配りに集中している。
「あと、10m」
あとは、江島さんに任せるだけだ。
江島さんは一瞬手を止めて、左手に赤いティッシュを持ち替えた。
他からティッシュを要求される手には右手のカゴをぶら下げた方の手を使って、
「はいどうぞ。アンケートお願いします」
器用にオレンジ色のティッシュを配っている。
紺のポロシャツを着た高須が近づいた時、満面の笑みを浮かべて、
「はい、携帯アンケートでもれなくプレゼントですよ。どうぞ」
と、高須は、顔を上げて江島さんの顔を見た。一瞬動きが止まり、江島さんを見つめて、ようやくティッシュを受け取った。
やった!思わず俺はガッツポーズ。
高須は、名残惜しげに、後ろを振り返りながら地下鉄の階段に消えていった。
所長がその後ろをついて行く。
1タイミングおいて、
「江島さん長居は無用だ。急いで撤収。」
引き返してくる可能性を考えるともう少し粘った方が良いが、長居すると最初の頃に配ったティッシュの2次元バーコードにアクセスした人からの苦情が来かねないので、早々に退散だ。
俺は段ボールを抱えると、江島さんの前を駆け出した。
ワゴン車に飛び込むと、エンジンをかけるやいなや急発進した。
ステップワゴンって意外に大きい。 路上の長時間張り込みはこいつを使う。 ようやく慣れてきたよ。 |
≪#5へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月30日金曜日
第2話「家出少女救出作戦」#3
「で、どうします?」
「彼女の足取りがつかめない分、その男を拉致してしゃべらせるのもリスクが高すぎるし、時間をかけていたらゆかりさんの命が危ないかもしれない。かといって警察を動かすほどの証拠もないし、手詰まり状態なんだよ。で、順平くんに良いアイディアないか聞こうと思って電話したんだ。」
「判りました。ちょっと考えてみます。」
「とりあえず、その男の情報が欲しいですね。」
「そうなんだ。今のところ判っているのは、名前、高須雄一と住所、後は写真による外観と、店員のうわさ話程度だ。年齢は30ぐらい。その他、なんでも良い。彼女につながるヤツの情報が欲しいんだ。」
「所長はずっと見張ってるんですか?」
「ああ、知り合いの探偵事務所に助っ人を頼んだんで、明日の早朝には見張りを交代するが、それまでは逃げられたら困るからずっと見張っているつもりだ。」
「所長。フィッシング詐欺の手口を利用した、いい方法を思いつきましたよ。とりあえず明日の朝、今から言うものを用意してください。」
電話で必要なものを伝えると、
「そんなもの使ってどうするんだ?」
「まあ、詳しいことは明日現物を見せながら説明しますよ。」
と、順平は、電話を切るとノートPCの電源を入れ、早速作業に取りかかった。
翌朝早朝に、事務所に行くと、所長と江島さんが待っていた。
「さあ、無地の段ボール箱1つとポケットティッシュ50個、手提げの付いたカゴ1つと、キャンペーンガール1名を用意したぞ」
「もう何で私が、キャンペーンガールなんですか?」
「まあまあ、江島くんこれも仕事のうちだよ」
そこには、スリーブレスで、ミニスカの江島さんが立っていた。ぴったりサイズで、ボディラインがはっきりと現れている。胸元も大きく開いていて、胸の谷間がよく見える。
「特別手当たっぷり頂きますからね。もう、こんな格好で、外歩かなくっちゃならないなんて。」
「ばっちりキャンペーンガールですね。完璧です。」
エナメルレースクイーン ブルー A0043BL
おお!!ちょっと見れない絵島さんのキャンギャル姿は、こんな感じ。
「じゃ、ポケットディッシュにこれ入れてください。」
といって、昨晩作った、ポケットティッシュに入れるのチラシを渡した。
「じゃ段取りを説明します。ターゲットとなる男は、新開地駅のすぐ近くに住んでいます。ネットカフェの店員の話では、昼過ぎから、ほぼ毎日神戸駅の周辺で女の子を物色しているらしいので、新開地の駅前、奴のマンションに一番近い2番出口で、待ちかまえます。そのタイミングは、やつを尾行する所長から指示ください。やつが駅の入り口が見える位置にきたタイミングです。江島さんは所長から指示が来たらティッシュを配りはじめてください。そのときにはこのオレンジ色がバックのティッシュを配ってください。そして奴が来たら、こちらの赤いティッシュを渡してください。赤いティッシュは3つしか用意してないので、他の人に取られないように、奴に渡そうとして不自然にならないように気をつけてください。所長はそのまま尾行を続けて、やつがティッシュの広告につられるか確認をお願いします。」
「なるほど、ティッシュの広告で奴を釣り上げるのか。良い作戦だな。」
所長は納得してくれた。納得してないのは江島さん。
「こんなかっこで外歩けないわ。新開地駅までは、上に着てても良いんでしょ?」と早速、ブルゾンと巻きスカートを着けていた。
「じゃ、俺は先に行って助っ人くんと交代してる。二人とも、ヘッドセットを今から着けといてくれよ。」
と言って所長は先に出かけた。
俺と江島さんは、ティッシュに広告を差し入れ、段ボールの中に、100均で買ったような手提げのついたカゴを入れた。
「しかしよく、そんなキャンペーンガールの衣装なんて持ってたね」
「私は、こんなの買いません。所長の趣味よ。こんなのを私に着せて喜んでるのよ。」
「え、そうなの?」
「まったく変態よね。もしかして順平くんもこんなのが良いの?」
「いやいや、いつもの江島さんも可愛いけど、キャンギャルの江島さんも趣があっていいですよ。」
「もう、おだてないでよ。さぁそろそろ行ってスタンバイする時間よ」
「了解です」
俺と江島さんは事務所のワゴン車に荷物を詰め込んで出発した。事務所から30分ほどだろう。
新開地駅の2番出口が見える位置にワゴン車を止め、所長に連絡をとった。
「順平です。今、新開地駅に着きました。そちらの状況はどうですか?」
「滝沢だ。まだやつは部屋にいる。リビングに人影が見えるからそろそろ出かけるかもな?」
「了解です。連絡を待ちます」
≪#4へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
「彼女の足取りがつかめない分、その男を拉致してしゃべらせるのもリスクが高すぎるし、時間をかけていたらゆかりさんの命が危ないかもしれない。かといって警察を動かすほどの証拠もないし、手詰まり状態なんだよ。で、順平くんに良いアイディアないか聞こうと思って電話したんだ。」
「判りました。ちょっと考えてみます。」
「とりあえず、その男の情報が欲しいですね。」
「そうなんだ。今のところ判っているのは、名前、高須雄一と住所、後は写真による外観と、店員のうわさ話程度だ。年齢は30ぐらい。その他、なんでも良い。彼女につながるヤツの情報が欲しいんだ。」
「所長はずっと見張ってるんですか?」
「ああ、知り合いの探偵事務所に助っ人を頼んだんで、明日の早朝には見張りを交代するが、それまでは逃げられたら困るからずっと見張っているつもりだ。」
「所長。フィッシング詐欺の手口を利用した、いい方法を思いつきましたよ。とりあえず明日の朝、今から言うものを用意してください。」
電話で必要なものを伝えると、
「そんなもの使ってどうするんだ?」
「まあ、詳しいことは明日現物を見せながら説明しますよ。」
と、順平は、電話を切るとノートPCの電源を入れ、早速作業に取りかかった。
最近は詐欺事件が多くなってきましたねえ。 皆さんもお気をつけください。 | 【MEN'S BIGI|メンズビギ】BEN THE RODEO TAILOR ゴートスキンブルゾン/93LJM721*LE#MB 所長の今日の装い。 張り込みはこんな服装。 |
翌朝早朝に、事務所に行くと、所長と江島さんが待っていた。
「さあ、無地の段ボール箱1つとポケットティッシュ50個、手提げの付いたカゴ1つと、キャンペーンガール1名を用意したぞ」
「もう何で私が、キャンペーンガールなんですか?」
「まあまあ、江島くんこれも仕事のうちだよ」
そこには、スリーブレスで、ミニスカの江島さんが立っていた。ぴったりサイズで、ボディラインがはっきりと現れている。胸元も大きく開いていて、胸の谷間がよく見える。
「特別手当たっぷり頂きますからね。もう、こんな格好で、外歩かなくっちゃならないなんて。」
「ばっちりキャンペーンガールですね。完璧です。」
エナメルレースクイーン ブルー A0043BL
おお!!ちょっと見れない絵島さんのキャンギャル姿は、こんな感じ。
「じゃ、ポケットディッシュにこれ入れてください。」
といって、昨晩作った、ポケットティッシュに入れるのチラシを渡した。
「じゃ段取りを説明します。ターゲットとなる男は、新開地駅のすぐ近くに住んでいます。ネットカフェの店員の話では、昼過ぎから、ほぼ毎日神戸駅の周辺で女の子を物色しているらしいので、新開地の駅前、奴のマンションに一番近い2番出口で、待ちかまえます。そのタイミングは、やつを尾行する所長から指示ください。やつが駅の入り口が見える位置にきたタイミングです。江島さんは所長から指示が来たらティッシュを配りはじめてください。そのときにはこのオレンジ色がバックのティッシュを配ってください。そして奴が来たら、こちらの赤いティッシュを渡してください。赤いティッシュは3つしか用意してないので、他の人に取られないように、奴に渡そうとして不自然にならないように気をつけてください。所長はそのまま尾行を続けて、やつがティッシュの広告につられるか確認をお願いします。」
「なるほど、ティッシュの広告で奴を釣り上げるのか。良い作戦だな。」
所長は納得してくれた。納得してないのは江島さん。
「こんなかっこで外歩けないわ。新開地駅までは、上に着てても良いんでしょ?」と早速、ブルゾンと巻きスカートを着けていた。
タイダイ&刺繍付 インド綿 ラップスカート 墨黒 アジアン エスニック 巻きスカート コットンスカート ロングスカート ああ!!せっかくのミニスカートが...。 | ドルマンSフード付ワッシャーブルゾン(フード付ドルマンジップブルゾン) 上に着ちゃったよ。 |
「じゃ、俺は先に行って助っ人くんと交代してる。二人とも、ヘッドセットを今から着けといてくれよ。」
と言って所長は先に出かけた。
俺と江島さんは、ティッシュに広告を差し入れ、段ボールの中に、100均で買ったような手提げのついたカゴを入れた。
「しかしよく、そんなキャンペーンガールの衣装なんて持ってたね」
「私は、こんなの買いません。所長の趣味よ。こんなのを私に着せて喜んでるのよ。」
「え、そうなの?」
「まったく変態よね。もしかして順平くんもこんなのが良いの?」
「いやいや、いつもの江島さんも可愛いけど、キャンギャルの江島さんも趣があっていいですよ。」
「もう、おだてないでよ。さぁそろそろ行ってスタンバイする時間よ」
「了解です」
俺と江島さんは事務所のワゴン車に荷物を詰め込んで出発した。事務所から30分ほどだろう。
新開地駅の2番出口が見える位置にワゴン車を止め、所長に連絡をとった。
「順平です。今、新開地駅に着きました。そちらの状況はどうですか?」
「滝沢だ。まだやつは部屋にいる。リビングに人影が見えるからそろそろ出かけるかもな?」
「了解です。連絡を待ちます」
より大きな地図で 順平マップ を表示 新開地駅周辺の地図(地図上の現実の場所、建物等とは一切関係ありません) |
≪#4へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月27日火曜日
第2話「家出少女救出作戦」#2
じゃ早速ということでインターネットカフェのPCを立ち上げる。
まずはブラウザの履歴を見て見るかな?
どっか有名どころでも行っててくれればいいけど。
ん、大手ブログサイトの履歴が残っている。
ネットに繋いで、ブラウザを立ち上げてみると、ブラウザのブックマークにそのブログがある。
あれ?もしかして?と思いならそのブログにアクセスして、ログインIDのところで、ダブルクリックしてみる。案の定、いくつかのIDが一覧表示された。
一番上にyukananというIDがある。多分こいつだ。IDをクリックすると、ID入力エリアに「yukanan」が入り、パスワード入力エリアには「*********」が入った。
「ログイン」ボタンをクリックすると「ユカナンの秘密の小部屋」というタイトルが表示された
「よし、これでゆかりさんのブログに入れました。足取りが追えると思います。」
最後の書き込みは2日前、
『やっほーユカナンだよ。今神戸にきてるの。ハーバーランドの夜景がきれいで、ちょー感激』
『2日前に神戸にいたのは間違い無さそうだ。ハーバーランドだから、神戸駅周辺に居るかもね』
「やったな、流石順平くん。仕事が速いなあ。ありがとう。ここからは俺の領分らしいから、引き取るよ。また困ったら頼むな。で、この依頼が片づくまで、携帯をいつも持ち歩いて連絡とれるようにしておいてくれよ。」
「じゃ早速聞き込みに行ってくる。」
と言って出かけてしまった。
後には、俺と江島さんが残された。
「あの、江島さん。この前はどうも」
急にまじめモードになった江島さんが
「じゃ、コーヒー飲んだらさっさと帰ってね。私、所長のバックアップで忙しいから。」
と言う。
「じゃ、この依頼が片づいたら映画見に行かない?ハリー・ポッターの鑑賞券もらったんだ」
「この依頼は片づいてもいないし、映画も見ません」
「ええ、そんなあ」
「もう、所長に渡すための宿泊先リストをつくったり、事前アポをとったり、ブログを調べたりって忙しいの。じゃましないで」
そこまで言われたら、話が続けられない。
しぶしぶ黙ってコーヒーを飲んで「ごちそうさま」とだけ行って事務所を後にした。
ちぇ、江島さん何であんなに急に不機嫌になっただろ。
悩んだところでしょうがない。
帰って寝ることにした。
夜中に所長から電話がかかってきた。
「よかった。順平くん。明日も休みだろ。朝から事務所に来てくれないか?」
「とりあえず彼女の足取りは追えたんだが、当の本人が見つからなくてね。またちょっとお知恵拝借だ。」
「3日前の夜、例のブログを書いた日は神戸駅のすぐ近くにあるネットカフェに泊まったことは判った。だがその後の足取りがつかめない。店員の話では、どうやら男についていったらしいんだ。いま、その男の部屋をさぐりあてたところなんだが、どうやら他の女を連れ込んでいるみたいだ。この辺じゃ軟派で有名らしい。やつの周辺を洗っているが。どうしても彼女が見つからないんだ。」
「それから、もうひとつ困ったネタがあってね。関西方面でこの1ヶ月で30人近い失踪者が出ている。それも若い女性ばかりだ。関西の探偵仲間では、解決できない依頼として有名になっている。どうやら、それらのほとんどが神戸方面に集中して、そこで足取りが途絶えている。今回の依頼もその可能性が高い。と言うことは、組織犯罪である可能性が高くなってきている。つまり、相当やばいってことだ。」
「え、そうなの?」
と気楽に答える俺。
「ああ、単独で悪さしてるんだったら、俺の腕力で押さえつけて吐かせる事もできるんだが、こういう組織に属しているやつらは敏感でね。仲間と連絡がとれなくなったらとたんに地下に潜るんだ。全く探せなくなってしまう。今、奴らは警戒していない。俺たちが奴らを捜していることを奴らが知らないことが一番の有利なところだ。」
「そんなもんですか。」
俺はこの業界のよくわかっていないので、納得するしかなかった。
「普通なら、奴に気づかれないようにして、時間をかけて調査するんだが、今回はどうも時間が無さそうな気がする。なので、尾行しての情報収集はやるんだが、順平くんにも情報を集める手助けをして欲しいんだ。」
≪#3へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
まずはブラウザの履歴を見て見るかな?
