2009年10月20日火曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#12

「あれ?前、事務所にしてきてませんでしたっけ?」
「あれってね、所長からのプレゼントなの。で、プレゼントしてもらったその日になくしちゃってるの。なのに順平くんが知ってるってどういうこと?」
しまった。昨夜のビデオの印象が強かったせいか、てっきり、事務所でもしているのと勘違いしてた。
「あれ?ごめん。会社の女の子がしてるのと見間違えたのかな?」
俺を椅子に座らせると、その膝の上に乗り、顔を近づけながら言った。
「残念ねえ。あれって、オーダーメイドなの。たぶんルビーとエメラルドをデザインしたネックレスは日本にはないわ。その会社の女の子って、どうやって手に入れたのかしら?」
「そのネックレスをしていたのはどこの誰さん?所長に言って調べてきてもらいましょうか?」
うう、まずい。
「順平くん。事務所の機密情報見たわね?」
目が怖い。
「あたしと所長が映っているビデオ見たでしょう?」
さらに顔を近づけて、言う。
「ホテルの隠し撮りで映っている二人を見たわよね?」
やばい。ここまで言うってことは、もう確信してるなあ。何言っても聞かないだろうなあ。


ホテルで隠し撮りされていないか  
これで確認!!


タイトルは、こうだが、現実は
不況で厳しいらしいよ。

と、ドアをノックして所長が声をかけてきた。
「江島くん、まだかかるかい?用事があるので、もう帰るけど良いかな?」
「すいません。所長。もうちょっとかかりそうなので、後は片づけておきます。お先にどうぞ。」
「そう?じゃ、あまりおそくならないように。後はよろしく。」
と言うと足音が遠ざかっていった。
「さあ、邪魔者はいなくなったからゆっくりと聞けるわね?」
「どうやって、手に入れたの?あの時、データをPCに取ってすぐに所長へPCを渡したはずよね。私と所長の二人が見ていたから間違いないはずだわ。」
しょうがない。観念して話すか。
「実は、USBメモリに自動バックアップを取っていて、帰る時にこっそりと抜いておいたんだ。」
と実物のSDカード入りのUSBカードアダプタを見せた。
「へえ。ちっちゃいわね。気がつかないはずだわ。まったく、いつの間にこんなの仕掛けたのかしら、油断も隙もないわね。」
「とりあえずこれは没収。データを消したら返すわ。他にコピーは?」
「うーん、自宅のPCにバックアップが」
「じゃ、これから一緒に行って、それも消しましょう?その前に、口止めよ。」
といって彼女は俺の唇を自分の唇でふさいだ。
「このことは、二人だけの秘密。所長にも内緒。ペンダント無くしたのも所長知らないんだから言っちゃダメよ。」
「あーあっ、順平くんのこと気に入ってたから、所長とのこと隠しておきたかったんだけどなあ」
「所長とは長いの?」
「え?ああ、所長とはビジネスよ、ビジネス。1年ぐらい前からかな?別に所長のことは好きでもなんでもないけどね。女の子が一人で暮らすのって大変なのよ。」
「ああ、そういうことか。」
「そう。順平くんには嫌われちゃったかな?」
「あ、そんなこと、俺、江島さんのこと大好きだし。」
「ありがとう。とっても嬉しい。」
にこっと微笑んだ顔がちょっと悲しそう。
「まあいいわ。とりあえずあなたの部屋にあるデータを消しに行きましょう?」
と唐突に立ち上がって、USBメモリを握りしめる江島さん。
「ああ、わかった。」
俺も立ち上がって、倉庫の鍵を開けた。

そして、二人は俺の部屋に行ってPCからデータを消した。
「ほんとにこれだけ?他にバックアップは取っていない?」
「他にデータ入れれそうなのないだろ。PCの中も見てくれよ。何ならフォーマットしなおしたってかまわないよ。」
「判ったわよ。信用するわ。」
「じゃ、いい?所長には絶対秘密だからね。ペンダントのことも順平くんがビデオを見たことも。」
「じゃ、も一回口止め」
といってちょっと長めにキスすると
「じゃまた事務所でね。」
と言って、部屋を出て行った。
なんだか嵐が過ぎ去ったみたいな感じだ。

実は、データバックアップはそこだけではない。海外の三か所の無料レンタルサーバに秘密分散法で分割して保存している。
それぞれのデータが漏えいしても何のことかわからないはずだ。
万一、1つのファイルが消失しても残りの2つで復元できるはず。
そしてその保存先を示したURLとID、パスワードは携帯電話のアドレス帳に架空の友人の名前でメモ欄に保存している。
江島さんはともかく、所長への切り札として持っていて損はないだろうから。

第一話 完



データの保存はS3を使いましょう。  
要領制限、バックアップの必要もないはず。  


秘密分散法これに載ってます。


≪第2話へ続く≫
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