2009年9月29日火曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#6

今は、会社よりも探偵のバイトを終わらせることが先決だ。
まだいるかなと心配しつつ、事務所に行くとまだ電気がついていた。
「ちーす、今晩は。遅くまでがんばってるね。」
「あら順平くん。ようやく来たわね。今日もまたくるかもって待ってたの。もうすぐ帰るわ。」
あれ?俺より年下なのに、くんづけか?まあ、可愛いからいいか。
「そういえば、所長は?」
「今日も例のマンションで情報収集。今晩はきっと泊まりね。後で夜食届けに行くから一緒に行く?」
「ああ、いいよ」
「じゃちょっと待ってて着替えてくるから」
と、江島さんは立ち上がると、更衣室兼倉庫に行った。
さて、今のうちに買ってきたSDマイクロカードをセットしとこう。SDカードも安くなったもんだね。
近所の電気屋でもバルク品なら2GBで500円以下で買えちゃうもんねえ。
また、このUSBのカードリーダが小っちゃくて良い。
USBのコネクタ部分にSDマイクロカードを入れる構造になっていて、使いづらいけど、本体の大きさがコネクタ部分の1/3ぐらいしかないから、PCにつけっぱなしでも気にならない。
早速つけて、認識したか確認。オッケー認識した。
ついでだからバックアップソフトも入れとこ。


SDカードは、試してみて使えれば  
安いメーカーがいいね。


出し入れは不便だけど
ノートPCに着けっぱなしで
使うにはこれが便利。


「お待たせ、順平くん。じゃ行こっか?」
夏らしい、サラッとしたライトブラウンのワンピースにショルダーバッグを抱えて江島さんがやってきた。
「せっかくだから、買い出しも付き合ってくれる?」
「ああ、いいよ。」
「飲み物、重いから助かるう。」
なんだよ、俺は荷物持ちか?
早速PCを片づけて、事務所を出ると、戸締りをした彼女も事務所から出てきた。
鍵をかける後ろ姿に見とれてたら。
「どしたの?早く行こ?」
と軽く微笑むと階段を下りて行った。ドキっとした俺もあわてて後を追う。

A・I・C レーヨン切り替えワンピース

A・I・C レーヨン切り替えワンピース


江島さん本日の私服。

近所のスーパーに向かう。最近、彼女はこのスーパーにはまっているらしい。
俺もお金に困った時は、ここの激安弁当で食いつないでいる。
カートを押している彼女の後ろをついて歩く。
「順平くんこんなの食べれる?」
と中華の総菜を幾つか持って聞いてきた。
「好き嫌い無いんで、何でも大丈夫です。」
持っていた総菜を彼女がカゴに入れる。
ああ、なんか新婚さんみたい。勝手に喜んでいる。
食べものとお茶や缶コーヒーなどを適当に買って、
「あそうそう、あれもいるわね」
と言いながら、彼女は、化粧品をカゴ入れ、花火、ビーチサンダル、日焼け止めと入れていく。
「そんなのいいの?」
「いいの、いいの。週末海に行くからそれようなの。必要経費よ。ぱーっといきましょう。順平くんも何か欲しいものない?」
はあ?まじ?探偵業ってそんな感じで良いの?ってかんじ。
大体、スーパーでぱーっとって言ってもしれてるしなあ。
「とりあえず、飲み物があればいいです」
買い物袋を両手に抱えて、江島さんと一緒に所長の待つマンションの監視部屋に向かった。



打ち上げ禁止の浜が多くなったご時勢。  
これがあれば、家庭で打ち上げ可能。


ビーチサンダルはやっぱり
「クロックス」。
軽くて水の中でも脱げないし。

≪#7へ続く≫

この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。

2009年9月25日金曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#5

事務所に戻るとまだ電気がついていた。まだ江島さんいるみたいだ。
薄暗い階段を上がって事務所にはいると、パソコンを操作していた江島さんが手を止めた。
「あら、お帰りなさい。もう今日は来ないのかと思っちゃった。所長からノートPCの事聞いてるわ。この鞄に入ってるから持ってって。それから、前金の20万ね。落とさないでね。」
「あ、ありがとう。」
「それから、これが、この事務所の鍵。所長から事務所は自由に使わせろって。」
「鍵なんか俺に渡して。こんなんもらって、いいのか?」
「大丈夫よ。どうせ高価なものって言ってもPCくらいしかないし、データは全部社外だしね。」
「他に必要なものがあったら、ここにメールしといて。」
と、江島さんが名刺を渡してくれた。
「え、もう帰っちゃうの?」
「ごめんね。今から約束があるんだ。急ぎの用事は名刺の裏に携帯の番号あるからそっちによろしく。」
そそくさと帰り支度を終わらせて、
「じゃあね。また明日」
と出ていった。
ふーん。男と待ち合わせっだなこりゃ。まあ若くて可愛いから、男の1人や2人当たり前だな。
バイトの時間を気にしながら、ノートPCを立ち上げてみる。
最新機種だ。お金のあるところは違うねえ。と思いながらインターネットに繋ぐ。
windowsupdateは済んでいるみたいだ。江島さん気が利くねえ。良いお嫁さんになれるよ。
とりあえず、Googleのプラグインを入れてブックマークを使えるようにしておく。
「よし、後はバイトから帰ってからしよう」とノートPCを閉じて事務所を後にした。