どっか有名どころでも行っててくれればいいけど。
ん、大手ブログサイトの履歴が残っている。
ネットに繋いで、ブラウザを立ち上げてみると、ブラウザのブックマークにそのブログがある。
あれ?もしかして?と思いならそのブログにアクセスして、ログインIDのところで、ダブルクリックしてみる。案の定、いくつかのIDが一覧表示された。
一番上にyukananというIDがある。多分こいつだ。IDをクリックすると、ID入力エリアに「yukanan」が入り、パスワード入力エリアには「*********」が入った。
「ログイン」ボタンをクリックすると「ユカナンの秘密の小部屋」というタイトルが表示された
「よし、これでゆかりさんのブログに入れました。足取りが追えると思います。」
最後の書き込みは2日前、
『やっほーユカナンだよ。今神戸にきてるの。ハーバーランドの夜景がきれいで、ちょー感激』
『2日前に神戸にいたのは間違い無さそうだ。ハーバーランドだから、神戸駅周辺に居るかもね』
「やったな、流石順平くん。仕事が速いなあ。ありがとう。ここからは俺の領分らしいから、引き取るよ。また困ったら頼むな。で、この依頼が片づくまで、携帯をいつも持ち歩いて連絡とれるようにしておいてくれよ。」
「じゃ早速聞き込みに行ってくる。」
と言って出かけてしまった。
後には、俺と江島さんが残された。
「あの、江島さん。この前はどうも」
急にまじめモードになった江島さんが
「じゃ、コーヒー飲んだらさっさと帰ってね。私、所長のバックアップで忙しいから。」
と言う。
「じゃ、この依頼が片づいたら映画見に行かない?ハリー・ポッターの鑑賞券もらったんだ」
「この依頼は片づいてもいないし、映画も見ません」
「ええ、そんなあ」
「もう、所長に渡すための宿泊先リストをつくったり、事前アポをとったり、ブログを調べたりって忙しいの。じゃましないで」
そこまで言われたら、話が続けられない。
しぶしぶ黙ってコーヒーを飲んで「ごちそうさま」とだけ行って事務所を後にした。
神戸らしさを堪能ください。 | もう一度最初から見直しませんか? | すごい。全巻セット。何日で読みきれるかな? |
ちぇ、江島さん何であんなに急に不機嫌になっただろ。
悩んだところでしょうがない。
帰って寝ることにした。
夜中に所長から電話がかかってきた。
「よかった。順平くん。明日も休みだろ。朝から事務所に来てくれないか?」
「とりあえず彼女の足取りは追えたんだが、当の本人が見つからなくてね。またちょっとお知恵拝借だ。」
「3日前の夜、例のブログを書いた日は神戸駅のすぐ近くにあるネットカフェに泊まったことは判った。だがその後の足取りがつかめない。店員の話では、どうやら男についていったらしいんだ。いま、その男の部屋をさぐりあてたところなんだが、どうやら他の女を連れ込んでいるみたいだ。この辺じゃ軟派で有名らしい。やつの周辺を洗っているが。どうしても彼女が見つからないんだ。」
「それから、もうひとつ困ったネタがあってね。関西方面でこの1ヶ月で30人近い失踪者が出ている。それも若い女性ばかりだ。関西の探偵仲間では、解決できない依頼として有名になっている。どうやら、それらのほとんどが神戸方面に集中して、そこで足取りが途絶えている。今回の依頼もその可能性が高い。と言うことは、組織犯罪である可能性が高くなってきている。つまり、相当やばいってことだ。」
「え、そうなの?」
と気楽に答える俺。
「ああ、単独で悪さしてるんだったら、俺の腕力で押さえつけて吐かせる事もできるんだが、こういう組織に属しているやつらは敏感でね。仲間と連絡がとれなくなったらとたんに地下に潜るんだ。全く探せなくなってしまう。今、奴らは警戒していない。俺たちが奴らを捜していることを奴らが知らないことが一番の有利なところだ。」
「そんなもんですか。」
俺はこの業界のよくわかっていないので、納得するしかなかった。
「普通なら、奴に気づかれないようにして、時間をかけて調査するんだが、今回はどうも時間が無さそうな気がする。なので、尾行しての情報収集はやるんだが、順平くんにも情報を集める手助けをして欲しいんだ。」
いやん。科学しないで。 | ありましたね。失踪マニュアル |
≪#3へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月23日金曜日
第2話「家出少女救出作戦」#1
日曜日の昼下がり、今日も暇を持て余している。
あの事件の後、もしかしたら、江島さんと上手くつき合えるんじゃないかと何度か誘ってはみたものの、軽くいなされている。
自分でも、この前の事件での江島さんの行動があったことが実際にあったことなのか自信が無くなるくらいだったが、さすがに怖くて面と向かって聞けないし、唯一の関係者である所長には、彼女との約束もあるし、相談することすらできない。
本当なら、休みの日には彼女を誘ってドライブにでも行きたいところだけれど、彼女はいつも「ごめん、その日は用事があって、また誘ってね。」という。最初は文字通り忙しいのかなとも思ったが、同じテンションで同じ答えが3回繰り返されると、さすがに避けられているなと思う。
しょうがない、今日は趣味のひとつである漫画に走る。古本屋で安彦良和さんの「ナムジ」を見つけたので、全巻を大人買い。「ガンダム」も良いが「ナムジ」も良い。
ファミレスで昼飯ついでに漫画本を持ち込んで、本を読み込む。ここのファミレスは、ドリンクバーにエスプレッソマシンでつくるカプチーノがあるので、好んで通っている。コーヒー好きの俺には本を読みながら何杯もカプチーノが飲めるのは非常に助かる。同僚の多くは、一人でファミレスにはいるのをいやがる人は多いが、俺にとっては、快適な空間だ。店員からすると、1人で昼ご飯とドリンクバーだけで粘られるいやな客だろうけど、それでも俺はお客だと無視する。
漫画もほぼ読み終わった夕方頃、
「よう、順平くん」
滝沢のオッサンだ。
「また今日も暇そうだね」
オッサンに言われたくない。
「実はまた仕事をお願いしたくってね。ここにきた方が早く会えるような気がしてね」
ギクッ。確かに、もう5時間もここで粘っている。
「ああ、そうですかあ」
「で、また後で事務所寄ってくれるかな?」
「どうせ、暇ですから、後でと言わず、今からでも行きますよ。」
と良いながら所長の後をついていった。
「こんにちは、順平くん元気ーっ」
江島さんが妙にハイテンションだ。
「ああ、元気。」
ちょっと気圧されてローテンション。
「江島くん、コーヒー頼むよ。」
「了解です。」
と立ち去った。妙に明るい江島さんの後ろ姿を目で追ってると、
「コホン、仕事の話いいかな?」
「こりゃ失礼。江島さんが気になって。いいですよ。」
「実は、今の依頼人からの仕事なんだが、家出娘を捜している。これが探している女の子の写真とプロフィールだ。」
と、所長はバインダを俺に手渡した。
「南条ゆかり、16歳、高校1年生、身長150cm、中学時代はテニス部だったが、高校に入ってからはもっぱら帰宅部だ。最近の趣味はブログだ」
次のページへめくりながら所長が続ける。
「高知の実家から家出したのが1ヶ月前、最後の連絡が2週間前に実家に届いた手紙だ。これを手がかりに両親が探しに来られ、手がかりが見つからないままうちに依頼があったという訳だ。」
所長は、封筒から葉書を取り出しながら、
「手紙の消印を頼りに調査をして、この3日前までインターネットカフェを渡り歩いているのが判った。ただ、その後の足取りがぱったり消えた。」
その周辺の地図を指し示す。
「そのインターネットカフェのオーナーに頼んで、その娘の使っていたPC借りてきたから、そこから足取りが追えないかなと思ってね。で、順平くんの出番って訳だ。」
「了解です。でも、この前は、本当に運が良かっただけですから、今回は何も分かんないかもしれませんよ」
「了解してるよ。でも、順平くんのことだからきっと最後には何とかしてくれるからなあ。頼りにしてるよ」
全く人の話を聞いていない。
「で、報酬なんだが、すまんが、まだどれくらい依頼者からもらえるか判らないんだ。特に違法な事をする必要もないし、とりあえず2万かな?後は依頼者との交渉次第ってことで勘弁してくれ。」
「報酬は任せますよ、どうせ暇だし」
「さすが、順平くん、ほれぼれするなあ。じゃ2万」
といって所長は俺に現金入りの封筒を渡した。
≪#2へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
あの事件の後、もしかしたら、江島さんと上手くつき合えるんじゃないかと何度か誘ってはみたものの、軽くいなされている。
自分でも、この前の事件での江島さんの行動があったことが実際にあったことなのか自信が無くなるくらいだったが、さすがに怖くて面と向かって聞けないし、唯一の関係者である所長には、彼女との約束もあるし、相談することすらできない。
本当なら、休みの日には彼女を誘ってドライブにでも行きたいところだけれど、彼女はいつも「ごめん、その日は用事があって、また誘ってね。」という。最初は文字通り忙しいのかなとも思ったが、同じテンションで同じ答えが3回繰り返されると、さすがに避けられているなと思う。
しょうがない、今日は趣味のひとつである漫画に走る。古本屋で安彦良和さんの「ナムジ」を見つけたので、全巻を大人買い。「ガンダム」も良いが「ナムジ」も良い。
ファミレスで昼飯ついでに漫画本を持ち込んで、本を読み込む。ここのファミレスは、ドリンクバーにエスプレッソマシンでつくるカプチーノがあるので、好んで通っている。コーヒー好きの俺には本を読みながら何杯もカプチーノが飲めるのは非常に助かる。同僚の多くは、一人でファミレスにはいるのをいやがる人は多いが、俺にとっては、快適な空間だ。店員からすると、1人で昼ご飯とドリンクバーだけで粘られるいやな客だろうけど、それでも俺はお客だと無視する。
安彦さん大好きです。 ガンダムも良いけどナムジもね。 | カプチーノが自宅で作れるのって、憧れです。 ちょっと高いけど、全自動なのでラック楽 |
漫画もほぼ読み終わった夕方頃、
「よう、順平くん」
滝沢のオッサンだ。
「また今日も暇そうだね」
オッサンに言われたくない。
「実はまた仕事をお願いしたくってね。ここにきた方が早く会えるような気がしてね」
ギクッ。確かに、もう5時間もここで粘っている。
「ああ、そうですかあ」
「で、また後で事務所寄ってくれるかな?」
「どうせ、暇ですから、後でと言わず、今からでも行きますよ。」
と良いながら所長の後をついていった。
「こんにちは、順平くん元気ーっ」
江島さんが妙にハイテンションだ。
「ああ、元気。」
ちょっと気圧されてローテンション。
「江島くん、コーヒー頼むよ。」
「了解です。」
と立ち去った。妙に明るい江島さんの後ろ姿を目で追ってると、
「コホン、仕事の話いいかな?」
「こりゃ失礼。江島さんが気になって。いいですよ。」
「実は、今の依頼人からの仕事なんだが、家出娘を捜している。これが探している女の子の写真とプロフィールだ。」
と、所長はバインダを俺に手渡した。
「南条ゆかり、16歳、高校1年生、身長150cm、中学時代はテニス部だったが、高校に入ってからはもっぱら帰宅部だ。最近の趣味はブログだ」
次のページへめくりながら所長が続ける。
「高知の実家から家出したのが1ヶ月前、最後の連絡が2週間前に実家に届いた手紙だ。これを手がかりに両親が探しに来られ、手がかりが見つからないままうちに依頼があったという訳だ。」
所長は、封筒から葉書を取り出しながら、
「手紙の消印を頼りに調査をして、この3日前までインターネットカフェを渡り歩いているのが判った。ただ、その後の足取りがぱったり消えた。」
その周辺の地図を指し示す。
「そのインターネットカフェのオーナーに頼んで、その娘の使っていたPC借りてきたから、そこから足取りが追えないかなと思ってね。で、順平くんの出番って訳だ。」
「了解です。でも、この前は、本当に運が良かっただけですから、今回は何も分かんないかもしれませんよ」
「了解してるよ。でも、順平くんのことだからきっと最後には何とかしてくれるからなあ。頼りにしてるよ」
全く人の話を聞いていない。
「で、報酬なんだが、すまんが、まだどれくらい依頼者からもらえるか判らないんだ。特に違法な事をする必要もないし、とりあえず2万かな?後は依頼者との交渉次第ってことで勘弁してくれ。」
「報酬は任せますよ、どうせ暇だし」
「さすが、順平くん、ほれぼれするなあ。じゃ2万」
といって所長は俺に現金入りの封筒を渡した。
危険ですねえ。 変なネットにつかまらないでね。 | これってドラマやってましたね。 ちょっとだけ見ました。 | こうはなりたくない。 明日はわが身? |
