2009年12月1日火曜日

第2話「家出少女救出作戦」#10

救急車が到着し、3人に女性を搬送した後、警察には後で事情を説明するからと無理やり抜け出した。

江島さんからの連絡で、
「ヘルプの探偵さんがホテルの部屋をマークしておいたところに警察が入って、高須と残りの2人は覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕だって」
よかった。こっちは一安心。
そのホテルに3名が監禁されていたらしい。

俺と所長はいったん事務所に戻ってきた。
さっき電話で目暮警部からの連絡で、高須のいたホテル、高須のマンション、倉庫のプレハブ、中国船、いずれも捜索したが、南条さんは見つかっていない。
いったいどこに隠れたんだろうか?
もしかして、元々高須とは一緒に話したぐらいの関係で拉致されていなかったのか?

「そういえば高須のマンションって結構高級そうでしたよね。ていうことは、エレベータとかに監視カメラもあるんじゃないですか?」
「ああ確かに。たぶん警備会社の管理になっていると思うから、この数日のビデオは見れると思う。早速あたってみるか」
なぜだか警備会社にもコネのある所長は早速ビデオデータの入ったハードディスクを借りてきた。
「エレベータは2機あるからデータは2つある。俺と順平くんで手分けして見よう」
幸い、エレベータが停止している時間の画像は撮っていないので、早送りで見ると1日分は1時間もかからず見ることができる。2日目に差し掛かったあたりで、高須と南条さんがエレベータで上の階に行くのが確認できた。
「よし、高須のマンションに行ったところまでは確認できたな」
じゃ、次はマンションから出るときの映像だが、それが見つからない。
「おかしいな。見逃したかな?」
と俺が言うと
「まあ、階段を使えば、エレベータの映像には残んないけど、普通はエレベータ使うよな」
と所長が答える。
「もしかして、まだ高須のマンションのどこかにいるのか?」
と所長が立ち上がったので、俺も続く。
2人で車に乗って、高須のマンションに向かう。その間に所長は目暮警部に捜査現場へ立ち入りの許可を取った」
マンションの外から高須の部屋を見上げて、確認して、高須の部屋にエレベータで上がる。
もう捜査の人はいないが立ち入り禁止のテープが張られ、警官が2名張り付いている。事前に連絡が行っていたせいか、所長の顔を見ても敬礼しただけで何も言わない。
「ふーん」
と思いながらも、高須の部屋に入りリビングから外を眺める。
警察が散々捜した後だから、何も出ようがないと思うが、エレベータのビデオを見る限りは南条ゆかりさんはこの部屋にいる。
寝室と和室、洋間、台所とうろうろしていると何か気持ち悪い。何だろう?この気持ち悪さは?
一旦部屋から出て、1階まで降りてみる、もう一度下から高須の部屋を見上げる。何かが違う。
高須のマンションは、俗に言うデザインマンションで、ちょっと特異なデザインになっている。エントランス側は北向きでベランダはない。代わりに窓が4つついている。あれ、と思い、高須の部屋に上がってみる。北向きの部屋は寝室と洋間、寝室には2つ窓があるが、洋間には窓が1つ。ではもう1つの窓はどこに?
位置から言うと、洋間と隣の部屋との間にもう1つ窓のある空間があるはず。
洋室の壁には何の仕掛けも見れないし、洋室の隣はバスルームがある。後はクローゼットの中ぐらいしか考えられない。
クローゼットの横壁についていた、フックが動く。と、横壁が2つに折れて中の部屋への通路が現れた。
中は薄暗い。1つだけの窓からはいる明るさだ。次第に目がなれると4畳ぐらいのほど長い空間にベッドが置かれ、そこに女性が寝ていた。南条ゆかりさんだ。やせて肌は土気色だが写真で見た彼女に間違いないと思う。
あわてて、所長と入り口の警官を呼んで、救急車を手配した。



デザインマンション


最近は監視カメラも楽に設置できます


隠し部屋


その後、所長は夜中になってようやく帰ってきた。
「いやーまいったよ。事情聴取で今までかかちゃったよ」
「ホテルにいた高須と仲間の2人組に職質かけたら麻薬を所持が見つかって、3人とも現行犯逮捕だったてさ」
事務所のソファに寝ころびながら疲れた様子で言った。
「ま、覚醒剤持って無くても、状況証拠は押さえているから、逃げられないけどね。連れていた女の子からも覚醒剤反応が出ていたそうだよ。やっぱり、女の子をホテルに連れ込んで麻薬を打っていた様だ。」
所長は江島さんの入れたコーヒーを飲みながら続けた。
「後は、逮捕監禁までは立証できる。が、人身売買までは、国内法では、追求は難しいかもしれないなあ。」

どうやら奴は、大阪三宮界隈で家出した少女を見つけるとナンパし、ホテルなどで麻薬を覚えさせ、その後、自宅へ連れ込み、麻薬漬けにした後、港近くの倉庫に監禁し、中国船で香港方面に人身売買を行っていようだ。
奴の逮捕を受けて、中国大使館から許可を得た港湾当局が中国船を捜索し、船長と乗組員が逮捕され、中国当局に引き渡された。
香港の売買ルートの追跡を中国当局に依頼し、この事件は収束した。
奴のバックに暴力団組織の影が見えたが、結局証拠がなく、捜査もそれまでとなった。

翌朝、事務所へ行くと、江島さん1人だった。
「おはよう」
と声をかけると、にっこりと笑って、
「順平くん。おはよう。昨日はお疲れ様でした。」
「いやいや、疲れたのは所長でしょ。長かったもんね」
そこに。ちょっと遅れて所長がやってきた。
「おはよう。江島くん。あれ、順平くんも早いねえ」
「おはようございます。昨日の事件が気になって、来てみました」
「昨日は、ありがとう。順平くんのおかげで、彼女を助けることができたようなもんだよ。もう少し遅れてたら、彼女の命にかかわっていたと思うよ。」
「いえいえ、それもこれも江島さんのキャンギャルのおかげです。」
「あそういえば、江島くん今日はキャンギャルじゃないの?」
と所長が反応する。
「当たり前でしょ。」
「あの衣装、制服にしない?」
「しません。」
「ちぇ」
子供みたいにすねてる所長。
所長は、俺を招き寄せると、小声で言った。
「順平くん。また、キャンギャル作戦使おうね。新しい江島さんの衣装を用意しとくから。」
嬉しそうに言う。
「何そこでこそこそ話してるんですか?もう、今月使った分の領収書早く出してくださいよ。」
「そうそう。順平くんの報酬だけど、途中から犯罪捜査に変わっちゃったね。幸い、救出した3名も他の探偵事務所に捜査協力依頼が出ててね。実際に問題を解決したうちに、謝礼の半分を回してくれたよ。その中から順平くんの取り分だ。40万だ!」
所長はお金の入った封筒を渡してくれた。
「いつもニコニコ現金払いだ。また頼んだよ。」
「ええ、良いですけど、今回も運が良かったですからねえ。次は判んないですよ。」
「了解。了解。結果オーライだよ。もし解決できなくても手間賃分はちゃんと払うから安心してくれ」

しかし、いつまでも運に頼るのもどうかと思うし、アングラサイトで何か良いツール無いかさがしてみようかなと思う今日この頃。

第二話 完


ドラッグは怖いねえ


アングラサイトを探そう


ハッカーのテクニック


≪第三話へ続く≫
この小説はフィクションであり、実在する国、団体や事象、法律など実在の世界にあるものとは、一切関係ありません。
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