シフォンブラウス

シフォンブラウス

今夜の江島さんの私服です。
大人っぽくていいですねえ。



Googleは良く使うので大事なツールですね。


Lenovo(レノボ) ThinkPad
Lenovo(レノボ) ThinkPad

ノートPCはやっぱIBMですかねえ。
ビジネスで使うのはパナソニが多いけどね。

翌日、月曜日の朝
「はあ~っ」
あーねむい。昨日の夜はバイトから帰って、ノートPCいじってたから、寝るの遅くなっちゃったよ。
なんとか仕事だけこなさなくちゃ。
プレゼン資料作成で、Googleでの調査が眠い。
「今夜は早く寝よう」
と心に誓いつつも実現した試しはない。
地獄のような8時間が過ぎて、ようやく退社時刻だ。
「お先っす」
と声高らかに帰ろうとする俺に後ろから
「おい、順平。その資料、明日が締め切りだぞ間に合うのか?」
という高山課長。
45歳管理職、妻子持ち、郊外に一戸建ての庭付きのマイホームを持つ。
休日はガーデニングとリビングの巨大液晶テレビで映画鑑賞が趣味。
異常な潔癖性で、自分に優しく他人に厳しいタイプ。
異様に前進した前髪の生え際でヅラ課長と呼ばれているのを本人は知らない。
「あー、明日中には何とかします。明日できることは明日に回せって俺の格言です。それじゃ。」
といって急いで会社を後にした。


マンションの場合、これで庭が  
なくってもガーデニングぽい
ことができる。


ホームシアターにはサラウンド。
最近はフロントだけでサラウンド
効果が得られるスピーカーが便利だね。

≪#6へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
バナー広告と小説の出てくる物品が似ている場合もありますが、それが同一のものであることを保障するものではありません。

2009年9月22日火曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#4

「だいたい事情は判ったよ。仕事引き受けるけど、どこまでできるか判わかんないよ。それに会社休めないから、基本的に土日と深夜だけしか動けないけどいい?」
「了解だ。引き受けてくれると思っていた。前金は明日事務所に取りに来てくれ。江島くんに手配しておく。早速だが、携帯とヘッドセットを渡しとくよ。」
「俺、携帯なら持ってるよ」
「まあそういうな。作業中に繋ぎ放しってこともあり得るから持ってろよ。ヘッドセットもブルーテゥースだから目立たなくて良いぞ。携帯は8メガのカメラ付きだからデジカメ代わりに使えるしな。」
「なんか、ヘアピン見たいなデザインだね。あ、意外に軽い。あれこれどうやって着けるの?」
「着けるのにちょっと慣れが必要だけど、慣れれば簡単。サングラスも邪魔にならないし、音質も良いよ」
何とか苦労して着けることに成功した。