≪#2へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月20日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#12
「あれ?前、事務所にしてきてませんでしたっけ?」
「あれってね、所長からのプレゼントなの。で、プレゼントしてもらったその日になくしちゃってるの。なのに順平くんが知ってるってどういうこと?」
しまった。昨夜のビデオの印象が強かったせいか、てっきり、事務所でもしているのと勘違いしてた。
「あれ?ごめん。会社の女の子がしてるのと見間違えたのかな?」
俺を椅子に座らせると、その膝の上に乗り、顔を近づけながら言った。
「残念ねえ。あれって、オーダーメイドなの。たぶんルビーとエメラルドをデザインしたネックレスは日本にはないわ。その会社の女の子って、どうやって手に入れたのかしら?」
「そのネックレスをしていたのはどこの誰さん?所長に言って調べてきてもらいましょうか?」
うう、まずい。
「順平くん。事務所の機密情報見たわね?」
目が怖い。
「あたしと所長が映っているビデオ見たでしょう?」
さらに顔を近づけて、言う。
「ホテルの隠し撮りで映っている二人を見たわよね?」
やばい。ここまで言うってことは、もう確信してるなあ。何言っても聞かないだろうなあ。
と、ドアをノックして所長が声をかけてきた。
「江島くん、まだかかるかい?用事があるので、もう帰るけど良いかな?」
「すいません。所長。もうちょっとかかりそうなので、後は片づけておきます。お先にどうぞ。」
「そう?じゃ、あまりおそくならないように。後はよろしく。」
と言うと足音が遠ざかっていった。
「さあ、邪魔者はいなくなったからゆっくりと聞けるわね?」
「どうやって、手に入れたの?あの時、データをPCに取ってすぐに所長へPCを渡したはずよね。私と所長の二人が見ていたから間違いないはずだわ。」
しょうがない。観念して話すか。
「実は、USBメモリに自動バックアップを取っていて、帰る時にこっそりと抜いておいたんだ。」
と実物のSDカード入りのUSBカードアダプタを見せた。
「へえ。ちっちゃいわね。気がつかないはずだわ。まったく、いつの間にこんなの仕掛けたのかしら、油断も隙もないわね。」
「とりあえずこれは没収。データを消したら返すわ。他にコピーは?」
「うーん、自宅のPCにバックアップが」
「じゃ、これから一緒に行って、それも消しましょう?その前に、口止めよ。」
といって彼女は俺の唇を自分の唇でふさいだ。
「このことは、二人だけの秘密。所長にも内緒。ペンダント無くしたのも所長知らないんだから言っちゃダメよ。」
「あーあっ、順平くんのこと気に入ってたから、所長とのこと隠しておきたかったんだけどなあ」
「所長とは長いの?」
「え?ああ、所長とはビジネスよ、ビジネス。1年ぐらい前からかな?別に所長のことは好きでもなんでもないけどね。女の子が一人で暮らすのって大変なのよ。」
「ああ、そういうことか。」
「そう。順平くんには嫌われちゃったかな?」
「あ、そんなこと、俺、江島さんのこと大好きだし。」
「ありがとう。とっても嬉しい。」
にこっと微笑んだ顔がちょっと悲しそう。
「まあいいわ。とりあえずあなたの部屋にあるデータを消しに行きましょう?」
と唐突に立ち上がって、USBメモリを握りしめる江島さん。
「ああ、わかった。」
俺も立ち上がって、倉庫の鍵を開けた。
そして、二人は俺の部屋に行ってPCからデータを消した。
「ほんとにこれだけ?他にバックアップは取っていない?」
「他にデータ入れれそうなのないだろ。PCの中も見てくれよ。何ならフォーマットしなおしたってかまわないよ。」
「判ったわよ。信用するわ。」
「じゃ、いい?所長には絶対秘密だからね。ペンダントのことも順平くんがビデオを見たことも。」
「じゃ、も一回口止め」
といってちょっと長めにキスすると
「じゃまた事務所でね。」
と言って、部屋を出て行った。
なんだか嵐が過ぎ去ったみたいな感じだ。
実は、データバックアップはそこだけではない。海外の三か所の無料レンタルサーバに秘密分散法で分割して保存している。
それぞれのデータが漏えいしても何のことかわからないはずだ。
万一、1つのファイルが消失しても残りの2つで復元できるはず。
そしてその保存先を示したURLとID、パスワードは携帯電話のアドレス帳に架空の友人の名前でメモ欄に保存している。
江島さんはともかく、所長への切り札として持っていて損はないだろうから。
第一話 完
≪第2話へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
「あれってね、所長からのプレゼントなの。で、プレゼントしてもらったその日になくしちゃってるの。なのに順平くんが知ってるってどういうこと?」
しまった。昨夜のビデオの印象が強かったせいか、てっきり、事務所でもしているのと勘違いしてた。
「あれ?ごめん。会社の女の子がしてるのと見間違えたのかな?」
俺を椅子に座らせると、その膝の上に乗り、顔を近づけながら言った。
「残念ねえ。あれって、オーダーメイドなの。たぶんルビーとエメラルドをデザインしたネックレスは日本にはないわ。その会社の女の子って、どうやって手に入れたのかしら?」
「そのネックレスをしていたのはどこの誰さん?所長に言って調べてきてもらいましょうか?」
うう、まずい。
「順平くん。事務所の機密情報見たわね?」
目が怖い。
「あたしと所長が映っているビデオ見たでしょう?」
さらに顔を近づけて、言う。
「ホテルの隠し撮りで映っている二人を見たわよね?」
やばい。ここまで言うってことは、もう確信してるなあ。何言っても聞かないだろうなあ。
ホテルで隠し撮りされていないか これで確認!! | タイトルは、こうだが、現実は 不況で厳しいらしいよ。 |
と、ドアをノックして所長が声をかけてきた。
「江島くん、まだかかるかい?用事があるので、もう帰るけど良いかな?」
「すいません。所長。もうちょっとかかりそうなので、後は片づけておきます。お先にどうぞ。」
「そう?じゃ、あまりおそくならないように。後はよろしく。」
と言うと足音が遠ざかっていった。
「さあ、邪魔者はいなくなったからゆっくりと聞けるわね?」
「どうやって、手に入れたの?あの時、データをPCに取ってすぐに所長へPCを渡したはずよね。私と所長の二人が見ていたから間違いないはずだわ。」
しょうがない。観念して話すか。
「実は、USBメモリに自動バックアップを取っていて、帰る時にこっそりと抜いておいたんだ。」
と実物のSDカード入りのUSBカードアダプタを見せた。
「へえ。ちっちゃいわね。気がつかないはずだわ。まったく、いつの間にこんなの仕掛けたのかしら、油断も隙もないわね。」
「とりあえずこれは没収。データを消したら返すわ。他にコピーは?」
「うーん、自宅のPCにバックアップが」
「じゃ、これから一緒に行って、それも消しましょう?その前に、口止めよ。」
といって彼女は俺の唇を自分の唇でふさいだ。
「このことは、二人だけの秘密。所長にも内緒。ペンダント無くしたのも所長知らないんだから言っちゃダメよ。」
「あーあっ、順平くんのこと気に入ってたから、所長とのこと隠しておきたかったんだけどなあ」
「所長とは長いの?」
「え?ああ、所長とはビジネスよ、ビジネス。1年ぐらい前からかな?別に所長のことは好きでもなんでもないけどね。女の子が一人で暮らすのって大変なのよ。」
「ああ、そういうことか。」
「そう。順平くんには嫌われちゃったかな?」
「あ、そんなこと、俺、江島さんのこと大好きだし。」
「ありがとう。とっても嬉しい。」
にこっと微笑んだ顔がちょっと悲しそう。
「まあいいわ。とりあえずあなたの部屋にあるデータを消しに行きましょう?」
と唐突に立ち上がって、USBメモリを握りしめる江島さん。
「ああ、わかった。」
俺も立ち上がって、倉庫の鍵を開けた。
そして、二人は俺の部屋に行ってPCからデータを消した。
「ほんとにこれだけ?他にバックアップは取っていない?」
「他にデータ入れれそうなのないだろ。PCの中も見てくれよ。何ならフォーマットしなおしたってかまわないよ。」
「判ったわよ。信用するわ。」
「じゃ、いい?所長には絶対秘密だからね。ペンダントのことも順平くんがビデオを見たことも。」
「じゃ、も一回口止め」
といってちょっと長めにキスすると
「じゃまた事務所でね。」
と言って、部屋を出て行った。
なんだか嵐が過ぎ去ったみたいな感じだ。
実は、データバックアップはそこだけではない。海外の三か所の無料レンタルサーバに秘密分散法で分割して保存している。
それぞれのデータが漏えいしても何のことかわからないはずだ。
万一、1つのファイルが消失しても残りの2つで復元できるはず。
そしてその保存先を示したURLとID、パスワードは携帯電話のアドレス帳に架空の友人の名前でメモ欄に保存している。
江島さんはともかく、所長への切り札として持っていて損はないだろうから。
第一話 完
データの保存はS3を使いましょう。 要領制限、バックアップの必要もないはず。 | 秘密分散法これに載ってます。 |
≪第2話へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月16日金曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#11
さて、他のファイルは何だろうと思って開けてみたら、どうやら同じホテルの隠し撮りファイルのようだった。こちらはベッドの頭側の起き物か何かに仕込まれているらしく、ベッド全体が画面いっぱいに映っている。
さっきのファイルに人が移り始めたのと同じ時刻まで早送りしてみる。
今度は近すぎてベッドサイドの人が映っていない。かろうじてありらしきものがちらちら見える程度。
あ、腰かけた。上半身がアップになった。あ、やっぱり所長だこっち向いているこのいやらしい顔は所長でしかありえない。
女性は向こう向きだからよくわからない。けど、この後ろ姿、見覚えが。
と思っていたら女性の顔がこっちを向いた。あ、やっぱり、江島さんだ。
なんとなく前のビデオの時からなんとなくそうじゃないかと思いながら、信じたくなかった。
彼女の胸元で、ルビーとエメラルドらしい、ペンダントトップが揺れるのを心ここにあらずといった心境で眺めていた。
そうか、二人はこういう関係だったのか。あー、ショック。
この前、事務所に行ったとき、浮き浮きと出かけていったのも所長との待ち合わせだったんだ。
で、結局やつらに盗撮されて、所長自身も脅されてたんだな。
まあ、妻子ある身じゃ、脅されて当たり前だな。まったく社会悪め。事務の女の子に手を出すなんて。
たぶん30は離れているぞ。どうするかなあ。いまさら言ってもファイルを持ち出したことがばれるだけだし。
不倫も江島さんの選択だし。彼氏でもないのにやめろっていうのもおかしな話だしなあ。
まあ、明日報酬が入れば、借金もきれいに返済できて、新しいPC買うぐらいの費用は残るからよしとするか?
さて、じゃ早速コア2プロセッサのマシンが欲しかったんだよね。
昨日特売のメールを見つけて、マークしてある。早速、オプションを確認して、明日は電気屋に現物を見に行こう。
切り替わりの早い順平であった。
1週間後、所長から残金の支払いの連絡を受けた。その日は、会社が終わってから、アルバイト料の残金を受け取りに事務所に行った。
所長も江島さんも残っていた。
「御苦労さんだったね。順平くん。助かったよ。俺の依頼者にも『これ以上脅迫は来ないだろう』と報告したら喜んでいたよ。」
「そうですか。そりゃよかった。でも、今回は運がよかったですね。あれだけセキュリティが低いのも珍しいですよ。そうでなけりゃ、ずいぶん時間がかかったと思いますよ。」
「いやいや、謙遜しちゃって。」
いやいや、ほんとに謙遜じゃないんだけど。
「さすがにできる人は違うねえ。じゃ、報酬の残金ね。」
といって、所長は俺に現金の入った封筒をを手渡した。
「いまどき現金で申しわけないけど、うちの方針でね。また、そっち方面の仕事があったらよろしく頼むよ。」
「いえいえ。ありがとうございます。これからノートPCを見に行くからちょうどよかったです。」
「順平くん。お疲れ様」
「こんばんわ。絵島さん。相変わらずおきれいで。」
ノートPCが買えることで、ちょっと浮かれているせいか、絵島さんにも気軽に話せる気分。
「あらやだ、ありがとう。」
「今日のネックレスかわいいですね。」
江島さんの胸元の銀のトップがついたネックレスに気がついて言った。
「この前のルビーとエメラルドのネックレスも良かったけど、今日のネックレスもかわいらしい感じで」
バンッ。っと音を立てて絵島さんが立ち上がった。
「ちょっと、 順平くんいい?」
目が怒っている。怖い。なんで?
