2009年10月23日金曜日

第2話「家出少女救出作戦」#1

日曜日の昼下がり、今日も暇を持て余している。
あの事件の後、もしかしたら、江島さんと上手くつき合えるんじゃないかと何度か誘ってはみたものの、軽くいなされている。
自分でも、この前の事件での江島さんの行動があったことが実際にあったことなのか自信が無くなるくらいだったが、さすがに怖くて面と向かって聞けないし、唯一の関係者である所長には、彼女との約束もあるし、相談することすらできない。
本当なら、休みの日には彼女を誘ってドライブにでも行きたいところだけれど、彼女はいつも「ごめん、その日は用事があって、また誘ってね。」という。最初は文字通り忙しいのかなとも思ったが、同じテンションで同じ答えが3回繰り返されると、さすがに避けられているなと思う。
しょうがない、今日は趣味のひとつである漫画に走る。古本屋で安彦良和さんの「ナムジ」を見つけたので、全巻を大人買い。「ガンダム」も良いが「ナムジ」も良い。
ファミレスで昼飯ついでに漫画本を持ち込んで、本を読み込む。ここのファミレスは、ドリンクバーにエスプレッソマシンでつくるカプチーノがあるので、好んで通っている。コーヒー好きの俺には本を読みながら何杯もカプチーノが飲めるのは非常に助かる。同僚の多くは、一人でファミレスにはいるのをいやがる人は多いが、俺にとっては、快適な空間だ。店員からすると、1人で昼ご飯とドリンクバーだけで粘られるいやな客だろうけど、それでも俺はお客だと無視する。


安彦さん大好きです。
ガンダムも良いけどナムジもね。


カプチーノが自宅で作れるのって、憧れです。
ちょっと高いけど、全自動なのでラック楽


漫画もほぼ読み終わった夕方頃、
「よう、順平くん」
滝沢のオッサンだ。
「また今日も暇そうだね」
オッサンに言われたくない。
「実はまた仕事をお願いしたくってね。ここにきた方が早く会えるような気がしてね」
ギクッ。確かに、もう5時間もここで粘っている。
「ああ、そうですかあ」
「で、また後で事務所寄ってくれるかな?」
「どうせ、暇ですから、後でと言わず、今からでも行きますよ。」
と良いながら所長の後をついていった。

「こんにちは、順平くん元気ーっ」
江島さんが妙にハイテンションだ。
「ああ、元気。」
ちょっと気圧されてローテンション。
「江島くん、コーヒー頼むよ。」
「了解です。」
と立ち去った。妙に明るい江島さんの後ろ姿を目で追ってると、
「コホン、仕事の話いいかな?」
「こりゃ失礼。江島さんが気になって。いいですよ。」
「実は、今の依頼人からの仕事なんだが、家出娘を捜している。これが探している女の子の写真とプロフィールだ。」
と、所長はバインダを俺に手渡した。
「南条ゆかり、16歳、高校1年生、身長150cm、中学時代はテニス部だったが、高校に入ってからはもっぱら帰宅部だ。最近の趣味はブログだ」
次のページへめくりながら所長が続ける。
「高知の実家から家出したのが1ヶ月前、最後の連絡が2週間前に実家に届いた手紙だ。これを手がかりに両親が探しに来られ、手がかりが見つからないままうちに依頼があったという訳だ。」
所長は、封筒から葉書を取り出しながら、
「手紙の消印を頼りに調査をして、この3日前までインターネットカフェを渡り歩いているのが判った。ただ、その後の足取りがぱったり消えた。」
その周辺の地図を指し示す。
「そのインターネットカフェのオーナーに頼んで、その娘の使っていたPC借りてきたから、そこから足取りが追えないかなと思ってね。で、順平くんの出番って訳だ。」
「了解です。でも、この前は、本当に運が良かっただけですから、今回は何も分かんないかもしれませんよ」
「了解してるよ。でも、順平くんのことだからきっと最後には何とかしてくれるからなあ。頼りにしてるよ」
全く人の話を聞いていない。
「で、報酬なんだが、すまんが、まだどれくらい依頼者からもらえるか判らないんだ。特に違法な事をする必要もないし、とりあえず2万かな?後は依頼者との交渉次第ってことで勘弁してくれ。」
「報酬は任せますよ、どうせ暇だし」
「さすが、順平くん、ほれぼれするなあ。じゃ2万」
といって所長は俺に現金入りの封筒を渡した。



危険ですねえ。
変なネットにつかまらないでね。


これってドラマやってましたね。
ちょっとだけ見ました。


こうはなりたくない。
明日はわが身?


≪#2へ続く≫
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