軽くて良いんだけど、やっぱ  
目立たない黒がいいな。


24のジャックバウワーが使うような
小型なのはこれだけど...。

「携帯はウエストポーチに入れてる。ついでにサバイバルナイフや小物類も携帯と一緒に入れといたから。ヘッドセットはウエストポーチの手前のポケットだ」
と滝沢のオッサンは自分の鞄からウエストポーチを取り出して俺に渡した。用意の良いこった。
「ウエストポーチには、必要と思うものを入れてる。後で自分なり必要と思えるものを入れて使ってくれ。江島くんに渡せば同じセットの予備を用意してくれるはずだ。」
「了解です。でもこれ、でっかいサバイバルナイフつうか、プライヤですね。」
「あ あそれ、PC組立ぐらいできるよ。プライヤにドライバビットまでセットになったIT御用達セットだ。きみにぴったりだろ。他は、手動発電の携帯充電器と ソーラー発電付きの携帯補助バッテリー、アルミ蒸着フィルム、防寒用だ。あとビニール袋と小型のLEDライトと盗聴器と小型無線カメラだ。受信機は大きく なるから必要な時に言ってくれ。」
滝沢のオッサンってツールマニアだったのか。妙にうれしそうだな。
「携帯には電子マネーと、SUIKAが入っている。経費としてなら自由に使ってかまわない。」
あ、これはありがたい。立て替えてくれとか言われたらつらいし。
「ウエストポーチは、この仕事するときはずっと身につけていてくれ。ヘッドセットは常に耳にな。」
「ふーん。判った。」
といいながら、ウエストポーチを着けて、携帯の電源を入れた。バッテリーはあるみたいだ。
とたん携帯に着信したので、ヘッドセットのボタンを押すと滝沢のオッサンの声がヘッドセットから聞こえる。
「どうだ?」
「ああ、ちゃんと聞こえる」
「他に何か必要なものがあれば言ってくれよ。用意するからな。」
「そうだなあ。とりあえずいろいろ試してみたいからノートPC1台用意できない?それからネットにつながる環境。事務所でも良いよ。」
「判った。事務所にあるはずだから、帰りに事務所によってくれ。言っておくよ。」
滝沢のオッサンは使い古したメモ帳を取り出すとメモし、携帯で連絡を取った。
話していたらもう9時を回っている。
「じゃ俺、今夜バイトあるからもう帰るよ。」
「おう、きーつけて」
と言って見送るオッサン。


プライヤが意外としっかりして  
使いやすい。ナイフがあるので
飛行機の手荷物検査に
引っかかるのがうっとうしい。


太陽光だけではなく、普通の
ACアダプタからの充電もできる
ので、こっちの使い方のほうが
多いかも。

≪#5へ続く≫
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2009年9月15日火曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#3

結局1晩悩んだ。
トータルで50万は確かに魅力的だ。
だが、本当にネットから侵入できるか自信ないし、違法なことをすることにためらいもある。
だが、相手の方が不正を働いているということだから、事情を聞いてみて納得できれば手伝うと言うことでも良いかもしれない。
もっとも成功できる確証があればの話だが。

会社が終わってから、早速滝沢のオッサンに電話をしてみた。
「おう、今、例のマンションの偵察にきてるんだ。話があればこっちに来いよ。」
それほど遠くもないし、行ってみることにする。


より大きな地図で 順平マップ を表示
恐喝グループのマンションの地図(地図上の現実の場所、建物等とは一切関係ありません)

意外にきれいな、マンションだ。6階建てでエントランスも大きい。
エントランスで滝沢のオッサンに電話するとエントランスの入り口が開いた。
「603号室にいるから、チャイムを鳴らさずに勝手に入ってくれ、入ったら鍵締めてな。俺はリビングにいる」
ポストも名前のないところが多い、できたばかりで入居者が少ないのかな?
6階まであがる。結構大きなマンションなのに、ここまで誰にも出会っていない。ちょっと不気味。
603号室を見つけ、チャイムを鳴らさずに扉を開ける。確かに鍵がかかっていない。
素早く入ると鍵をかけた。ついでにチェーンも。
玄関をあがると左右に扉があるがたぶん寝室だろう、まっすぐリビング方向の扉を開ける。
何もないがらんとしたリビングに滝沢のオッサンが寝転がってモニタを見ている。
「よう、着たな。ちょうどやつらも帰ってきたところだ。見るか?夕べベランダ越しにカメラを設置した。音もとれれば良いけど流石にコンクリートマイクじゃこのマンションは無理みたいだ。」
「ところで、この部屋どうしたの?」
素朴な疑問を口にした。
「ああ、たまたま空いててな。知り合いの不動産屋に鍵借りたんだ。汚すなよ」
汚す心配なのはオッサンの方だろ。
「で、どうだ受けてくれる気になったか?」
「そのことだけど、もう少し事情を聞かせてくれない?下の奴ら不正を働いてるって行ったけど、どんな奴らなの?」
「下 の奴らは、どうやら詐欺グループだな。オレオレ詐欺やオークション詐欺のようなことを日常やっている。他にも恐喝のようなこともしていて、うちの依頼者も 恐喝のターゲットにされていて、その時の金銭の受け渡しで、後をつけてこの隠れ家がわかったんだ。5人グループで主に3人が多く出入りしている。主犯格が こいつだ」
といって、5人の写真を順番に見せてくれた。
バイク便から大量の封筒を受け取ったり、路上で学生から紙袋を受け取っている写真、コインロッカーから包みを取り出している写真などだ。
「銀行から金を引き出すなどの危ない仕事は絶対やらない。そういうことは、その日スカウトしたネットカフェ難民や子飼いの学生にやらせているようだ。」
「ふーん。今ある証拠を警察に出して捕まえさせることはできないの?」
「今ある証拠だけじゃ警察は動いてくれまい。なにより、うちの依頼者は警察沙汰になるのをいやがっているから、警察を使わずに、奴らの動きを止めなくちゃならん。」


会社の業績が悪化したら明日はわが身。
景気よくならんかなあ?