「ちょと早くおいでって」
俺のシャツの襟をつかむと更衣室兼倉庫に入った。
倉庫の鍵を閉めると一番奥の棚の陰に俺を連れ込んで小さいがドスの効いた低音で聞いた。
「ねえ、どうして順平くんがあのネックレスのこと知ってるの?」
≪#11へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
さっきのファイルに人が移り始めたのと同じ時刻まで早送りしてみる。
今度は近すぎてベッドサイドの人が映っていない。かろうじてありらしきものがちらちら見える程度。
あ、腰かけた。上半身がアップになった。あ、やっぱり所長だこっち向いているこのいやらしい顔は所長でしかありえない。
女性は向こう向きだからよくわからない。けど、この後ろ姿、見覚えが。
と思っていたら女性の顔がこっちを向いた。あ、やっぱり、江島さんだ。
なんとなく前のビデオの時からなんとなくそうじゃないかと思いながら、信じたくなかった。
彼女の胸元で、ルビーとエメラルドらしい、ペンダントトップが揺れるのを心ここにあらずといった心境で眺めていた。
ダイヤ1つを残してダイヤが エメラルドに代わったそんな イメージ。 | このエメラルドがペンダントに つく感じ。 リングはリングでいいね。 |
そうか、二人はこういう関係だったのか。あー、ショック。
この前、事務所に行ったとき、浮き浮きと出かけていったのも所長との待ち合わせだったんだ。
で、結局やつらに盗撮されて、所長自身も脅されてたんだな。
まあ、妻子ある身じゃ、脅されて当たり前だな。まったく社会悪め。事務の女の子に手を出すなんて。
たぶん30は離れているぞ。どうするかなあ。いまさら言ってもファイルを持ち出したことがばれるだけだし。
不倫も江島さんの選択だし。彼氏でもないのにやめろっていうのもおかしな話だしなあ。
まあ、明日報酬が入れば、借金もきれいに返済できて、新しいPC買うぐらいの費用は残るからよしとするか?
さて、じゃ早速コア2プロセッサのマシンが欲しかったんだよね。
昨日特売のメールを見つけて、マークしてある。早速、オプションを確認して、明日は電気屋に現物を見に行こう。
切り替わりの早い順平であった。
Lenovo(レノボ) ThinkPad ノートPCはやっぱIBMですかねえ。 ビジネスで使うのはパナソニが 多いけどね。 |
1週間後、所長から残金の支払いの連絡を受けた。その日は、会社が終わってから、アルバイト料の残金を受け取りに事務所に行った。
所長も江島さんも残っていた。
「御苦労さんだったね。順平くん。助かったよ。俺の依頼者にも『これ以上脅迫は来ないだろう』と報告したら喜んでいたよ。」
「そうですか。そりゃよかった。でも、今回は運がよかったですね。あれだけセキュリティが低いのも珍しいですよ。そうでなけりゃ、ずいぶん時間がかかったと思いますよ。」
「いやいや、謙遜しちゃって。」
いやいや、ほんとに謙遜じゃないんだけど。
「さすがにできる人は違うねえ。じゃ、報酬の残金ね。」
といって、所長は俺に現金の入った封筒をを手渡した。
「いまどき現金で申しわけないけど、うちの方針でね。また、そっち方面の仕事があったらよろしく頼むよ。」
「いえいえ。ありがとうございます。これからノートPCを見に行くからちょうどよかったです。」
「順平くん。お疲れ様」
「こんばんわ。絵島さん。相変わらずおきれいで。」
ノートPCが買えることで、ちょっと浮かれているせいか、絵島さんにも気軽に話せる気分。
「あらやだ、ありがとう。」
「今日のネックレスかわいいですね。」
江島さんの胸元の銀のトップがついたネックレスに気がついて言った。
「この前のルビーとエメラルドのネックレスも良かったけど、今日のネックレスもかわいらしい感じで」
バンッ。っと音を立てて絵島さんが立ち上がった。
「ちょっと、 順平くんいい?」
目が怒っている。怖い。なんで?
「ちょと早くおいでって」
俺のシャツの襟をつかむと更衣室兼倉庫に入った。
倉庫の鍵を閉めると一番奥の棚の陰に俺を連れ込んで小さいがドスの効いた低音で聞いた。
「ねえ、どうして順平くんがあのネックレスのこと知ってるの?」
江島さん個人所有の ペンダントです。 |
≪#11へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月13日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#10
「所長、脅迫ネタのデータ確認しましょう」
というと、所長はあわてて
「いや、それは後でこちらでやるから大丈夫だよ」
「そうは言ってもデータが存在するか確認した方が良くない?」
『脅迫ネタ』フォルダを開けて確認しようとする俺、慌てる所長。
「あ、ここに『滝沢探偵事務所』ってありますね。」
「あー、いいから、ここから先は機密扱いだから勘弁してくれ。えーと、順平くん。よくやってくれた。おかげで、俺の依頼者の脅迫を止めることが出来そうだし、うちの事務所の機密情報も消すことができた。順平くんの仕事は以上でおしまいだ。後始末は私と江島くんでやっておくから、今日はもう帰ってゆっくり休んでくれ。」
「はあ、そうですか。」
「あ、ノートPCはそのままにしておいてくれ。残りの報酬は依頼者から1週間ぐらいかかるかな?また連絡入れるよ。」
「判りました。じゃそろそろ帰ります。」
「すまんなあ。また、そっち系の仕事があれば頼むよ。期待してるから。」
と所長。
「じゃお休み。順平くん。またね。」
と江島さん。フォローもなく、冷たいなあ。
追い出されるようにして、マンションを後にした。
そこまでして隠したい事務所の秘密って何だ?気になるなあ。
とその手には、今日マンションに来る前にセットしたSBマイクロカードのUSBコネクタが握られていた。
所定のフォルダに書き込んだファイルは自動的にSDカードに書き込む様に設定していた。
まさか、こんな事態を想定していた訳でなく、単にバックアップが簡単に出来るからという理由だったけれど。
で、所長が帰るように促してきた時にこっそり抜いて手のひらに隠しておいた。
『ハードウェアの安全な取り外し』を所長と話をしながら何気にしたのだが、たぶん気づかれていないだろう。
家に着いた。眠かったがそれ以上に、『滝沢探偵事務所』の機密情報が気になった。
せっかく手に入ったデータだ、どんな情報かじっくり見てみよう。
その前に、念のためPCにバックアップしてと。
『滝沢探偵事務所』っていう名前のフォルダの中身をみると、zipファイルに圧縮されている。
解凍しようとしたら、パスワードがかかっている。うーんしょうがないなあ。
とりあえず、あれ試してみるか?フリーのzipパスワード解析ツールをダウンロードして試してみた。
このぶんだと、今日は見れないかなあと思っていたら、解析が完了した。
数字4ケタのパスワードだった。見覚えがあるたぶんやつらの電話番号の下4桁に違いない。
まったく、セキュリティのなってないやつらだ。
解凍してみるとmpegファイル?
え、機密情報って、映像だったのか?
どれも同じパスワードで解凍できた。
日付はどれも同じで、容量もほぼ同じ。
ファイル名で区別されている。
1つ目のファイルを開けてみた。
ホテルのベッドみたいだ。誰も映っていない。右下に日付と時間が表示されている。
何も変わり映えしないから、早送りしてみる。時間の分が見る間にかカウントアップされていく。
10分ぐらい過ぎたところで、1組のカップルが入ってきた。
なんだ、盗撮ビデオか。なんでこれが機密情報なんだろう?
ちょっと遠くて、顔が特定しにくい。なんとなく男の方が、所長に似ているような気がする。
女性はちょっと小柄で髪をアップにしている。もしかして盗撮ビデオで所長も強請られているのか?
あ、なんかプレゼントを渡してるな。ネックレスみたいだ。
ネックレスを男が付けてあげた後、その延長で首筋を愛撫しながら、キスした。
後はお定まりの情事だ。
ふーんと思って、早送りで流して見終わった。
≪#11へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
というと、所長はあわてて
「いや、それは後でこちらでやるから大丈夫だよ」
「そうは言ってもデータが存在するか確認した方が良くない?」
『脅迫ネタ』フォルダを開けて確認しようとする俺、慌てる所長。
「あ、ここに『滝沢探偵事務所』ってありますね。」
「あー、いいから、ここから先は機密扱いだから勘弁してくれ。えーと、順平くん。よくやってくれた。おかげで、俺の依頼者の脅迫を止めることが出来そうだし、うちの事務所の機密情報も消すことができた。順平くんの仕事は以上でおしまいだ。後始末は私と江島くんでやっておくから、今日はもう帰ってゆっくり休んでくれ。」
「はあ、そうですか。」
「あ、ノートPCはそのままにしておいてくれ。残りの報酬は依頼者から1週間ぐらいかかるかな?また連絡入れるよ。」
「判りました。じゃそろそろ帰ります。」
「すまんなあ。また、そっち系の仕事があれば頼むよ。期待してるから。」
と所長。
「じゃお休み。順平くん。またね。」
と江島さん。フォローもなく、冷たいなあ。
追い出されるようにして、マンションを後にした。
そこまでして隠したい事務所の秘密って何だ?気になるなあ。
とその手には、今日マンションに来る前にセットしたSBマイクロカードのUSBコネクタが握られていた。
所定のフォルダに書き込んだファイルは自動的にSDカードに書き込む様に設定していた。
まさか、こんな事態を想定していた訳でなく、単にバックアップが簡単に出来るからという理由だったけれど。
で、所長が帰るように促してきた時にこっそり抜いて手のひらに隠しておいた。
『ハードウェアの安全な取り外し』を所長と話をしながら何気にしたのだが、たぶん気づかれていないだろう。
SDカードは、試してみて使えれば 安いメーカーがいいね。 | 出し入れは不便だけど ノートPCに着けっぱなしで 使うにはこれが便利。 |
家に着いた。眠かったがそれ以上に、『滝沢探偵事務所』の機密情報が気になった。
せっかく手に入ったデータだ、どんな情報かじっくり見てみよう。
その前に、念のためPCにバックアップしてと。
『滝沢探偵事務所』っていう名前のフォルダの中身をみると、zipファイルに圧縮されている。
解凍しようとしたら、パスワードがかかっている。うーんしょうがないなあ。
とりあえず、あれ試してみるか?フリーのzipパスワード解析ツールをダウンロードして試してみた。
このぶんだと、今日は見れないかなあと思っていたら、解析が完了した。
数字4ケタのパスワードだった。見覚えがあるたぶんやつらの電話番号の下4桁に違いない。
まったく、セキュリティのなってないやつらだ。
解凍してみるとmpegファイル?
え、機密情報って、映像だったのか?
どれも同じパスワードで解凍できた。
日付はどれも同じで、容量もほぼ同じ。
ファイル名で区別されている。
1つ目のファイルを開けてみた。
ホテルのベッドみたいだ。誰も映っていない。右下に日付と時間が表示されている。
何も変わり映えしないから、早送りしてみる。時間の分が見る間にかカウントアップされていく。
10分ぐらい過ぎたところで、1組のカップルが入ってきた。
なんだ、盗撮ビデオか。なんでこれが機密情報なんだろう?
ちょっと遠くて、顔が特定しにくい。なんとなく男の方が、所長に似ているような気がする。
女性はちょっと小柄で髪をアップにしている。もしかして盗撮ビデオで所長も強請られているのか?
