というと、所長はあわてて
「いや、それは後でこちらでやるから大丈夫だよ」
「そうは言ってもデータが存在するか確認した方が良くない?」
『脅迫ネタ』フォルダを開けて確認しようとする俺、慌てる所長。
「あ、ここに『滝沢探偵事務所』ってありますね。」
「あー、いいから、ここから先は機密扱いだから勘弁してくれ。えーと、順平くん。よくやってくれた。おかげで、俺の依頼者の脅迫を止めることが出来そうだし、うちの事務所の機密情報も消すことができた。順平くんの仕事は以上でおしまいだ。後始末は私と江島くんでやっておくから、今日はもう帰ってゆっくり休んでくれ。」
「はあ、そうですか。」
「あ、ノートPCはそのままにしておいてくれ。残りの報酬は依頼者から1週間ぐらいかかるかな?また連絡入れるよ。」
「判りました。じゃそろそろ帰ります。」
「すまんなあ。また、そっち系の仕事があれば頼むよ。期待してるから。」
と所長。
「じゃお休み。順平くん。またね。」
と江島さん。フォローもなく、冷たいなあ。
追い出されるようにして、マンションを後にした。
そこまでして隠したい事務所の秘密って何だ?気になるなあ。
とその手には、今日マンションに来る前にセットしたSBマイクロカードのUSBコネクタが握られていた。
所定のフォルダに書き込んだファイルは自動的にSDカードに書き込む様に設定していた。
まさか、こんな事態を想定していた訳でなく、単にバックアップが簡単に出来るからという理由だったけれど。
で、所長が帰るように促してきた時にこっそり抜いて手のひらに隠しておいた。
『ハードウェアの安全な取り外し』を所長と話をしながら何気にしたのだが、たぶん気づかれていないだろう。
SDカードは、試してみて使えれば 安いメーカーがいいね。 | 出し入れは不便だけど ノートPCに着けっぱなしで 使うにはこれが便利。 |
家に着いた。眠かったがそれ以上に、『滝沢探偵事務所』の機密情報が気になった。
せっかく手に入ったデータだ、どんな情報かじっくり見てみよう。
その前に、念のためPCにバックアップしてと。
『滝沢探偵事務所』っていう名前のフォルダの中身をみると、zipファイルに圧縮されている。
解凍しようとしたら、パスワードがかかっている。うーんしょうがないなあ。
とりあえず、あれ試してみるか?フリーのzipパスワード解析ツールをダウンロードして試してみた。
このぶんだと、今日は見れないかなあと思っていたら、解析が完了した。
数字4ケタのパスワードだった。見覚えがあるたぶんやつらの電話番号の下4桁に違いない。
まったく、セキュリティのなってないやつらだ。
解凍してみるとmpegファイル?
え、機密情報って、映像だったのか?
どれも同じパスワードで解凍できた。
日付はどれも同じで、容量もほぼ同じ。
ファイル名で区別されている。
1つ目のファイルを開けてみた。
ホテルのベッドみたいだ。誰も映っていない。右下に日付と時間が表示されている。
何も変わり映えしないから、早送りしてみる。時間の分が見る間にかカウントアップされていく。
10分ぐらい過ぎたところで、1組のカップルが入ってきた。
なんだ、盗撮ビデオか。なんでこれが機密情報なんだろう?
ちょっと遠くて、顔が特定しにくい。なんとなく男の方が、所長に似ているような気がする。
女性はちょっと小柄で髪をアップにしている。もしかして盗撮ビデオで所長も強請られているのか?
あ、なんかプレゼントを渡してるな。ネックレスみたいだ。
ネックレスを男が付けてあげた後、その延長で首筋を愛撫しながら、キスした。
後はお定まりの情事だ。
ふーんと思って、早送りで流して見終わった。
万一の為にバックアップは 怠りなく。 | VISTAのバックアップは こんな感じで。 |
≪#11へ続く≫
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