オレオレ詐欺ってすごいバリエーションで、騙されないって思っていてもやれるらしい。

≪#4へ続く≫
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2009年9月8日火曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#2

そういえば、つい先月も滝沢のオッサンからWebサイトを運営している依頼者の相談にのったことがあった。
依頼者の話では、中国のからと思われるパケットが大量にきて、トップページの表示にすら非常に時間がかかる状態で、本来のお客さんがサイトに入れなくて苦情がきて判ったそうだ。
プロバイダーに相談したら、該当するIPを遮断するようにアドバイスされたそうだ。
一瞬効果は上がったが、また違うIPから攻撃され、またそのIPを遮断するといった繰り返しになり、本業に集中できなくて困っているいうことらしい。
俺は、滝沢のオッサンに、効果的な解決策を教えてやった。

「中国からの攻撃っていうのがはっきりしているのならば、『天安門事件』とか、『ウイグル人弾圧』とか。『チベット暴動』とか、中国政府が中国国民に見せたくないような記事を検索できそうなキーワードをトップページに仕込んでください。それだけで中国からのアクセスが減るはずです。」
「へえ、そんなもんで効果があるの?」
「ええ、良い意味でも悪い意味でも中国は中央統轄の機能が充実してますから。そういうキーワードを入れれば、中国国民に見せたくないサイトということで中国政府がアクセスできないようにしてくれます。」
「あ、じゃあ、不正アクセスだけじゃなくって、中国からのアクセス全部止めちゃうってことかい?」
「ええ、そうです。そのサイトも日本人向けで中国からのアクセスは必要なさそだから、いいんじゃないですか?」
「じゃ、早速依頼者に伝えて試してみるよ。ありがとさん。」

その一言のアドバイスで劇的に効果が現れたらしい。
「すごいなあ、順平くん。たった1行キーワードを入れて半日待ったらピタッと攻撃が止まったってよ。いやー流石ITの人は違うなあ。俺じゃ手も足も出なかったのに一瞬で解決しちゃうんだもんなあ。」
感謝の意味か、滝沢のオッサンは飲み放題、食い放題の夢のパラダイスツアーに無料招待してくれた。
またその手の相談かな?できたら今度は現金が良いなと思いながら滝沢のオッサンの後をついて、狭い事務所への階段を上って行った。


そういえば知り合いにウイグルから来た人いたなあ。
心配だね。




中国は力があるからなあ。
いったい、どっちに向いて進むんでしょうね?




より大きな地図で 順平マップ を表示
滝沢探偵事務所の地図(地図上の現実の場所、建物等とは一切関係ありません)

事務所といっても、滝沢のオッサンと事務の女の子がいるだけなんだけど。確か、江島恵梨子さんっていったっけ?
20歳すぎの元気そうな可愛い女の子だ。紺の簡素な事務服だが、かわいらしく感じる。
「いらっしゃい」
といって、コーヒーを入れてくれた。
「ども」
と良いながら受け取る。この事務所にくるのは3回目ぐらいだが、前は江島さんがここにつとめる前だから、初めて話した。ちょっと緊張する。
「で、頼みたい仕事だけどね。」
唐突に滝沢のオッサンが話を進める。