あ、なんかプレゼントを渡してるな。ネックレスみたいだ。
ネックレスを男が付けてあげた後、その延長で首筋を愛撫しながら、キスした。
後はお定まりの情事だ。
ふーんと思って、早送りで流して見終わった。
万一の為にバックアップは 怠りなく。 | VISTAのバックアップは こんな感じで。 |
≪#11へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月9日金曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#9
「ふう、やばかったな。ははは。」
所長と二人で笑い始めた。
「江島くん。もういいよ。帰っておいで」
しばらく待つと、江島さんが帰ってきた。
「所長、とりあえず取れるだけの情報は取ったけど、どうやって依頼者の脅迫を止めさせるの?」
「うん。とりあえず、コピー出来たってことは、消すことも出来るんだろう。脅迫ネタを消してやれば、脅迫できなくなるんだろ?」
「いや、消すだけじゃだめだよ。どこにいくつ脅迫ネタがコピーされてるかわからないんだよ。もしかしたら、ほかのPCにつながっていないハードディスクとか、CD-RとかDVD-Rとかにバックアップが取られていたら消しても復活させることができる。そんな中途半端じゃだめだ。」
ちょっと俺は考え込んだ。
「そうだ、データを消すと同時に、逆に脅したほうが良いよ。」
「この前、所長にもらったやつらのプロフィールと写真、このPCに入れてるから、それと今手に入れた脅迫に使ったネタとメールの文面をつけて、やつらを脅すんだ。たとえば『俺たちのシマを荒らすな』って感じで同業者が縄張りを荒らされて怒って、進入してきたって感じにすれば、大丈夫じゃない?」
「お、いいなあ、そのアイディア。」
所長は乗り気だ。
「で、データを消すと同時に、その脅迫文書をデータの保管場所と、『bobby』のデスクトップに置いてやれば、どうして入られたのか、判んないし顔や身元が割れているってわかるから恐ろしくて手を引くんじゃないかな?データが残っていたとしても使えなくなると思うよ」
と続けると所長が、
「それに加えて、やつらの1人に、ちょっと焼きを入れてやる。で、同じ脅迫文書を渡してやれば、現実ってことがわかるだろう。ここは俺のほうが本職だから任せてくれ。」
マジかい、結構このオッサンヤバイやつだな。
さて、じゃ。脅迫文書をパワポで作成する。
やつらのプロフィールを張り込んで、写真もレイアウトする。で、文面は所長に考えてもらい、江島さんに校正してもらう。文字通り3人の共同作業で、4ページほどの文書が完成した。
「あれ?やつらまた出かけたみたいだな。珍しい。」
たまたま監視カメラのモニタを見た所長が言った。
「ちょうど良いから、今のうちにデータ削除して、脅迫文書置いときますね。」
早速、無線LANに接続する。
同じ手順でサーバに入って、フォルダごと全データを消して、その場所にPDF化した脅迫文書を置いておく。
同じく、『bobby』のPCに入り、データを消して、脅迫文書をデスクトップに置いておく。
ついでに、無線LANルータにもアタックしてみた。案の定adminなんて単純なパスワードで入れた。
アクセスログを消しておく。これで完璧。
「さて、これでお終いかな?」
念のため、メモ帳にこれまで判ったパスワードを記録しておく。
≪#10へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
所長と二人で笑い始めた。
「江島くん。もういいよ。帰っておいで」
しばらく待つと、江島さんが帰ってきた。
「所長、とりあえず取れるだけの情報は取ったけど、どうやって依頼者の脅迫を止めさせるの?」
「うん。とりあえず、コピー出来たってことは、消すことも出来るんだろう。脅迫ネタを消してやれば、脅迫できなくなるんだろ?」
「いや、消すだけじゃだめだよ。どこにいくつ脅迫ネタがコピーされてるかわからないんだよ。もしかしたら、ほかのPCにつながっていないハードディスクとか、CD-RとかDVD-Rとかにバックアップが取られていたら消しても復活させることができる。そんな中途半端じゃだめだ。」
ちょっと俺は考え込んだ。
「そうだ、データを消すと同時に、逆に脅したほうが良いよ。」
「この前、所長にもらったやつらのプロフィールと写真、このPCに入れてるから、それと今手に入れた脅迫に使ったネタとメールの文面をつけて、やつらを脅すんだ。たとえば『俺たちのシマを荒らすな』って感じで同業者が縄張りを荒らされて怒って、進入してきたって感じにすれば、大丈夫じゃない?」
「お、いいなあ、そのアイディア。」
所長は乗り気だ。
「で、データを消すと同時に、その脅迫文書をデータの保管場所と、『bobby』のデスクトップに置いてやれば、どうして入られたのか、判んないし顔や身元が割れているってわかるから恐ろしくて手を引くんじゃないかな?データが残っていたとしても使えなくなると思うよ」
と続けると所長が、
「それに加えて、やつらの1人に、ちょっと焼きを入れてやる。で、同じ脅迫文書を渡してやれば、現実ってことがわかるだろう。ここは俺のほうが本職だから任せてくれ。」
マジかい、結構このオッサンヤバイやつだな。
所長は、肉体派ってちょっち意味が 違う。 | どっちかというと所長は こんなイメージ |
さて、じゃ。脅迫文書をパワポで作成する。
やつらのプロフィールを張り込んで、写真もレイアウトする。で、文面は所長に考えてもらい、江島さんに校正してもらう。文字通り3人の共同作業で、4ページほどの文書が完成した。
「あれ?やつらまた出かけたみたいだな。珍しい。」
たまたま監視カメラのモニタを見た所長が言った。
「ちょうど良いから、今のうちにデータ削除して、脅迫文書置いときますね。」
早速、無線LANに接続する。
同じ手順でサーバに入って、フォルダごと全データを消して、その場所にPDF化した脅迫文書を置いておく。
同じく、『bobby』のPCに入り、データを消して、脅迫文書をデスクトップに置いておく。
ついでに、無線LANルータにもアタックしてみた。案の定adminなんて単純なパスワードで入れた。
アクセスログを消しておく。これで完璧。
「さて、これでお終いかな?」
念のため、メモ帳にこれまで判ったパスワードを記録しておく。
パスワード解析はこいつで。 | パスワードハッキングは キーロガーにも気をつけて |
≪#10へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月6日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#8
「所長。奴らが帰ってくるまで、まだ時間はあるかな?」
「ああ、まあ1時間ぐらいは大丈夫なはずだ。」
「念のため、監視カメラでやつらが帰ってくるのを見張って欲しいんだけど。やつらのデータを丸ごとコピーするのにアクセスランプが目立ってばれるかもしれないから。」
「おう判った。だが、それじゃ時間が稼げないから、江島くん、向かいのファミレスから玄関を監視してやつらが帰ってきたら教えてくれ。ヘッドセットつけて携帯つなぎっぱなしで頼むよ。」
「はい。所長。じゃ、いってきます。」
「じゃさっそくコピー始めます。帰ってきたら途中でも中断しますので、即連絡お願いします」
「おう」
と返事すると所長は監視カメラのモニタに向かった。
俺は、コピーを開始した。ボーと待ってるのも何なので、『bobby』にアタックしてみる。
まずは、bobby/bobbyかな?ビンゴ、Cドライブが見えちゃった。セキュリティぬるすぎ。
こっちもデータ抜かなきゃ。
とりあえず、メールのデータと、デスクトップとマイドキュメントと他はなさそうだな。
あ、Webブラウザのブックマークとアクセス履歴もとっておこう。
よし、『Server』のバックアップ終了。
『bobby』のメールデータ、ブラウザのデータ、デスクトップ、マイドキュメントとコピー開始。
「え、もう帰ってきた?」
所長が突然大きな声を上げた。
「順平くん、奴らが帰ってきたらしい。」
くそ。もう少しなんだけど。メールデータ、ブラウザのデータがコピー完了した。デスクトップのコピーを開始した。
「もうすぐコピー終わりなんで、ぎりぎりまで中断したくないんで、部屋に入るぎりぎりのタイミングを教えてください。」
「そうだな。今玄関ホールに入ったばかりだから、後2、3分は大丈夫だと思う。」
「江島くん。奴らがエレベータに乗ったら、エレベータの階数を読んでくれ。」
しばらくして、所長が言った。
「今、エレベータに入ったそうだ」
「了解です」
俺が答える。
デスクトップのコピーが完了し、マイドキュメントのコピーを開始した。
まずいなあ。途中で止めるか?
と思っていると所長が江島さんが読み上げたエレベータの階数を反芻して読み上げ始めた。
「2階、3階、4階、限界だぞ順平くん」
「了解。コピーを中断します。」
コピーを中断しようとした瞬間に、コピーが終了した。
「はぁ、コピー終了。ぎりぎり間に合いました。念のため無線LANも終了します。」
監視カメラのモニタを覗くと、リビングに入ってきた3人組が見える。
進入した痕跡は消せなかったけど、まあ、あれだけセキュリティのぬるいやつらだからすぐに見つかることはないだろう。万一見つかっても誰が侵入したのかを特定するのは難しいだろう。
≪#9へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
「ああ、まあ1時間ぐらいは大丈夫なはずだ。」
「念のため、監視カメラでやつらが帰ってくるのを見張って欲しいんだけど。やつらのデータを丸ごとコピーするのにアクセスランプが目立ってばれるかもしれないから。」
「おう判った。だが、それじゃ時間が稼げないから、江島くん、向かいのファミレスから玄関を監視してやつらが帰ってきたら教えてくれ。ヘッドセットつけて携帯つなぎっぱなしで頼むよ。」
「はい。所長。じゃ、いってきます。」
「じゃさっそくコピー始めます。帰ってきたら途中でも中断しますので、即連絡お願いします」
「おう」
と返事すると所長は監視カメラのモニタに向かった。
俺は、コピーを開始した。ボーと待ってるのも何なので、『bobby』にアタックしてみる。
まずは、bobby/bobbyかな?ビンゴ、Cドライブが見えちゃった。セキュリティぬるすぎ。
こっちもデータ抜かなきゃ。
とりあえず、メールのデータと、デスクトップとマイドキュメントと他はなさそうだな。
あ、Webブラウザのブックマークとアクセス履歴もとっておこう。
よし、『Server』のバックアップ終了。
『bobby』のメールデータ、ブラウザのデータ、デスクトップ、マイドキュメントとコピー開始。
「え、もう帰ってきた?」
所長が突然大きな声を上げた。
「順平くん、奴らが帰ってきたらしい。」
くそ。もう少しなんだけど。メールデータ、ブラウザのデータがコピー完了した。デスクトップのコピーを開始した。
お手軽な家庭内ファイルサーバはこれ。 REGZA対応で、DTCP/IP対応。 | 市販のNASサーバで容量が足らない人は 自分で大容量のNASサーバを作ろう。 |
「もうすぐコピー終わりなんで、ぎりぎりまで中断したくないんで、部屋に入るぎりぎりのタイミングを教えてください。」
「そうだな。今玄関ホールに入ったばかりだから、後2、3分は大丈夫だと思う。」
「江島くん。奴らがエレベータに乗ったら、エレベータの階数を読んでくれ。」
しばらくして、所長が言った。
「今、エレベータに入ったそうだ」
「了解です」
俺が答える。
デスクトップのコピーが完了し、マイドキュメントのコピーを開始した。
まずいなあ。途中で止めるか?
と思っていると所長が江島さんが読み上げたエレベータの階数を反芻して読み上げ始めた。
「2階、3階、4階、限界だぞ順平くん」
「了解。コピーを中断します。」
コピーを中断しようとした瞬間に、コピーが終了した。
「はぁ、コピー終了。ぎりぎり間に合いました。念のため無線LANも終了します。」
監視カメラのモニタを覗くと、リビングに入ってきた3人組が見える。
進入した痕跡は消せなかったけど、まあ、あれだけセキュリティのぬるいやつらだからすぐに見つかることはないだろう。万一見つかっても誰が侵入したのかを特定するのは難しいだろう。
コンパクトで無線で使いやすい 監視カメラはこれだ! モニタつきで便利。 | 強力な赤外線なら薄手のカーテン ぐらいなら透けて見える。危険。 |
≪#9へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年10月2日金曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#7
鍵は江島さんが持っていて開けてくれた。
「こんばんは。差し入れです」
「やー助かるよ。ちょうどお腹がすいたところだった。」
「どうです?やつら」
「ああ、さっきみんな出て行ったよ。たぶん食事だから2時間は帰ってこないと思う。結局今日のところも収穫はなさそうだなあ」
と、江島さんの渡したコーヒーを開けながら所長が答えた。
「で、順平くんの方はどうだい?」
「いや、まだこれからなんですけどね。ようやくノートPCのセットアップが終わった感じで。」
「そうか。じゃ頼んだぞ。」
さて、江島さんから無糖のカフェオレを受け取りながらノートPCを開いた。
さてと、まずは、無線LANを調べてみるか?
無線局は、4箇所。一番電波が強いのは1つで後は微弱だ。
やつらが無線LANを使用しているのならばたぶんこの一番電波が強いやつだ。
「ん?これセキュリティかかってないぞ」
「どうした、順平くん?」
「いや、無線LANを調べてるんですけど、一番強い電波を出しているところのセキュリティがかかっていないみたいなんです。セキュリティかかってたら、いつまでかかったことやら。」
「で、どうなんだ、やつらのパソコンがみれるのか?」
「まだわかんないですけど、調べてみます。」
とりあえず、接続してみる。
接続に、認証に時間がかかったが、無事接続できたみたいだ。
IPは、192.168.0.12か。無線LANのルータは192.168.0.1か。
やつらがWindowsユーザと期待して、Windowsネットワークを見てみるか。
「お、ビンゴ。Server、akira、nagatsuka、bobbyの4台のPCが見える。」
「ボビーってやつらの1人がそんな名前で呼ばれてたな。こいつだ田中一志24歳ガタイのでかいやつだ」
所長が写真とプロフィールを見せてくれた。
「じゃあ、ここがやつらの環境かも」
「『Server』が共有ファイル置き場っぽいな。他は、クライアント使いで、空のプリンタアイコンしか見えない。あれ?『bobby』のPCはCドライブに共有がかかってるぞ。後で探ってみよう。先に『Server』の方だな」
『Server』にアクセスすると、ID、パスワードを聞いてきた。
だよなあ。パスワードクラックするツール探さないと無理かなあ。
とりあえず、IDはAdministratorだよな。パスワードは何だろう?
Administrator/Administrator?だめだ。
Administrator/Admin?これもだめ。
Administrator/Admin1234?あれ?反応遅い。お、入れた。
「やったー、入れたよ。フォルダが『脅しネタ』、『動画編集用』、『お客リスト』っていうのがある」
所長と江島さんがモニタの前に集まってきた。
≪#8へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
「こんばんは。差し入れです」
「やー助かるよ。ちょうどお腹がすいたところだった。」
「どうです?やつら」
「ああ、さっきみんな出て行ったよ。たぶん食事だから2時間は帰ってこないと思う。結局今日のところも収穫はなさそうだなあ」
と、江島さんの渡したコーヒーを開けながら所長が答えた。
「で、順平くんの方はどうだい?」
「いや、まだこれからなんですけどね。ようやくノートPCのセットアップが終わった感じで。」
「そうか。じゃ頼んだぞ。」
さて、江島さんから無糖のカフェオレを受け取りながらノートPCを開いた。
さてと、まずは、無線LANを調べてみるか?
無線局は、4箇所。一番電波が強いのは1つで後は微弱だ。
やつらが無線LANを使用しているのならばたぶんこの一番電波が強いやつだ。
「ん?これセキュリティかかってないぞ」
テレビをインターネットにつなぐには これがいいねえ。 | これだよ。俺の欲しかったカフェオレ。 ノンシュガーで500ml。 出張の時、新幹線にはこれだね。 |
「どうした、順平くん?」
「いや、無線LANを調べてるんですけど、一番強い電波を出しているところのセキュリティがかかっていないみたいなんです。セキュリティかかってたら、いつまでかかったことやら。」
「で、どうなんだ、やつらのパソコンがみれるのか?」
「まだわかんないですけど、調べてみます。」
とりあえず、接続してみる。
接続に、認証に時間がかかったが、無事接続できたみたいだ。
IPは、192.168.0.12か。無線LANのルータは192.168.0.1か。
やつらがWindowsユーザと期待して、Windowsネットワークを見てみるか。
「お、ビンゴ。Server、akira、nagatsuka、bobbyの4台のPCが見える。」
「ボビーってやつらの1人がそんな名前で呼ばれてたな。こいつだ田中一志24歳ガタイのでかいやつだ」
所長が写真とプロフィールを見せてくれた。
「じゃあ、ここがやつらの環境かも」
「『Server』が共有ファイル置き場っぽいな。他は、クライアント使いで、空のプリンタアイコンしか見えない。あれ?『bobby』のPCはCドライブに共有がかかってるぞ。後で探ってみよう。先に『Server』の方だな」
『Server』にアクセスすると、ID、パスワードを聞いてきた。
だよなあ。パスワードクラックするツール探さないと無理かなあ。
とりあえず、IDはAdministratorだよな。パスワードは何だろう?
