2009年10月16日金曜日

第1話「探偵事務所の機密情報を奪還せよ」#11

さて、他のファイルは何だろうと思って開けてみたら、どうやら同じホテルの隠し撮りファイルのようだった。こちらはベッドの頭側の起き物か何かに仕込まれているらしく、ベッド全体が画面いっぱいに映っている。
さっきのファイルに人が移り始めたのと同じ時刻まで早送りしてみる。
今度は近すぎてベッドサイドの人が映っていない。かろうじてありらしきものがちらちら見える程度。
あ、腰かけた。上半身がアップになった。あ、やっぱり所長だこっち向いているこのいやらしい顔は所長でしかありえない。
女性は向こう向きだからよくわからない。けど、この後ろ姿、見覚えが。
と思っていたら女性の顔がこっちを向いた。あ、やっぱり、江島さんだ。
なんとなく前のビデオの時からなんとなくそうじゃないかと思いながら、信じたくなかった。
彼女の胸元で、ルビーとエメラルドらしい、ペンダントトップが揺れるのを心ここにあらずといった心境で眺めていた。


ダイヤ1つを残してダイヤが  
エメラルドに代わったそんな
イメージ。


このエメラルドがペンダントに
つく感じ。
リングはリングでいいね。

そうか、二人はこういう関係だったのか。あー、ショック。
この前、事務所に行ったとき、浮き浮きと出かけていったのも所長との待ち合わせだったんだ。
で、結局やつらに盗撮されて、所長自身も脅されてたんだな。
まあ、妻子ある身じゃ、脅されて当たり前だな。まったく社会悪め。事務の女の子に手を出すなんて。
たぶん30は離れているぞ。どうするかなあ。いまさら言ってもファイルを持ち出したことがばれるだけだし。
不倫も江島さんの選択だし。彼氏でもないのにやめろっていうのもおかしな話だしなあ。

まあ、明日報酬が入れば、借金もきれいに返済できて、新しいPC買うぐらいの費用は残るからよしとするか?
さて、じゃ早速コア2プロセッサのマシンが欲しかったんだよね。
昨日特売のメールを見つけて、マークしてある。早速、オプションを確認して、明日は電気屋に現物を見に行こう。
切り替わりの早い順平であった。

Lenovo(レノボ) ThinkPad

Lenovo(レノボ) ThinkPad

ノートPCはやっぱIBMですかねえ。
ビジネスで使うのはパナソニが
多いけどね。


1週間後、所長から残金の支払いの連絡を受けた。その日は、会社が終わってから、アルバイト料の残金を受け取りに事務所に行った。
所長も江島さんも残っていた。
「御苦労さんだったね。順平くん。助かったよ。俺の依頼者にも『これ以上脅迫は来ないだろう』と報告したら喜んでいたよ。」
「そうですか。そりゃよかった。でも、今回は運がよかったですね。あれだけセキュリティが低いのも珍しいですよ。そうでなけりゃ、ずいぶん時間がかかったと思いますよ。」
「いやいや、謙遜しちゃって。」
いやいや、ほんとに謙遜じゃないんだけど。
「さすがにできる人は違うねえ。じゃ、報酬の残金ね。」
といって、所長は俺に現金の入った封筒をを手渡した。
「いまどき現金で申しわけないけど、うちの方針でね。また、そっち方面の仕事があったらよろしく頼むよ。」
「いえいえ。ありがとうございます。これからノートPCを見に行くからちょうどよかったです。」
「順平くん。お疲れ様」
「こんばんわ。絵島さん。相変わらずおきれいで。」
ノートPCが買えることで、ちょっと浮かれているせいか、絵島さんにも気軽に話せる気分。
「あらやだ、ありがとう。」
「今日のネックレスかわいいですね。」
江島さんの胸元の銀のトップがついたネックレスに気がついて言った。
「この前のルビーとエメラルドのネックレスも良かったけど、今日のネックレスもかわいらしい感じで」
バンッ。っと音を立てて絵島さんが立ち上がった。
「ちょっと、 順平くんいい?」
目が怒っている。怖い。なんで?
「ちょと早くおいでって」
俺のシャツの襟をつかむと更衣室兼倉庫に入った。
倉庫の鍵を閉めると一番奥の棚の陰に俺を連れ込んで小さいがドスの効いた低音で聞いた。
「ねえ、どうして順平くんがあのネックレスのこと知ってるの?」


江島さん個人所有の  
ペンダントです。




≪#11へ続く≫
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