「詳 しいことは言えないんだけど、うちの仕事で機密情報を使って現金を強請られている事件があってね。依頼者からのたっての希望で警察沙汰にしたくないということでうちに依頼がきたんだ。その仕事は大体調査が 終わって、相手との交渉を残すだけっていう状況なんだけど、その調査をやっている過程で、どうやらうちの事務所の機密情報も盗まれているってことが判った んだ。できればそっちの問題も一気に解決したいんだけど、証拠がこれ以上つかめなくて困ってたんだよ。で、順平くんのこと思い出してさあ。 何とかする方法ないか教えてもらえないかと思って」
「なんとかって言われても俺探偵やったことないし滝沢さんの方がそういうのは得意なんでしょ。」
「普通はそうなんだけど、ITが絡むとちょっとね。順平くんってたしかIT系の会社だったよね」
「そりゃ、IT系の会社ですけど、何の役に立つんですか?」
「まあ、聞いてくれ。このマンションなんだが、503号室がやつらのヤサだ。」
と住所を書いた紙とマンションの写真を渡してくれた。
「彼らのマンンションには、最低でも3台のPCが置かれていて、どうやらそのPCには、その手の情報が入っているようなんだが、仮に部屋に侵入してもすべてのPCを持ち出すのは不可能だし、短時間に持ち出すデータを特定するのは流石に俺でも無理だ。」
「えー俺に泥棒のまねごとをしろってことですか?」
「まあ、平たく言えば、そうだが実際に部屋に侵入しなくてもネットから侵入する方法はないもんだろうか?その辺がITに詳しい順平くんに聞きたかったんだけどね。」
「まあ、確かに方法はない訳じゃないけど、そんなことしたらネットからでも不正アクセス禁止法にひっかかるんですよ。」
「判っている。ただ、不正を働いているのは、やつらなんだ。その証拠をつかむ必要があるんだ。君に違法なことを承知でお願いするんだから、前金で20万、残り成功報酬で30万でどうだろう?もちろん必要経費は別だ。」
「うーん、しばらく考えさせてください。」
さすがに即答できずに、明日までの猶予をもらってその場を立ち去った。


江島さんは個人事務所では珍しく制服姿。
これがまたかわいい。


ああ、不正アクセス禁止法ってとってもザルですね。
まあないよりましかも。


ああ、萌えちゃいます。
社会科の教科書はこんなのにすればいいのに。

≪#3へ続く≫

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2009年9月1日火曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#1

「まじ少ねえ」
夏のボーナスの明細をみながら順平はつぶやいた。
俺は神野順平。28歳、IT企業のサラリーマン。2008年末からの景気悪化の影響を受けて、順平の会社ももろにその影響を受けて仕事が減った。
「多少の覚悟はしていたのだが、これほど少ないとは。去年の半額以下だよ。」
神戸で一人暮らしをしている順平だが、去年の暮れから冷蔵庫が故障し、テレビも調子が悪くなって買い換えた。
それもボーナスをあてにして。
もうちょっとランクを落とせば良かったのだが、長年我慢を重ねたブラウン管テレビからの買い換えでつい大画面で録画のできる人気一番モデルにしてしまった。
困った。ボーナスの支払いは、車のローンも入れて40万。で、ボーナスは15万。どう考えても足らない。
消費者ローンで借りて冬のボーナスで支払う手もあるが、相変わらず景気も悪いし、冬のボーナスの金額もあてにならない。


俺の念願の42インチ液晶テレビ。  
はぁこんなんで映画見るのが夢
だったんだ。


そりゃ好きで金借りる訳ちゃうんで。
誰だって金に余裕があれば借りないよ。

俺の勤める会社は、大阪にある30人程度の派遣がメインのIT企業。
いろいろの会社を渡り歩くが、業種が違うとずいぶんと覚えなければいけないことが増えるので、まあそれなりに経験が積めて良いかなぐらいだった。
でも2008年末からの不況のあおりで、俺も元の開発現場から離れ、なんとか次の職場に入ったが、そこの来期延長も難しそうかな?
ということは、次のボーナスが満額出るのは難しいな。
こりゃ何かバイトでもやらないとまずいかなと思いつつ、近所のコンビニでアルバイトニュースを眺めていた。
「よう、順平くん」
後ろを振り返ると、近所の滝沢探偵事務所の所長、滝沢のオッサン53歳だ。
大学時代に通っていたジャン荘で知り合い、稼がせて頂いた。今でもたまに金曜日のオールナイトマージャンで、貢いで頂いている。
大勝ちしたかと思うと、見え見えの手に振り込んで大負けしたり、ムラが激しい。かき回すだけかき回して、結局はマイナスで終わるタイプ。
「暇そうだね」
滝沢のオッサンには言われたくないよ。いつも暇そうに喫茶店やパチンコ屋に入り浸ってるみたいだし、仕事している姿を見たことない。
「ええ、まあ」
と当たり障りなく返事しておく。
「この前は世話になったね。助かったよ。依頼者も喜んでくれたよ。ところで、またそんな感じのバイトしてみない?」
ええ?意外な一言
「バイトって何ですか?俺、滝沢さんの仕事みたことないし」
「なーに、簡単な仕事だよ。ITがらみでちょっとばかし相談にのって欲しいんだけど。ここじゃ何だし、今から事務所に来ないか?」


滝沢のオッチャンが大好きな海物語。
シリーズ全制覇だそうな。  
暇だねえ。


滝沢のオッチャンとは無縁の名探偵。
この小説の名探偵もどっちかというと迷う方だと思う。

≪#2へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
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