Administrator/Administrator?だめだ。
Administrator/Admin?これもだめ。
Administrator/Admin1234?あれ?反応遅い。お、入れた。
「やったー、入れたよ。フォルダが『脅しネタ』、『動画編集用』、『お客リスト』っていうのがある」
所長と江島さんがモニタの前に集まってきた。
「無線LANは危険」って思う人はPCLを使う手も。 意外と速度が出るので、お勧め。 でも、まだ普及しないのか値段は下がらない。 | 無線LAN大好きな人向けの 1冊です。 |
≪#8へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年9月29日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#6
今は、会社よりも探偵のバイトを終わらせることが先決だ。
まだいるかなと心配しつつ、事務所に行くとまだ電気がついていた。
「ちーす、今晩は。遅くまでがんばってるね。」
「あら順平くん。ようやく来たわね。今日もまたくるかもって待ってたの。もうすぐ帰るわ。」
あれ?俺より年下なのに、くんづけか?まあ、可愛いからいいか。
「そういえば、所長は?」
「今日も例のマンションで情報収集。今晩はきっと泊まりね。後で夜食届けに行くから一緒に行く?」
「ああ、いいよ」
「じゃちょっと待ってて着替えてくるから」
と、江島さんは立ち上がると、更衣室兼倉庫に行った。
さて、今のうちに買ってきたSDマイクロカードをセットしとこう。SDカードも安くなったもんだね。
近所の電気屋でもバルク品なら2GBで500円以下で買えちゃうもんねえ。
また、このUSBのカードリーダが小っちゃくて良い。
USBのコネクタ部分にSDマイクロカードを入れる構造になっていて、使いづらいけど、本体の大きさがコネクタ部分の1/3ぐらいしかないから、PCにつけっぱなしでも気にならない。
早速つけて、認識したか確認。オッケー認識した。
ついでだからバックアップソフトも入れとこ。
「お待たせ、順平くん。じゃ行こっか?」
夏らしい、サラッとしたライトブラウンのワンピースにショルダーバッグを抱えて江島さんがやってきた。
「せっかくだから、買い出しも付き合ってくれる?」
「ああ、いいよ。」
「飲み物、重いから助かるう。」
なんだよ、俺は荷物持ちか?
早速PCを片づけて、事務所を出ると、戸締りをした彼女も事務所から出てきた。
鍵をかける後ろ姿に見とれてたら。
「どしたの?早く行こ?」
と軽く微笑むと階段を下りて行った。ドキっとした俺もあわてて後を追う。
A・I・C レーヨン切り替えワンピース
江島さん本日の私服。
近所のスーパーに向かう。最近、彼女はこのスーパーにはまっているらしい。
俺もお金に困った時は、ここの激安弁当で食いつないでいる。
カートを押している彼女の後ろをついて歩く。
「順平くんこんなの食べれる?」
と中華の総菜を幾つか持って聞いてきた。
「好き嫌い無いんで、何でも大丈夫です。」
持っていた総菜を彼女がカゴに入れる。
ああ、なんか新婚さんみたい。勝手に喜んでいる。
食べものとお茶や缶コーヒーなどを適当に買って、
「あそうそう、あれもいるわね」
と言いながら、彼女は、化粧品をカゴ入れ、花火、ビーチサンダル、日焼け止めと入れていく。
「そんなのいいの?」
「いいの、いいの。週末海に行くからそれようなの。必要経費よ。ぱーっといきましょう。順平くんも何か欲しいものない?」
はあ?まじ?探偵業ってそんな感じで良いの?ってかんじ。
大体、スーパーでぱーっとって言ってもしれてるしなあ。
「とりあえず、飲み物があればいいです」
買い物袋を両手に抱えて、江島さんと一緒に所長の待つマンションの監視部屋に向かった。
≪#7へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
まだいるかなと心配しつつ、事務所に行くとまだ電気がついていた。
「ちーす、今晩は。遅くまでがんばってるね。」
「あら順平くん。ようやく来たわね。今日もまたくるかもって待ってたの。もうすぐ帰るわ。」
あれ?俺より年下なのに、くんづけか?まあ、可愛いからいいか。
「そういえば、所長は?」
「今日も例のマンションで情報収集。今晩はきっと泊まりね。後で夜食届けに行くから一緒に行く?」
「ああ、いいよ」
「じゃちょっと待ってて着替えてくるから」
と、江島さんは立ち上がると、更衣室兼倉庫に行った。
さて、今のうちに買ってきたSDマイクロカードをセットしとこう。SDカードも安くなったもんだね。
近所の電気屋でもバルク品なら2GBで500円以下で買えちゃうもんねえ。
また、このUSBのカードリーダが小っちゃくて良い。
USBのコネクタ部分にSDマイクロカードを入れる構造になっていて、使いづらいけど、本体の大きさがコネクタ部分の1/3ぐらいしかないから、PCにつけっぱなしでも気にならない。
早速つけて、認識したか確認。オッケー認識した。
ついでだからバックアップソフトも入れとこ。
SDカードは、試してみて使えれば 安いメーカーがいいね。 | 出し入れは不便だけど ノートPCに着けっぱなしで 使うにはこれが便利。 |
「お待たせ、順平くん。じゃ行こっか?」
夏らしい、サラッとしたライトブラウンのワンピースにショルダーバッグを抱えて江島さんがやってきた。
「せっかくだから、買い出しも付き合ってくれる?」
「ああ、いいよ。」
「飲み物、重いから助かるう。」
なんだよ、俺は荷物持ちか?
早速PCを片づけて、事務所を出ると、戸締りをした彼女も事務所から出てきた。
鍵をかける後ろ姿に見とれてたら。
「どしたの?早く行こ?」
と軽く微笑むと階段を下りて行った。ドキっとした俺もあわてて後を追う。
A・I・C レーヨン切り替えワンピース
江島さん本日の私服。
近所のスーパーに向かう。最近、彼女はこのスーパーにはまっているらしい。
俺もお金に困った時は、ここの激安弁当で食いつないでいる。
カートを押している彼女の後ろをついて歩く。
「順平くんこんなの食べれる?」
と中華の総菜を幾つか持って聞いてきた。
「好き嫌い無いんで、何でも大丈夫です。」
持っていた総菜を彼女がカゴに入れる。
ああ、なんか新婚さんみたい。勝手に喜んでいる。
食べものとお茶や缶コーヒーなどを適当に買って、
「あそうそう、あれもいるわね」
と言いながら、彼女は、化粧品をカゴ入れ、花火、ビーチサンダル、日焼け止めと入れていく。
「そんなのいいの?」
「いいの、いいの。週末海に行くからそれようなの。必要経費よ。ぱーっといきましょう。順平くんも何か欲しいものない?」
はあ?まじ?探偵業ってそんな感じで良いの?ってかんじ。
大体、スーパーでぱーっとって言ってもしれてるしなあ。
「とりあえず、飲み物があればいいです」
買い物袋を両手に抱えて、江島さんと一緒に所長の待つマンションの監視部屋に向かった。
打ち上げ禁止の浜が多くなったご時勢。 これがあれば、家庭で打ち上げ可能。 | ビーチサンダルはやっぱり 「クロックス」。 軽くて水の中でも脱げないし。 |
≪#7へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年9月25日金曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#5
事務所に戻るとまだ電気がついていた。まだ江島さんいるみたいだ。
薄暗い階段を上がって事務所にはいると、パソコンを操作していた江島さんが手を止めた。
「あら、お帰りなさい。もう今日は来ないのかと思っちゃった。所長からノートPCの事聞いてるわ。この鞄に入ってるから持ってって。それから、前金の20万ね。落とさないでね。」
「あ、ありがとう。」
「それから、これが、この事務所の鍵。所長から事務所は自由に使わせろって。」
「鍵なんか俺に渡して。こんなんもらって、いいのか?」
「大丈夫よ。どうせ高価なものって言ってもPCくらいしかないし、データは全部社外だしね。」
「他に必要なものがあったら、ここにメールしといて。」
と、江島さんが名刺を渡してくれた。
「え、もう帰っちゃうの?」
「ごめんね。今から約束があるんだ。急ぎの用事は名刺の裏に携帯の番号あるからそっちによろしく。」
そそくさと帰り支度を終わらせて、
「じゃあね。また明日」
と出ていった。
ふーん。男と待ち合わせっだなこりゃ。まあ若くて可愛いから、男の1人や2人当たり前だな。
バイトの時間を気にしながら、ノートPCを立ち上げてみる。
最新機種だ。お金のあるところは違うねえ。と思いながらインターネットに繋ぐ。
windowsupdateは済んでいるみたいだ。江島さん気が利くねえ。良いお嫁さんになれるよ。
とりあえず、Googleのプラグインを入れてブックマークを使えるようにしておく。
「よし、後はバイトから帰ってからしよう」とノートPCを閉じて事務所を後にした。
翌日、月曜日の朝
「はあ~っ」
あーねむい。昨日の夜はバイトから帰って、ノートPCいじってたから、寝るの遅くなっちゃったよ。
なんとか仕事だけこなさなくちゃ。
プレゼン資料作成で、Googleでの調査が眠い。
「今夜は早く寝よう」
と心に誓いつつも実現した試しはない。
地獄のような8時間が過ぎて、ようやく退社時刻だ。
「お先っす」
と声高らかに帰ろうとする俺に後ろから
「おい、順平。その資料、明日が締め切りだぞ間に合うのか?」
という高山課長。
45歳管理職、妻子持ち、郊外に一戸建ての庭付きのマイホームを持つ。
休日はガーデニングとリビングの巨大液晶テレビで映画鑑賞が趣味。
異常な潔癖性で、自分に優しく他人に厳しいタイプ。
異様に前進した前髪の生え際でヅラ課長と呼ばれているのを本人は知らない。
「あー、明日中には何とかします。明日できることは明日に回せって俺の格言です。それじゃ。」
といって急いで会社を後にした。
≪#6へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
薄暗い階段を上がって事務所にはいると、パソコンを操作していた江島さんが手を止めた。
「あら、お帰りなさい。もう今日は来ないのかと思っちゃった。所長からノートPCの事聞いてるわ。この鞄に入ってるから持ってって。それから、前金の20万ね。落とさないでね。」
「あ、ありがとう。」
「それから、これが、この事務所の鍵。所長から事務所は自由に使わせろって。」
「鍵なんか俺に渡して。こんなんもらって、いいのか?」
「大丈夫よ。どうせ高価なものって言ってもPCくらいしかないし、データは全部社外だしね。」
「他に必要なものがあったら、ここにメールしといて。」
と、江島さんが名刺を渡してくれた。
「え、もう帰っちゃうの?」
「ごめんね。今から約束があるんだ。急ぎの用事は名刺の裏に携帯の番号あるからそっちによろしく。」
そそくさと帰り支度を終わらせて、
「じゃあね。また明日」
と出ていった。
ふーん。男と待ち合わせっだなこりゃ。まあ若くて可愛いから、男の1人や2人当たり前だな。
バイトの時間を気にしながら、ノートPCを立ち上げてみる。
最新機種だ。お金のあるところは違うねえ。と思いながらインターネットに繋ぐ。
windowsupdateは済んでいるみたいだ。江島さん気が利くねえ。良いお嫁さんになれるよ。
とりあえず、Googleのプラグインを入れてブックマークを使えるようにしておく。
「よし、後はバイトから帰ってからしよう」とノートPCを閉じて事務所を後にした。
シフォンブラウス 今夜の江島さんの私服です。 大人っぽくていいですねえ。 | Googleは良く使うので大事なツールですね。 | Lenovo(レノボ) ThinkPad ノートPCはやっぱIBMですかねえ。 ビジネスで使うのはパナソニが多いけどね。 |
翌日、月曜日の朝
「はあ~っ」
あーねむい。昨日の夜はバイトから帰って、ノートPCいじってたから、寝るの遅くなっちゃったよ。
なんとか仕事だけこなさなくちゃ。
プレゼン資料作成で、Googleでの調査が眠い。
「今夜は早く寝よう」
と心に誓いつつも実現した試しはない。
地獄のような8時間が過ぎて、ようやく退社時刻だ。
「お先っす」
と声高らかに帰ろうとする俺に後ろから
「おい、順平。その資料、明日が締め切りだぞ間に合うのか?」
という高山課長。
45歳管理職、妻子持ち、郊外に一戸建ての庭付きのマイホームを持つ。
休日はガーデニングとリビングの巨大液晶テレビで映画鑑賞が趣味。
異常な潔癖性で、自分に優しく他人に厳しいタイプ。
異様に前進した前髪の生え際でヅラ課長と呼ばれているのを本人は知らない。
「あー、明日中には何とかします。明日できることは明日に回せって俺の格言です。それじゃ。」
といって急いで会社を後にした。
マンションの場合、これで庭が なくってもガーデニングぽい ことができる。 | ホームシアターにはサラウンド。 最近はフロントだけでサラウンド 効果が得られるスピーカーが便利だね。 |
≪#6へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年9月22日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#4
「だいたい事情は判ったよ。仕事引き受けるけど、どこまでできるか判わかんないよ。それに会社休めないから、基本的に土日と深夜だけしか動けないけどいい?」
「了解だ。引き受けてくれると思っていた。前金は明日事務所に取りに来てくれ。江島くんに手配しておく。早速だが、携帯とヘッドセットを渡しとくよ。」
「俺、携帯なら持ってるよ」
「まあそういうな。作業中に繋ぎ放しってこともあり得るから持ってろよ。ヘッドセットもブルーテゥースだから目立たなくて良いぞ。携帯は8メガのカメラ付きだからデジカメ代わりに使えるしな。」
「なんか、ヘアピン見たいなデザインだね。あ、意外に軽い。あれこれどうやって着けるの?」
「着けるのにちょっと慣れが必要だけど、慣れれば簡単。サングラスも邪魔にならないし、音質も良いよ」
何とか苦労して着けることに成功した。
「携帯はウエストポーチに入れてる。ついでにサバイバルナイフや小物類も携帯と一緒に入れといたから。ヘッドセットはウエストポーチの手前のポケットだ」
と滝沢のオッサンは自分の鞄からウエストポーチを取り出して俺に渡した。用意の良いこった。
「ウエストポーチには、必要と思うものを入れてる。後で自分なり必要と思えるものを入れて使ってくれ。江島くんに渡せば同じセットの予備を用意してくれるはずだ。」
「了解です。でもこれ、でっかいサバイバルナイフつうか、プライヤですね。」
「あ あそれ、PC組立ぐらいできるよ。プライヤにドライバビットまでセットになったIT御用達セットだ。きみにぴったりだろ。他は、手動発電の携帯充電器と ソーラー発電付きの携帯補助バッテリー、アルミ蒸着フィルム、防寒用だ。あとビニール袋と小型のLEDライトと盗聴器と小型無線カメラだ。受信機は大きく なるから必要な時に言ってくれ。」
滝沢のオッサンってツールマニアだったのか。妙にうれしそうだな。
「携帯には電子マネーと、SUIKAが入っている。経費としてなら自由に使ってかまわない。」
あ、これはありがたい。立て替えてくれとか言われたらつらいし。
「ウエストポーチは、この仕事するときはずっと身につけていてくれ。ヘッドセットは常に耳にな。」
「ふーん。判った。」
といいながら、ウエストポーチを着けて、携帯の電源を入れた。バッテリーはあるみたいだ。
とたん携帯に着信したので、ヘッドセットのボタンを押すと滝沢のオッサンの声がヘッドセットから聞こえる。
「どうだ?」
「ああ、ちゃんと聞こえる」
「他に何か必要なものがあれば言ってくれよ。用意するからな。」
「そうだなあ。とりあえずいろいろ試してみたいからノートPC1台用意できない?それからネットにつながる環境。事務所でも良いよ。」
「判った。事務所にあるはずだから、帰りに事務所によってくれ。言っておくよ。」
滝沢のオッサンは使い古したメモ帳を取り出すとメモし、携帯で連絡を取った。
話していたらもう9時を回っている。
「じゃ俺、今夜バイトあるからもう帰るよ。」
「おう、きーつけて」
と言って見送るオッサン。
≪#5へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
「了解だ。引き受けてくれると思っていた。前金は明日事務所に取りに来てくれ。江島くんに手配しておく。早速だが、携帯とヘッドセットを渡しとくよ。」
「俺、携帯なら持ってるよ」
「まあそういうな。作業中に繋ぎ放しってこともあり得るから持ってろよ。ヘッドセットもブルーテゥースだから目立たなくて良いぞ。携帯は8メガのカメラ付きだからデジカメ代わりに使えるしな。」
「なんか、ヘアピン見たいなデザインだね。あ、意外に軽い。あれこれどうやって着けるの?」
「着けるのにちょっと慣れが必要だけど、慣れれば簡単。サングラスも邪魔にならないし、音質も良いよ」
何とか苦労して着けることに成功した。
軽くて良いんだけど、やっぱ 目立たない黒がいいな。 | 24のジャックバウワーが使うような 小型なのはこれだけど...。 |
「携帯はウエストポーチに入れてる。ついでにサバイバルナイフや小物類も携帯と一緒に入れといたから。ヘッドセットはウエストポーチの手前のポケットだ」
と滝沢のオッサンは自分の鞄からウエストポーチを取り出して俺に渡した。用意の良いこった。
「ウエストポーチには、必要と思うものを入れてる。後で自分なり必要と思えるものを入れて使ってくれ。江島くんに渡せば同じセットの予備を用意してくれるはずだ。」
「了解です。でもこれ、でっかいサバイバルナイフつうか、プライヤですね。」
「あ あそれ、PC組立ぐらいできるよ。プライヤにドライバビットまでセットになったIT御用達セットだ。きみにぴったりだろ。他は、手動発電の携帯充電器と ソーラー発電付きの携帯補助バッテリー、アルミ蒸着フィルム、防寒用だ。あとビニール袋と小型のLEDライトと盗聴器と小型無線カメラだ。受信機は大きく なるから必要な時に言ってくれ。」
滝沢のオッサンってツールマニアだったのか。妙にうれしそうだな。
「携帯には電子マネーと、SUIKAが入っている。経費としてなら自由に使ってかまわない。」
あ、これはありがたい。立て替えてくれとか言われたらつらいし。
「ウエストポーチは、この仕事するときはずっと身につけていてくれ。ヘッドセットは常に耳にな。」
「ふーん。判った。」
といいながら、ウエストポーチを着けて、携帯の電源を入れた。バッテリーはあるみたいだ。
とたん携帯に着信したので、ヘッドセットのボタンを押すと滝沢のオッサンの声がヘッドセットから聞こえる。
「どうだ?」
「ああ、ちゃんと聞こえる」
「他に何か必要なものがあれば言ってくれよ。用意するからな。」
「そうだなあ。とりあえずいろいろ試してみたいからノートPC1台用意できない?それからネットにつながる環境。事務所でも良いよ。」
「判った。事務所にあるはずだから、帰りに事務所によってくれ。言っておくよ。」
滝沢のオッサンは使い古したメモ帳を取り出すとメモし、携帯で連絡を取った。
話していたらもう9時を回っている。
「じゃ俺、今夜バイトあるからもう帰るよ。」
「おう、きーつけて」
と言って見送るオッサン。
プライヤが意外としっかりして 使いやすい。ナイフがあるので 飛行機の手荷物検査に 引っかかるのがうっとうしい。 | 太陽光だけではなく、普通の ACアダプタからの充電もできる ので、こっちの使い方のほうが 多いかも。 |
≪#5へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年9月15日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#3
結局1晩悩んだ。
トータルで50万は確かに魅力的だ。
だが、本当にネットから侵入できるか自信ないし、違法なことをすることにためらいもある。
だが、相手の方が不正を働いているということだから、事情を聞いてみて納得できれば手伝うと言うことでも良いかもしれない。
もっとも成功できる確証があればの話だが。
会社が終わってから、早速滝沢のオッサンに電話をしてみた。
「おう、今、例のマンションの偵察にきてるんだ。話があればこっちに来いよ。」
それほど遠くもないし、行ってみることにする。
より大きな地図で 順平マップ を表示
恐喝グループのマンションの地図(地図上の現実の場所、建物等とは一切関係ありません)
意外にきれいな、マンションだ。6階建てでエントランスも大きい。
エントランスで滝沢のオッサンに電話するとエントランスの入り口が開いた。
「603号室にいるから、チャイムを鳴らさずに勝手に入ってくれ、入ったら鍵締めてな。俺はリビングにいる」
ポストも名前のないところが多い、できたばかりで入居者が少ないのかな?
6階まであがる。結構大きなマンションなのに、ここまで誰にも出会っていない。ちょっと不気味。
603号室を見つけ、チャイムを鳴らさずに扉を開ける。確かに鍵がかかっていない。
素早く入ると鍵をかけた。ついでにチェーンも。
玄関をあがると左右に扉があるがたぶん寝室だろう、まっすぐリビング方向の扉を開ける。
何もないがらんとしたリビングに滝沢のオッサンが寝転がってモニタを見ている。
「よう、着たな。ちょうどやつらも帰ってきたところだ。見るか?夕べベランダ越しにカメラを設置した。音もとれれば良いけど流石にコンクリートマイクじゃこのマンションは無理みたいだ。」
「ところで、この部屋どうしたの?」
素朴な疑問を口にした。
「ああ、たまたま空いててな。知り合いの不動産屋に鍵借りたんだ。汚すなよ」
汚す心配なのはオッサンの方だろ。
「で、どうだ受けてくれる気になったか?」
「そのことだけど、もう少し事情を聞かせてくれない?下の奴ら不正を働いてるって行ったけど、どんな奴らなの?」
「下 の奴らは、どうやら詐欺グループだな。オレオレ詐欺やオークション詐欺のようなことを日常やっている。他にも恐喝のようなこともしていて、うちの依頼者も 恐喝のターゲットにされていて、その時の金銭の受け渡しで、後をつけてこの隠れ家がわかったんだ。5人グループで主に3人が多く出入りしている。主犯格が こいつだ」
といって、5人の写真を順番に見せてくれた。
バイク便から大量の封筒を受け取ったり、路上で学生から紙袋を受け取っている写真、コインロッカーから包みを取り出している写真などだ。
「銀行から金を引き出すなどの危ない仕事は絶対やらない。そういうことは、その日スカウトしたネットカフェ難民や子飼いの学生にやらせているようだ。」
「ふーん。今ある証拠を警察に出して捕まえさせることはできないの?」
「今ある証拠だけじゃ警察は動いてくれまい。なにより、うちの依頼者は警察沙汰になるのをいやがっているから、警察を使わずに、奴らの動きを止めなくちゃならん。」
≪#4へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
トータルで50万は確かに魅力的だ。
だが、本当にネットから侵入できるか自信ないし、違法なことをすることにためらいもある。
だが、相手の方が不正を働いているということだから、事情を聞いてみて納得できれば手伝うと言うことでも良いかもしれない。
もっとも成功できる確証があればの話だが。
会社が終わってから、早速滝沢のオッサンに電話をしてみた。
「おう、今、例のマンションの偵察にきてるんだ。話があればこっちに来いよ。」
それほど遠くもないし、行ってみることにする。
より大きな地図で 順平マップ を表示
恐喝グループのマンションの地図(地図上の現実の場所、建物等とは一切関係ありません)
意外にきれいな、マンションだ。6階建てでエントランスも大きい。
エントランスで滝沢のオッサンに電話するとエントランスの入り口が開いた。
「603号室にいるから、チャイムを鳴らさずに勝手に入ってくれ、入ったら鍵締めてな。俺はリビングにいる」
ポストも名前のないところが多い、できたばかりで入居者が少ないのかな?
6階まであがる。結構大きなマンションなのに、ここまで誰にも出会っていない。ちょっと不気味。
603号室を見つけ、チャイムを鳴らさずに扉を開ける。確かに鍵がかかっていない。
素早く入ると鍵をかけた。ついでにチェーンも。
玄関をあがると左右に扉があるがたぶん寝室だろう、まっすぐリビング方向の扉を開ける。
何もないがらんとしたリビングに滝沢のオッサンが寝転がってモニタを見ている。
「よう、着たな。ちょうどやつらも帰ってきたところだ。見るか?夕べベランダ越しにカメラを設置した。音もとれれば良いけど流石にコンクリートマイクじゃこのマンションは無理みたいだ。」
「ところで、この部屋どうしたの?」
素朴な疑問を口にした。
「ああ、たまたま空いててな。知り合いの不動産屋に鍵借りたんだ。汚すなよ」
汚す心配なのはオッサンの方だろ。
「で、どうだ受けてくれる気になったか?」
「そのことだけど、もう少し事情を聞かせてくれない?下の奴ら不正を働いてるって行ったけど、どんな奴らなの?」
「下 の奴らは、どうやら詐欺グループだな。オレオレ詐欺やオークション詐欺のようなことを日常やっている。他にも恐喝のようなこともしていて、うちの依頼者も 恐喝のターゲットにされていて、その時の金銭の受け渡しで、後をつけてこの隠れ家がわかったんだ。5人グループで主に3人が多く出入りしている。主犯格が こいつだ」
といって、5人の写真を順番に見せてくれた。
バイク便から大量の封筒を受け取ったり、路上で学生から紙袋を受け取っている写真、コインロッカーから包みを取り出している写真などだ。
「銀行から金を引き出すなどの危ない仕事は絶対やらない。そういうことは、その日スカウトしたネットカフェ難民や子飼いの学生にやらせているようだ。」
「ふーん。今ある証拠を警察に出して捕まえさせることはできないの?」
「今ある証拠だけじゃ警察は動いてくれまい。なにより、うちの依頼者は警察沙汰になるのをいやがっているから、警察を使わずに、奴らの動きを止めなくちゃならん。」
会社の業績が悪化したら明日はわが身。 景気よくならんかなあ? | オレオレ詐欺ってすごいバリエーションで、騙されないって思っていてもやれるらしい。 |
≪#4へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年9月8日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#2
そういえば、つい先月も滝沢のオッサンからWebサイトを運営している依頼者の相談にのったことがあった。
依頼者の話では、中国のからと思われるパケットが大量にきて、トップページの表示にすら非常に時間がかかる状態で、本来のお客さんがサイトに入れなくて苦情がきて判ったそうだ。
プロバイダーに相談したら、該当するIPを遮断するようにアドバイスされたそうだ。
一瞬効果は上がったが、また違うIPから攻撃され、またそのIPを遮断するといった繰り返しになり、本業に集中できなくて困っているいうことらしい。
俺は、滝沢のオッサンに、効果的な解決策を教えてやった。
「中国からの攻撃っていうのがはっきりしているのならば、『天安門事件』とか、『ウイグル人弾圧』とか。『チベット暴動』とか、中国政府が中国国民に見せたくないような記事を検索できそうなキーワードをトップページに仕込んでください。それだけで中国からのアクセスが減るはずです。」
「へえ、そんなもんで効果があるの?」
「ええ、良い意味でも悪い意味でも中国は中央統轄の機能が充実してますから。そういうキーワードを入れれば、中国国民に見せたくないサイトということで中国政府がアクセスできないようにしてくれます。」
「あ、じゃあ、不正アクセスだけじゃなくって、中国からのアクセス全部止めちゃうってことかい?」
「ええ、そうです。そのサイトも日本人向けで中国からのアクセスは必要なさそだから、いいんじゃないですか?」
「じゃ、早速依頼者に伝えて試してみるよ。ありがとさん。」
その一言のアドバイスで劇的に効果が現れたらしい。
「すごいなあ、順平くん。たった1行キーワードを入れて半日待ったらピタッと攻撃が止まったってよ。いやー流石ITの人は違うなあ。俺じゃ手も足も出なかったのに一瞬で解決しちゃうんだもんなあ。」
感謝の意味か、滝沢のオッサンは飲み放題、食い放題の夢のパラダイスツアーに無料招待してくれた。
またその手の相談かな?できたら今度は現金が良いなと思いながら滝沢のオッサンの後をついて、狭い事務所への階段を上って行った。
より大きな地図で 順平マップ を表示
滝沢探偵事務所の地図(地図上の現実の場所、建物等とは一切関係ありません)
事務所といっても、滝沢のオッサンと事務の女の子がいるだけなんだけど。確か、江島恵梨子さんっていったっけ?
20歳すぎの元気そうな可愛い女の子だ。紺の簡素な事務服だが、かわいらしく感じる。
「いらっしゃい」
といって、コーヒーを入れてくれた。
「ども」
と良いながら受け取る。この事務所にくるのは3回目ぐらいだが、前は江島さんがここにつとめる前だから、初めて話した。ちょっと緊張する。
「で、頼みたい仕事だけどね。」
唐突に滝沢のオッサンが話を進める。
「詳 しいことは言えないんだけど、うちの仕事で機密情報を使って現金を強請られている事件があってね。依頼者からのたっての希望で警察沙汰にしたくないということでうちに依頼がきたんだ。その仕事は大体調査が 終わって、相手との交渉を残すだけっていう状況なんだけど、その調査をやっている過程で、どうやらうちの事務所の機密情報も盗まれているってことが判った んだ。できればそっちの問題も一気に解決したいんだけど、証拠がこれ以上つかめなくて困ってたんだよ。で、順平くんのこと思い出してさあ。 何とかする方法ないか教えてもらえないかと思って」
「なんとかって言われても俺探偵やったことないし滝沢さんの方がそういうのは得意なんでしょ。」
「普通はそうなんだけど、ITが絡むとちょっとね。順平くんってたしかIT系の会社だったよね」
「そりゃ、IT系の会社ですけど、何の役に立つんですか?」
「まあ、聞いてくれ。このマンションなんだが、503号室がやつらのヤサだ。」
と住所を書いた紙とマンションの写真を渡してくれた。
「彼らのマンンションには、最低でも3台のPCが置かれていて、どうやらそのPCには、その手の情報が入っているようなんだが、仮に部屋に侵入してもすべてのPCを持ち出すのは不可能だし、短時間に持ち出すデータを特定するのは流石に俺でも無理だ。」
「えー俺に泥棒のまねごとをしろってことですか?」
「まあ、平たく言えば、そうだが実際に部屋に侵入しなくてもネットから侵入する方法はないもんだろうか?その辺がITに詳しい順平くんに聞きたかったんだけどね。」
「まあ、確かに方法はない訳じゃないけど、そんなことしたらネットからでも不正アクセス禁止法にひっかかるんですよ。」
「判っている。ただ、不正を働いているのは、やつらなんだ。その証拠をつかむ必要があるんだ。君に違法なことを承知でお願いするんだから、前金で20万、残り成功報酬で30万でどうだろう?もちろん必要経費は別だ。」
「うーん、しばらく考えさせてください。」
さすがに即答できずに、明日までの猶予をもらってその場を立ち去った。
≪#3へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
依頼者の話では、中国のからと思われるパケットが大量にきて、トップページの表示にすら非常に時間がかかる状態で、本来のお客さんがサイトに入れなくて苦情がきて判ったそうだ。
プロバイダーに相談したら、該当するIPを遮断するようにアドバイスされたそうだ。
一瞬効果は上がったが、また違うIPから攻撃され、またそのIPを遮断するといった繰り返しになり、本業に集中できなくて困っているいうことらしい。
俺は、滝沢のオッサンに、効果的な解決策を教えてやった。
「中国からの攻撃っていうのがはっきりしているのならば、『天安門事件』とか、『ウイグル人弾圧』とか。『チベット暴動』とか、中国政府が中国国民に見せたくないような記事を検索できそうなキーワードをトップページに仕込んでください。それだけで中国からのアクセスが減るはずです。」
「へえ、そんなもんで効果があるの?」
「ええ、良い意味でも悪い意味でも中国は中央統轄の機能が充実してますから。そういうキーワードを入れれば、中国国民に見せたくないサイトということで中国政府がアクセスできないようにしてくれます。」
「あ、じゃあ、不正アクセスだけじゃなくって、中国からのアクセス全部止めちゃうってことかい?」
「ええ、そうです。そのサイトも日本人向けで中国からのアクセスは必要なさそだから、いいんじゃないですか?」
「じゃ、早速依頼者に伝えて試してみるよ。ありがとさん。」
その一言のアドバイスで劇的に効果が現れたらしい。
「すごいなあ、順平くん。たった1行キーワードを入れて半日待ったらピタッと攻撃が止まったってよ。いやー流石ITの人は違うなあ。俺じゃ手も足も出なかったのに一瞬で解決しちゃうんだもんなあ。」
感謝の意味か、滝沢のオッサンは飲み放題、食い放題の夢のパラダイスツアーに無料招待してくれた。
またその手の相談かな?できたら今度は現金が良いなと思いながら滝沢のオッサンの後をついて、狭い事務所への階段を上って行った。
そういえば知り合いにウイグルから来た人いたなあ。 心配だね。 | 中国は力があるからなあ。 いったい、どっちに向いて進むんでしょうね? |
より大きな地図で 順平マップ を表示
滝沢探偵事務所の地図(地図上の現実の場所、建物等とは一切関係ありません)
事務所といっても、滝沢のオッサンと事務の女の子がいるだけなんだけど。確か、江島恵梨子さんっていったっけ?
20歳すぎの元気そうな可愛い女の子だ。紺の簡素な事務服だが、かわいらしく感じる。
「いらっしゃい」
といって、コーヒーを入れてくれた。
「ども」
と良いながら受け取る。この事務所にくるのは3回目ぐらいだが、前は江島さんがここにつとめる前だから、初めて話した。ちょっと緊張する。
「で、頼みたい仕事だけどね。」
唐突に滝沢のオッサンが話を進める。
「詳 しいことは言えないんだけど、うちの仕事で機密情報を使って現金を強請られている事件があってね。依頼者からのたっての希望で警察沙汰にしたくないということでうちに依頼がきたんだ。その仕事は大体調査が 終わって、相手との交渉を残すだけっていう状況なんだけど、その調査をやっている過程で、どうやらうちの事務所の機密情報も盗まれているってことが判った んだ。できればそっちの問題も一気に解決したいんだけど、証拠がこれ以上つかめなくて困ってたんだよ。で、順平くんのこと思い出してさあ。 何とかする方法ないか教えてもらえないかと思って」
「なんとかって言われても俺探偵やったことないし滝沢さんの方がそういうのは得意なんでしょ。」
「普通はそうなんだけど、ITが絡むとちょっとね。順平くんってたしかIT系の会社だったよね」
「そりゃ、IT系の会社ですけど、何の役に立つんですか?」
「まあ、聞いてくれ。このマンションなんだが、503号室がやつらのヤサだ。」
と住所を書いた紙とマンションの写真を渡してくれた。
「彼らのマンンションには、最低でも3台のPCが置かれていて、どうやらそのPCには、その手の情報が入っているようなんだが、仮に部屋に侵入してもすべてのPCを持ち出すのは不可能だし、短時間に持ち出すデータを特定するのは流石に俺でも無理だ。」
「えー俺に泥棒のまねごとをしろってことですか?」
「まあ、平たく言えば、そうだが実際に部屋に侵入しなくてもネットから侵入する方法はないもんだろうか?その辺がITに詳しい順平くんに聞きたかったんだけどね。」
「まあ、確かに方法はない訳じゃないけど、そんなことしたらネットからでも不正アクセス禁止法にひっかかるんですよ。」
「判っている。ただ、不正を働いているのは、やつらなんだ。その証拠をつかむ必要があるんだ。君に違法なことを承知でお願いするんだから、前金で20万、残り成功報酬で30万でどうだろう?もちろん必要経費は別だ。」
「うーん、しばらく考えさせてください。」
さすがに即答できずに、明日までの猶予をもらってその場を立ち去った。
江島さんは個人事務所では珍しく制服姿。 これがまたかわいい。 | ああ、不正アクセス禁止法ってとってもザルですね。 まあないよりましかも。 | ああ、萌えちゃいます。 社会科の教科書はこんなのにすればいいのに。 |
≪#3へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
2009年9月1日火曜日
第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#1
「まじ少ねえ」
夏のボーナスの明細をみながら順平はつぶやいた。
俺は神野順平。28歳、IT企業のサラリーマン。2008年末からの景気悪化の影響を受けて、順平の会社ももろにその影響を受けて仕事が減った。
「多少の覚悟はしていたのだが、これほど少ないとは。去年の半額以下だよ。」
神戸で一人暮らしをしている順平だが、去年の暮れから冷蔵庫が故障し、テレビも調子が悪くなって買い換えた。
それもボーナスをあてにして。
もうちょっとランクを落とせば良かったのだが、長年我慢を重ねたブラウン管テレビからの買い換えでつい大画面で録画のできる人気一番モデルにしてしまった。
困った。ボーナスの支払いは、車のローンも入れて40万。で、ボーナスは15万。どう考えても足らない。
消費者ローンで借りて冬のボーナスで支払う手もあるが、相変わらず景気も悪いし、冬のボーナスの金額もあてにならない。
俺の勤める会社は、大阪にある30人程度の派遣がメインのIT企業。
いろいろの会社を渡り歩くが、業種が違うとずいぶんと覚えなければいけないことが増えるので、まあそれなりに経験が積めて良いかなぐらいだった。
でも2008年末からの不況のあおりで、俺も元の開発現場から離れ、なんとか次の職場に入ったが、そこの来期延長も難しそうかな?
ということは、次のボーナスが満額出るのは難しいな。
こりゃ何かバイトでもやらないとまずいかなと思いつつ、近所のコンビニでアルバイトニュースを眺めていた。
「よう、順平くん」
後ろを振り返ると、近所の滝沢探偵事務所の所長、滝沢のオッサン53歳だ。
大学時代に通っていたジャン荘で知り合い、稼がせて頂いた。今でもたまに金曜日のオールナイトマージャンで、貢いで頂いている。
大勝ちしたかと思うと、見え見えの手に振り込んで大負けしたり、ムラが激しい。かき回すだけかき回して、結局はマイナスで終わるタイプ。
「暇そうだね」
滝沢のオッサンには言われたくないよ。いつも暇そうに喫茶店やパチンコ屋に入り浸ってるみたいだし、仕事している姿を見たことない。
「ええ、まあ」
と当たり障りなく返事しておく。
「この前は世話になったね。助かったよ。依頼者も喜んでくれたよ。ところで、またそんな感じのバイトしてみない?」
ええ?意外な一言
「バイトって何ですか?俺、滝沢さんの仕事みたことないし」
「なーに、簡単な仕事だよ。ITがらみでちょっとばかし相談にのって欲しいんだけど。ここじゃ何だし、今から事務所に来ないか?」
≪#2へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
夏のボーナスの明細をみながら順平はつぶやいた。
俺は神野順平。28歳、IT企業のサラリーマン。2008年末からの景気悪化の影響を受けて、順平の会社ももろにその影響を受けて仕事が減った。
「多少の覚悟はしていたのだが、これほど少ないとは。去年の半額以下だよ。」
神戸で一人暮らしをしている順平だが、去年の暮れから冷蔵庫が故障し、テレビも調子が悪くなって買い換えた。
それもボーナスをあてにして。
もうちょっとランクを落とせば良かったのだが、長年我慢を重ねたブラウン管テレビからの買い換えでつい大画面で録画のできる人気一番モデルにしてしまった。
困った。ボーナスの支払いは、車のローンも入れて40万。で、ボーナスは15万。どう考えても足らない。
消費者ローンで借りて冬のボーナスで支払う手もあるが、相変わらず景気も悪いし、冬のボーナスの金額もあてにならない。
俺の念願の42インチ液晶テレビ。 はぁこんなんで映画見るのが夢 だったんだ。 | そりゃ好きで金借りる訳ちゃうんで。 誰だって金に余裕があれば借りないよ。 |
俺の勤める会社は、大阪にある30人程度の派遣がメインのIT企業。
いろいろの会社を渡り歩くが、業種が違うとずいぶんと覚えなければいけないことが増えるので、まあそれなりに経験が積めて良いかなぐらいだった。
でも2008年末からの不況のあおりで、俺も元の開発現場から離れ、なんとか次の職場に入ったが、そこの来期延長も難しそうかな?
ということは、次のボーナスが満額出るのは難しいな。
こりゃ何かバイトでもやらないとまずいかなと思いつつ、近所のコンビニでアルバイトニュースを眺めていた。
「よう、順平くん」
後ろを振り返ると、近所の滝沢探偵事務所の所長、滝沢のオッサン53歳だ。
大学時代に通っていたジャン荘で知り合い、稼がせて頂いた。今でもたまに金曜日のオールナイトマージャンで、貢いで頂いている。
大勝ちしたかと思うと、見え見えの手に振り込んで大負けしたり、ムラが激しい。かき回すだけかき回して、結局はマイナスで終わるタイプ。
「暇そうだね」
滝沢のオッサンには言われたくないよ。いつも暇そうに喫茶店やパチンコ屋に入り浸ってるみたいだし、仕事している姿を見たことない。
「ええ、まあ」
と当たり障りなく返事しておく。
「この前は世話になったね。助かったよ。依頼者も喜んでくれたよ。ところで、またそんな感じのバイトしてみない?」
ええ?意外な一言
「バイトって何ですか?俺、滝沢さんの仕事みたことないし」
「なーに、簡単な仕事だよ。ITがらみでちょっとばかし相談にのって欲しいんだけど。ここじゃ何だし、今から事務所に来ないか?」
滝沢のオッチャンが大好きな海物語。 シリーズ全制覇だそうな。 暇だねえ。 | 滝沢のオッチャンとは無縁の名探偵。 この小説の名探偵もどっちかというと迷う方だと思う。 |
≪#2へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。
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